なぜ? DMMが格安SIM事業に再参入 povo、IIJと組んだ「DMMモバイルPlus」の狙いを聞く(1/2 ページ)
かつてはMVNOとして格安SIM事業に参入したDMMが、「DMMモバイルPlus」と銘打った新サービスを2025年1月に開始した。povo、IIJと組んだ通信サービスを提供している。DMMが再びモバイルに取り組む狙いについて聞いた。
映像配信サービスや電子書籍配信といったメディアから、通信販売、オンライン診療、果ては水族館の経営まで幅広い事業を手掛けるDMM.comだが、かつてはMVNOとしてもその名を知られていた。同社が運営していたDMM mobileは、2019年に楽天モバイルへと事業を承継。新規受付は終了したものの、現在もサービスは継続しており、少数ではあるがユーザーも残っている。
そんなDMMが、「DMMモバイルPlus」と銘打った新サービスを2025年1月に開始した。当初タッグを組んでいたのはKDDI傘下のKDDI Digital Lifeが運営するpovo2.0。DMM側から契約ができるようになっており、DMMポイントをセットにしたトッピングや、「DMM TV」のデータ通信が使い放題になるゼロレーティングのサービスを提供した。
povoのホワイトレーベルを使ったサービスかと思いきや、2025年10月にはIIJとタッグを組み、「DMMモバイルPlus Powered by IIJ」の提供を開始。こちらでもDMMポイントと500MBのデータ容量をセットにしたオプションを提供する。また、DMMモバイルPlusのブランドで、海外旅行用eSIMも展開。提供する回線の幅を広げている。DMMが再びモバイルに取り組むのはなぜか。DMM.comの事業執行役員 プラットフォーム事業 アライアンス統括 佐藤祐介氏に狙いを聞いた。
経済圏の基盤となるサービスの1つにモバイルがある 回線は複数の選択肢を用意
―― 以前、DMM mobileをやられていたと思いますが、DMMモバイルPlusという形でモバイルを再び手掛けることになったのか、その理由を教えてください。Plusにはどういう意味があるのでしょうか。
佐藤氏 名前は(DMM mobileから)変えなければいけなかったので、あまり深い意味はないというのが正直なところです。弊社としては一度やめていますからね。DMMは何でもやっている会社で、大きな目標を掲げてそこに向かっていくというより、もうかるなら何でもやろうということで各事業が独立して成長し、採算を取ってきました。私も、この会社に3年前に入っています。
入社の理由にもなりますが、全体で売り上げが3000億円超ぐらいあり、事業も60以上ある中で、経済圏を作り、ユーザーにその中で回遊していただきたい。DMMは創業以来28年増収増益でここまで来ていますが、ほとんどが都度課金のエンタメサービスです。それでずっと増収増益しているのもすごいことだと思いますが、もう一段上げるには何が必要か。エンタメサービスなので、日常生活に余裕がある人が余裕のある分で楽しんでいますが、その前段となるサービスがほぼありませんでした。
かつ、これまではお客さまのことを理解し、適切なサービスを提供するということがあまりやれていませんでした。お客さまの行動や趣味嗜好(しこう)を理解し、経済圏のクロスセリングをしていくには継続的なつながりを持ち、お客さまを正しく理解する必要があります。そのために、「DMM Lifestyle」という看板を作り、日常生活に関わるサービスを作っていくことにしました。
衣食住、電気ガス水道、通信の一環として、モバイルがあります。僕らはMVNOをやりたいわけでも、モバイルでもうけたいわけではなく、経済圏作りをするための基盤となるサービスの1つとしてモバイルをやっています。弊社の会員も、もともとPCユーザーが多かったのですが、さすがにモバイルユーザーが多くなってきました。また、足元ではDMMプレミアムの新規会員獲得がうまくいっていますが、これもモバイルとの親和性があるからです。
そういったこともあり、DMMモバイルPlusをローンチしました。どちらかと言うと、僕らの商品をお客さまにプッシュしていくというよりも、いろいろな選択肢をそろえて選ぶのはあくまでお客さまという考えです。組んでいるところが少しずつ違うのも、そういった意図があります。
―― 最初に組んだのがpovoだったのは、なぜでしょうか。
佐藤氏 僕自身、通信業界が長かったこともありますが、DMMは30代、40代の男性が多い一方で、DMM TVは女性も多く、動画配信を見たいがギガが足りないという方が結構な数いました。営業側からも「何とかならないのか」という話がありました。povoであれば、今日明日のギガはトッピングで買うことができます。(トッピングの金額がそのままDMMポイントになる)実質0円で作るときにも、povoは最適でした。逆に、povo側もパートナーをちょうど探していました。
実はDMMでは、ソフトバンク回線やSoftBank Airの取り次ぎもしています。音声付きサービスで格安SIMでというものはなかったので、IIJさんとそれもローンチしました。また、われわれはOTA(Online Travel Agency)として旅行ビジネスのテストマーケティングもしており、11月からもう少し大々的に展開する予定です(※インタビューは10月上旬に実施。10月31日から「DMM旅行予約」を提供)。それもあり、海外需要に応えるために、海外eSIMを先に用意しました。
モバイルの中でも、役割が少しずつ違うものをそろえるようにしています。povoは動画ユーザーのニーズに合っている、海外eSIMは旅行事業に力を入れるときのオプションとしている一方で、通常のスマホで通話にも使いたいときにはソフトバンク、もっと安い方がいいというときにはIIJがあります。キャリアにこだわっているわけではなく、会員に向けて少しずつ穴を埋めていったらこのようになりました。
povoもIIJもDMMポイントをバンドルしていますが、それがフックになって契約していただけます。ポイントが付与され、それを日常サービスで使える。あくまでやりたいことは、経済圏を作り上げていくことです。
povoのトッピングは自由に作れる ゼロレーティングは再検討
―― povoは当初、ゼロレーティングも入っていました。こういったサービスは他の回線にも広げていきたいのでしょうか。
佐藤氏 povoは今、プランを再検討するためにいったん(ゼロレーティングの入った)トッピングを下げています。ラインアップとして、お客さまの利用に耐えられるもの、かつポイントをフックにしたものを継続していきたいと考えています。
―― もっとバリエーションを増やしてほしいというニーズもありそうですね。
佐藤氏 僕らとしても、もう少し増やしたいと思っています。かつ、現状ではDMM TVとのコラボトッピングに踏み込めていません。60以上の事業があるので、いろいろなものとダイレクトにつながるものも考えていきたいですね。急激にこれで売り上げを高めていこうという感じではないのと、povo側にも開発にそこまで余裕があるわけではないので、優先順位をつけながらやっていきます。
―― 契約が取れて、継続して使ってもらえるのであれば、povo側にもメリットはありそうです。
佐藤氏 これだけで5万、10万とすぐに取れるわけではありませんが、(コラボレーションを重視する)povo側の戦略上の話としては大きいと思っています。
―― povoのトッピングは、ある程度DMM側が自由にプランを作れるのでしょうか。
佐藤氏 はい。そこは自由ですね。(シンガポール企業でKDDI Digital Lifeとプラットフォームを共同開発した)Circlesのプラットフォームが、柔軟に対応できるプラットフォームになっています。KDDI Digital Lifeとは毎週定例でミーティングもしていますが、カジュアルに相談しながら考えていきたいですね。
―― 現状だと、povoのユーザーはどこから入ってくることが多いのでしょうか。
佐藤氏 povoの場合は定期的にトッピングを変えていますが、povo側に訴求してもらうと通信に親和性のあるユーザーがものすごく来ます。逆に僕らのプッシュでも売れますね。一番売れていたときでは、半々ぐらいです。povoは利用するのに一定のリテラシーも必要なので、アプリを使っている人はそこをクリアしています。トッピングを載せてもらうと、必ず一定量の売り上げがあります。お互いにとって、プラスになるものをやっていこうとオープンにやっています。
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