JR東日本の二次元コード乗車券「えきねっとQチケ」を使ってみた Suicaなし/無人駅でもOKだが残念な点も(2/2 ページ)
JR東日本の二次元コード乗車券「えきねっとQチケ」が東京都区内でも使えるようになりました。どんなものなのか、実際に使ってみた上で感想を述べてみようと思います。
「えきねっとQチケ」を使うには?
購入したQチケは、以下の方法で使います。
- 購入者本人:えきねっとチケットレスアプリの表示/操作
- 同行者:事前配布された二次元コードの提示
購入者本人はアプリの利用が“必須”です。入場(乗車)/出場(降車)時の二次元コードの提示はもちろんですが、自動改札機のない駅での入場/出場の操作もアプリが必要です(詳しくは後述)。購入者本人の乗車に関する操作は、乗車日当日の午前5時から可能です。そのため、5時以前に出発する列車には利用できません。
一方、同行者は購入者からもらった二次元コードの提示(所持)が必要です。二次元コードの配布は個人単位で「スマホへ転送」「印刷」のどちらかを選べます(全員分を一気に印刷することも可能)。スマホへ転送を選ぶと、スマホで表示する前提のPDFファイルが生成され、任意のメールアプリやメッセージアプリで共有できます。印刷を選ぶと、印刷する前提のPDFファイルが出力されます。同行者への二次元コードの配布は乗車予定日の7日前から可能です。
複数人で同時に移動する行程で自動改札機のない駅で入場/出場する場合は、購入者本人が代表してアプリを操作して処理することになります。
入場/出場の方法ですが、二次元コード対応の自動改札機があるかどうかで変わります。
二次元コード対応自動改札機がある場合
二次元コード対応の自動改札機が設置されている場合、アプリで表示した(同行者は共有された)二次元コードをリーダーに読ませると入場/出場が可能です。
コードをかざすとサーバに乗車券の情報を照会し、問題なければ改札機が開いて通れます。サーバに照会するということで、レスポンスが心配なところですが、おおむねかざした瞬間に反応するので心配は不要です。
二次元コード対応自動改札機がない場合(一部の他社管理改札を含む)
二次元コード対応自動改札機のない駅、あるいは他社管轄の駅/改札口から乗車する場合はえきねっとチケットレスアプリで「セルフチェックイン(入場)」「セルフチェックアウト(出場)」操作が必要です。複数人が同時に移動している場合は、購入者が代表して操作を行う必要があります。
セルフチェックイン/チェックアウトをする場合、駅にいるかどうかを把握するためにアプリに位置情報の取得を許可する必要があります。許可が与えられていない場合は、操作前に許可を与えるように求められます。
手順は以下の通りです(位置情報の取得許可を与えている前提)。
- 二次元コードの画面を表示する
- チェックインの場合は「利用開始」、チェックアウトの場合は「利用終了」をタップ
- 入場/出場しようとしている駅が正しいことを確認して「はい」をタップする
- 入場/出場駅が正しく表示されているか確認する
- (有人駅の場合)入場/出場の画面を係員に見せる
なお、山形新幹線/秋田新幹線の在来線区間(山形〜新庄間/盛岡〜大曲〜秋田間)で普通/快速列車に乗る場合、一部の駅を除き普通/快速列車用の自動改札機がありません。そのような駅では新幹線(特急列車)に乗る場合は自動改札機、普通/快速列車に乗る場合はセルフチェックイン/チェックアウトを利用してください。
また、他社との「乗り換え改札機」ではQチケを利用できません。Qチケ利用時に他社線に乗り換える場合は、いったんJR東日本の駅を出場して、別の乗車券で他社線の駅に入場してください。
常磐線の綾瀬駅は東京都区内の駅としてえきねっとQチケに対応していますが、駅施設は東京地下鉄(東京メトロ)が管理しているため自動改札機を利用できません。セルフチェックイン/チェックアウトの操作を行った後、東京メトロの係員に画面を見せて入場/出場してください
なお、セルフチェックインについては位置情報をベースとする自動化にも対応しています。自動セルフチェックインを有効にした場合、乗車駅の約100m以内に近づくと通知が表示されるので、その通知をタップするとチェックインが完了します。
ただし、自動セルフチェックインは位置情報の提供を「常に許可」しないと使えません。
乗り越しが必要な場合はどうする?
えきねっとQチケで当初購入した区間から乗り越した場合は、以下の通りの対応となります。
Qチケ対応駅で改札を出ずに他社に乗り越した場合(チケット内容を問わず)
Qチケ対応駅で改札を出ずに他社線に乗り越した場合、到着した駅の係員窓口(有人改札)で二次元コードの画面を見せて申し出てください。乗り越した他社線の運賃のみを現金で精算します(全区間ではありません)。
東京都区内において、改札を出ずに他社線に乗り換えられる駅は以下の通りです。
- 常磐線
- 北千住駅:東京メトロ千代田線/日比谷線、東武鉄道伊勢崎線(スカイツリーライン)
- 綾瀬駅:東京メトロ千代田線
- 中央線
- 中野駅:東京メトロ東西線
Qチケ対応の駅への乗り越した場合
Qチケを使ってQチケ対応駅に乗り越した場合、乗り越し区間(着駅から40〜45km程度の距離)のQチケを「買い足し券」としてアプリから購入できます。購入方法は以下の通りです(往復乗車券を購入した場合、復路の買い足し券も同様の手順で買えます:※3)。
- 二次元コード表示画面の「チケット詳細」をタップ
- 「買い足し券(乗車券)を購入」をタップ
- 到着駅と出発(または到着)予定時刻を入力して「列車を検索する」をタップ
- 希望する経路の「きっぷ・座席の種類選択へ進む」をタップ
- 経路を確認して「次へ」をタップ
- 「この内容で確定する」でタップ
(※3)往復乗車券は2026年3月13日をもって販売を終了する(参考記事)
なお、買い足し券は乗車券の距離を問わず元のQチケとは“別に”購入する扱いとなるため、事前に乗り越すことが分かっている場合は、乗車(利用開始)前に予約を変更した方がお得になる可能性があります。
また、買い足し券には特急券が含まれていません。現在乗車している特急列車を乗り越す場合、特急料金については以下の通りの取り扱いとなります。早めに車掌に申し出てください(車内精算:※4)。
- トクだ値を適用していない場合
- 降車駅から乗り越す:実際に乗車した区間と、券面区間の特急料金の差額を精算(いずれも無割引)
- 乗車駅まで乗り越す:乗車駅までの特急料金を別途精算(無割引)
- トクだ値を適用している場合:無条件で乗り越し区間の特急料金を別途精算(無割引)
(※4)指定席を利用している場合、乗り越す区間で同じ座席を利用できない場合がある
Qチケ非対応の駅に乗り越した場合
Qチケで乗車してQチケ非対応の駅で出場した場合、到着した駅が有人駅の場合は係員窓口に、無人駅の場合は乗務員に二次元コードの画面を見せて申し出てください。元のQチケの距離を問わず、乗り越した区間の運賃を現金で精算します(全区間ではありません)。
実際に使ってみた感想
筆者は8月に宮城県内で、11月に東京都区内でえきねっとQチケを使ってみました。
えきねっとQチケのメリットは係員が不在でも手元のスマホ(またはPC)できっぷを買えることと、対応エリアであればSuica(交通系ICカード)に対応しているかどうかを意識する必要がないことにあります。片道100kmを超える乗車券を買う場合、従来は原則として「みどりの窓口」か「指定席券売機」で買う必要がありますが、これらの設備がない(あるいは係員がいなくて買えない)状況でも、スマホでサクッと買えるのは素晴らしいです。
「みどりの窓口」「指定席券売機」がなかったり、みどりの窓口があっても係員がいない時間帯があったりする駅でも、Qチケであれば手元のスマホで片道100km超の乗車券を買えます(写真は宮城県女川町の女川駅)
一方で、QチケのデメリットはSuicaエリアではICカード運賃が適用されないことと、購入者本人の画面が表示できない場合は実質無効となることです。
前者については2026年3月14日の運賃改定において全ての運賃帯が「紙の乗車券≧ICカード」となることが確定しているので、Suicaエリアに閉じて使う場合はちょっと損した気分になるかもしれません。
後者については「モバイルSuica」「Apple PayのSuica」もおおむね同様なのですが(参考記事)、Qチケの場合は「バッテリー切れ」に加えて「画面破損」や「通信途絶」もリスクとなり得ます。画面に二次元コードを表示できない場合は乗車する(した)区間のきっぷを再購入しなければなりません。この場合、以下の手順に従って手続きをすればQチケの代金を所定の手数料(※6)で払い戻しできます。
- 予約したQチケと“全く同じ”区間/列車/設備のきっぷを購入する
- みどりの窓口(「話せる指定席券売機」のオペレーターモード)で購入する場合、その場でQチケが表示できなくて再購入することを伝える(この場合、きっぷに「紛失再」という印字が付与される)
- (特急列車の場合)やむを得ない事情があるときは、“当日の”後続列車を購入しても構わない
- 1.で購入したきっぷで列車に乗る
- 「紛失再」の印字が付いている場合は自動改札を通れない(係員窓口を通る)
- 下車駅の改札口できっぷに「再収受証明」の印を押してもらう(※7)
- 下車時は有人改札を通り、きっぷを持ち帰る(自動改札機などに投入しない)
- 乗車日から1年以内にWebサイトからアクセスできる専用フォームで払い戻しの申請を行う
- 持ち帰ったきっぷの写真(GIF/JPEG/PNG形式)を添える
- 撮影前に、きっぷにボールペンで「○月×日払戻申請済み」と記入しておく(○月×日は申請日)
- 利用しなかった(できなかった)Qチケの代金から手数料を差し引いた金額が払い戻される(※7)
(※6)乗車券と新幹線の自由席特急券は各220円、新幹線/在来線の指定席特急券はえきねっと特典対象の場合は320円、えきねっと特典対象外の場合は乗車2日前までが340円、乗車前日/当日が料金の30%(最低340円)
(※7)下車駅が無人駅の場合は、車掌(ワンマン列車の場合は運転士)に相談する
(※8)JR東日本で処理を完了するとメールで連絡が来る(カード会社の都合で払い戻しまでにさらに時間を要する場合がある)
個人的には、えきねっとで複数の予約が存在するとえきねっとチケットレスアプリで必要なQチケを含む予約をタイムリーに表示してくれないことがあることが気になります。時系列で有効な予約を順繰りに表示してくれるだけでも助かるのですが。
えきねっとQチケはSuicaの使えない駅、とりわけ係員のいない駅での乗車券類購入にとても便利であることは間違いありません。2026年度内にはJR東日本の全駅で対応する予定とのことですが、JR他社や私鉄との乗降への対応が今後の焦点となるかと思います。どうするんですかね……?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
JR東日本の二次元コード乗車サービス「えきねっとQチケ」が10月からエリア拡大 「東京都区内」と「東北新幹線(東京〜郡山間)」に対応
JR東日本の二次元コード乗車サービス「えきねっとQチケ」が、サービス開始から1年経過してエリアを拡大し、綾瀬駅を含む東京都区内の在来線駅と、東北新幹線の東京〜郡山間の各駅からの乗降に対応する。
Suicaがなくてもスマホで乗れる! JR東日本が二次元コード乗車サービス「えきねっとQチケ」を10月1日から運用開始 東北地区から順次拡大
JR東日本が検討していた「QRコード乗車サービス」がいよいよ始動する。東北エリア(一部線区を除く)の新幹線と在来線を皮切りに、2026年度末までに同社管轄の全線区で利用できるようにする計画だ。
JR東日本がネット銀行「JRE BANK」を5月9日開始 運賃割引や無料のSuicaグリーン券など
JR東日本グループブランドのデジタル金融サービス「JRE BANK」が5月9日にスタート。口座を開設すると一般的な銀行サービスに加え、鉄道の運賃割引やSuicaグリーン券のプレゼント、JRE POINTがたまるなどの特典を提供する。
JRグループの「往復/乗車券」は2026年3月13日で終了 JR東日本の運賃値上げは2026年3月14日から 注意点をチェック
JRグループにおける「往復乗車券」「連続乗車券」の廃止日が決まった。また、東日本旅客鉄道(JR東日本)における運賃値上げ期日も決まった。
スマホの電池切れ、改札通過に支障? 「駅に充電器を置いて」に「求めすぎ」の声 最終手段は“あの原点回帰策”
駅中でスマートフォンのバッテリーが切れたら、改札を通過できないのではないのか……? こんな疑問や困り感に関する声をネット上でよく見かける。中には「駅中でモバイルバッテリーレンタルサービスを必要とする」意見も散見される。一方、「鉄道会社側に求めすぎじゃないのか?」と批判の声もある。解決策はあるのか。




