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インタビュー

FCNTに聞く「arrows Alpha2」 10万円未満を死守できた理由、メモリ8GBでも体験価値を守るチューニングの裏側(2/3 ページ)

FCNTは前作の好評を受け、デザインや耐久性を一新した「arrows Alpha2」を急ピッチで開発した。世界的なメモリ価格高騰に直面する中、全社的な徹底したコスト削減と最適化で10万円未満の価格帯を維持した。下位モデルはメモリ8GBにスペックダウンしたが、仮想メモリ技術によってカバーしている。

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頑丈さを分かりやすく伝えるために水中撮影をサポート

―― 結果として、デザインは今っぽくなりつつも、堅牢性は高まっています。

久保氏 特に落下ですね。今までは1.5mからの落下でしたが、今回は新たに1.8mから落としてもガラスの割れに強くなり、“落下体力”は上がっています。また、水中撮影も今回新たに盛り込んだ要素で、防水性もこれまで以上に向上しています。水中撮影は、水の中でハードウェアボタンを押さなければなりませんが、arrows Alpha2では、押した際に水が入らないよう、今までにない防水構造を採用しています。

 うちだけではなく、他社にもIP68やMIL規格をクリアした端末はありますが、あれはあくまで1回の試験結果で、水中撮影は繰り返しの打鍵に耐えなければなりません。これに耐えられないものは、われわれの過去機種にもありますし、恐らく他社の機種にもあるのではないかと思います。

arrows Alpha2
機構設計を担当した久保洋氏

―― 防水でも水中撮影がダメというのは、意外と気付かないポイントだと思います。

外谷氏 今回、世界一にこだわったのは、トップダウンの強い要請で現場には相当苦労を掛けてしまいました。他のメーカーもIP68やIP69にはなっていますし、MIL規格の試験をクリアした端末もありますが、水中撮影のような機能はシンボリックだと思います。頑丈だよねと分かりやすく伝えることはとても大事なことで、今回は相当無理なチャレンジをしましたが、第三者機関で世界一頑丈だという評価を取ることができました。

―― 落下に関しては発表会でも試しましたが、ガラスが割れないのはもちろん、フレームにも傷がほとんど付いていなかったのに驚きました。あれは何をやっているのでしょうか。

久保氏 金属の材質と、あとは形状ですね。ぶつかった際に滑りながら衝撃を分散させられるよう、形を微調整しながら作ってきました。他社で樹脂筐体を使って2.5mをうたっているものはありますが、それだと落下の際に塗装がはがれてしまう。金属フレームにはそれがありません。

 また、特に今回こだわったのがリア側のパネルです。ガラスだとベゼルを細くすることで割れのリスクが出てきますが、ベゼルを細くしながらも割れないよう、グラスファイバーのパネルを使っています。

arrows Alpha2
arrows Alphaはディスプレイの端までフィルムを貼れないため、浮き上がったフィルムの端がダメージを受けやすかった。実際、写真ではフィルムが割れてしまっている
arrows Alpha2
arrows Alpha2は端までフィルムを貼れる。わずかな溝がフィルムの端を守ってくれる
arrows Alpha2
背面には、より強固なガラスであるグラスファイバーを採用している

外谷氏 傷が付いてしまうのは避けられませんが、今回はヘアライン加工を入れ、若干キラッとさせていて、この部分もご評価をいただけています。このキレイさが続くようにしたいということで、アルマイトも結構厚くして、なるべく傷が目立ちにくい加工を施しています。仮に傷がついてしまったとしても、愛着がある道具のように見える。ダサくならないよう、塗装の工夫をしています。

メモリ8GBでもAIやカメラを動かせるよう急ピッチで開発

―― 企画検討を始めた時期は、まだメモリの価格がここまで上がっていなかったと思います。その後、どんどん高騰していきましたが……。

外谷氏 先ほど8月下旬と申し上げましたが、メモリの価格がヤバくなりそうだという気配はありました。ただ、具体的に影響があることが分かったのは、10月の終わりから11月の半ばにかけてです。状況がどれだけ変わりそうなのかが、徐々に見えてきました。

 それと並行して、プラットフォームの選定もしています。開発期間は大体1年ぐらい、早いものだと10カ月ぐらいでもしかしたら他のメーカーよりも早いかもしれませんが、ギリギリ間に合うのがそのタイミングでした。コストを下げなければいけない時に、どうしてもプラットフォームの変更が選択肢に入ってきます。

 チップセットには、「Snapdragon 7 Gen 4」などもあり、そこに変えるという選択肢もありましたが、プラットフォームにはある一定の水準があり、それをお客さまも見ているというのが調査上分かっていました。arrows Alpha2は、プラットフォームを変更していないので、そこが残念というご意見もありましたが、どちらかというとメモリが高騰する中で、何とかプラットフォームを維持しました。プラットフォーム自体も値上がりしているので、そこもがんばっています。

 8GBメモリをやるかどうかを決めたのは、その後です。10月、11月にはメモリ価格は上昇していましたが、とはいえまだ頑張れそうな感じの水準でした。ですが、年が明け、3月ごろにはメモリがぐんぐん上がってしまった。もちろん、その間、何もせずに見過ごしていたわけではなく、いろいろな手を打ってコストを下げる努力をしようとはしていましたが、価格の上がり方が今までとはまったく違うレベルでした。もはやマネジメントができないぐらいの暴れっぷりです。

 これはいつもと違う、さすがにマズイということで、本当はやりたくなかった8GBの選択肢も考えていかないと、お客さまのデメリットになってしまいます。8GBでどうすれば成立するのかというところから取り組むことになりました。

 もともと、arrows AIやカメラは12GBのRAMがないと満足に動かない前提でしたが、それを8GBで動かせるよう、急ピッチで開発を行いました。仮想メモリの開発も行っています。また、それをユーザーに受け入れてもらえるかは、高橋と何度もいろいろな切り口で検討を重ねています。その結果として体験価値はチューニングできましたが、伝え方を含めてご納得いただけるかは、直前まで悩んだ部分です。

―― ストレージだと保存できるデータが目に見えて減るので分かりやすいですが、メモリが12GBから8GBに変わることで、目に見えて遅くなるようなことはあるのでしょうか。RAMについては、そこまで気にしないユーザーもいそうです。

外谷氏 動作には効いていました。確かに、arrows Alphaの12GB+512GBは、あの容量をあの価格で選べることに価値を感じている方が多かったのですが、ハイエンドからの乗り換えだと、RAMも結構見られています。少なくとも、今使っている機種よりRAMを減らしたくないということもあるかと思います。2、3年前に12GBを積んでいた機種から下げたくないという観点で見ているのです。

arrows Alpha2
最大12GBを仮想メモリとして活用することで、下位モデルでメモリが8GBに減った分をカバーする(画像は12GBモデル)

―― どんな部分に違いが出るのでしょうか。

外谷氏 買った後、アプリを普通に使っている分には、その差が分かる人はほとんどいないと思います。12GBと8GBの端末を並べて負荷をかけた検証をすれば少しの差は見えてきますが、3年、4年前のスマホから買い替えた方が悪く感じるようなことはないと思います。

 ただ、長く使った際に、容量限らずもたつく場合があり、そういった中でマルチタスクを切り替える際に、12GBより8GBの方が遅くなってしまうことが検証できています。arrows Alpha2では、そこに仮想メモリを使いました。なるべく12GBに近いパフォーマンスを出せるよう、ここにいる春藤に依頼しています。

春藤氏 メモリで痛い目にあっているのはローエンドで、4GBぐらいだと、普通に使っているだけでもメモリが枯渇してきます。それで動きがトロトロになるというのは経験しています。そのイメージで見れば、12GBを8GBにしても問題はないのですが、年数をかけてアプリがいっぱいになると、秒オーダー(1秒〜数秒)、下手をすると10秒、20秒待たされることが出てきます。

 仮想メモリは元からAndroidにあった仕組みで、メモリをキルしてくる処理の中でストレージを使い、RAMを空けてあげる仕様になっています。ストレージとのやりとりがあるのでそんなにうまくいかないのでは……と思っていましたが、やってみるとかなり賢くストレージとスワップ(交換)し、きめ細かかつ効率よく実行している。

 ユーザーの使い勝手という観点だと(物理メモリとの違いが)ほとんど分からず、本当に12GBで動かしているような動きをするので大したものだと思いました。ベースのアルゴリズムが非常にうまくできていたので、もっとチューニングすれば、小容量メモリでもできるようになるかもしれないと思い、開発を行いました。

arrows Alpha2
ソフトウェア開発を担当した春藤和義氏

―― とはいえ、RAMは経年劣化するわけではないですよね。

春藤氏 劣化というより、いろいろなデータが残ることがあります。結局、プログラムはRAM上で動いているので、忙しくなってくるともとの容量が効いてきます。アプリを終了させても残りますからね。

外谷氏 意外とアプリを終了させず、そのままになっている方が多い。ハイエンドならそういった使い方もできるので、その体験価値を守れるよう、ストレスをかけながらテストしてきました。

 また、ほとんど言っていませんでしたが、メモリは「LPDDR5X」で、ストレージも「UFS 4.0」と最高ランクのものを使っています。ですから、読み書きも含めて快適に使っていただけると思います。

―― レノボグループでは、モトローラも仮想メモリをよく使う印象があります。連携は取ったのでしょうか。

春藤氏 同じようにシステムをやっている部隊がいますが、調整するところは調整しました。ただし、あちらはグローバル向けで、arrowsには日本特有の事情もあるので、そこはFCNTで実装しています。

外谷氏 ベースラインの研究は、リソースをうまく活用しました。ただし、大容量ゲームのような、ものすごくストレスをかけるような使い方はFCNTオリジナルで研究したものを反映しています。

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