病院側から見た「マイナ保険証」のメリットとは? 「1日1〜2件」でもスマホ利用に期待する理由(1/4 ページ)
12月2日から、健康保険証における「マイナ保険証」利用が本格的に“本則”となった。病院での利用状況はどうなのか、国立病院機構東京医療センターの事務担当者に話を聞いた。【追記】
各種健康保険証の利用について、12月2日から「マイナンバーカード(個人番号カード)」を使った仕組み(いわゆる「マイナ保険証」)を基本とする形態と完全移行した。マイナ保険証を利用していない場合、同日以降は保険者が発行する「資格確認書」が健康保険証代わりとなるが、2026年3月までは暫定措置として旧来の健康保険証でも保険資格の確認が可能だ。
- →マイナンバーカードの健康保険証利用(マイナ保険証)について(厚生労働省)
それに先立つ形で、厚生労働省とデジタル庁は9月から、Androidスマートフォン向けの「スマホ用電子証明書」やiPhone向けの「マイナンバーカード」をマイナ保険証として利用できる制度を開始し、順次導入が進んでいる。
マイナ保険証の報道を見ていると、ネガティブな点を強調するような報道が多いように思える。しかし、実際に使っている身からすると「え、そんなことないんだけどな……」と思う報じ方をするケースもある。ただ、これはあくまでも“患者”としての自分の視点での話。実際にマイナ保険証に関する事務処理を行う“医療機関”の話も聞いてみたい所である。
そんな中、11月下旬に国立病院機構東京医療センター(東京都目黒区)の事務担当者に話を聞く機会を得た。同センターは国立病院機構の本部に併設された高度/急性期病院で、640床の入院病棟を備える。規模が大きいだけに、マイナ保険証に関するトラブルも多そうなのだが、果たして実態はどうなのだろうか……?
【追記:12月12日16時】本記事の内容に関連して、デジタル庁および厚生労働省に質問した事項を追記しました
マイナ保険証での保険資格確認はどうやっている?
先述の通り、東京医療センターは高度/急性期病院となるため、原則として初診時は他の病院/診療所の医師による「紹介状」が必要となる。ゆえに初診時は窓口での対応となるが、その場合は初診窓口にある端末でマイナ保険証の資格確認を行う。
再診の際は「自動再来受付機」を使っての受付となる。受付機に診察券を入れ、画面の指示に従って操作をすると、受診票が出てくる。受診票の受け取り後、基本的にはそのまま受診科のあるフロアの受付に向かうことになるが、健康保険証の資格確認が必要な場合は、受診票にその旨が表示される。
健康保険証の資格確認だが、根拠法である「健康保険法」やその施行規則によって診療/処方ごとに行うことが原則となっている。言い換えれば、保険者(患者)は病院/診療所や薬局に行くたびに健康保険証(マイナンバーカードまたは資格確認書)提示しなければならないのだ。
「あれ、1カ月(月をまたいだ時)に1回の提示(確認)でいいのでは?」と思う人もいるかもしれないが、これは継続的な診療/処方を受ける(≒入院する)場合を想定した例外だ。そのため、マイナ保険証の導入(≒健康保健のオンライン資格確認)を機に、診療/処方ごとの確認に切り替えた病院/診療所/薬局も見かける。
入院でなくても継続的な診療を受ける患者が多いこともあってか、東京医療センターについては外来でも引き続き「1カ月に1回の確認」を継続しているという。受診票に資格確認を受けるように書かれた場合は、自動再来受付機のすぐそばにある「保険証窓口」マイナ保険証または資格確認書を提示し、資格確認を受ける。
受付には2台のマイナンバーカードリーダーが設置されており、いずれもスマートフォンの利用にも対応している。東京医療センターの事務担当者によると、取材時時点ではスマートフォンによるマイナ保険証は「1日1〜2件の利用がある」という。
なお、受付には2台のカードリーダーとは別に、事務員が付き添わない「セルフ端末」も1台設置されている。これはマイナ保険証の利用者かつ、前回確認時から保険情報の変更(保険者の異動など)のない人が利用できる。サクサク手続きが進むとのことで、比較的若い利用者(患者)からは好評だという。
“セルフ”とは言うものの、保険資格の確認は事務員が端末を使って順次実施する。保険情報について、利用者に確認を取る必要がある場合は、会計時までに確認を取るようにしているとのことだ。
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