「arrows Alpha」開発者インタビュー 再定義した“ハイエンド”の中身、「強さ」「安心」に込めた思い(1/3 ページ)
FCNTは、近年価格が高騰するハイエンドスマートフォンを再定義し、定着を図ろうとしている。8月28日、8万円台を実現した「arrows Alpha」を発売する。arrows Alphaのタフさやハイエンドの定義など、気になる疑問についてインタビューした。
FCNTの最新スマートフォン「arrows Alpha」が、8月28日に発売された。
FCNTは、近年価格が高騰するハイエンドスマートフォンを再定義し、定着を図ろうとしている。ハイエンドモデルが10万円台だった8年前(2017年)の水準を意識して、arrows Alphaでは8万円台を実現した。もちろん、FCNTが得意とする堅牢性の高さは健在だ。こうした「手の届くハイエンド」に込めた思いを、以下の開発メンバーに聞いた。
- 統合マーケティング戦略本部 本部長 外谷一磨氏
- プロダクトビジネス本部 プロダクトマーケティング統括部 副統括部長 正能由紀氏
- プロダクト事業部 第一開発部 シニアプロフェッショナル 春藤和義氏
- プロダクトビジネス本部 ソフトウェア開発統括部 第三開発部 相合一毅氏
- プロダクトビジネス本部 プロダクト事業部 事業部長 近藤洋一氏
長く飽きずに使ってもらうことを目指したデザイン
―― arrows Alphaの本体デザインについて、カラー展開が今回はブラックとホワイトの2色のみである理由を教えてください。
外谷氏 もともとAlphaでは他の色も検討していましたが、マーケット調査をすると、白と黒を求められるお客さまが全体の約80%を占めていました。その中で、今回はさまざまなコストなどを突き詰めていく過程で、仕上がりを考慮したときに最も訴求力があり、訴求しやすい色としてブラックとホワイトを選定したという背景があります。
―― 5月の発表会以降、他の色が欲しいという要望はありましたか。
外谷氏 直接なご意見というよりは、Xなどでの皆さまの発言を詳細に拝見しており、他の色が欲しいというご意見は発表会以上にあると理解しています。「地味」というご意見もあるかと認識しています。
―― 具体的にどの色が欲しいという要望はありましたか。
外谷氏 具体的な色の指定はありませんでしたが、もう少し鮮やかで派手な色があれば良いというご意見はいただいています。
―― 外観が「arrows We2」と似ていますが、これはコストの削減が理由でしょうか。
外谷氏 デザイン面で言えば、デザイン言語を「arrows」として合わせているという点が一番大きな理由です。いわゆるデザイン言語の統一によって、arrowsらしいデザインにしています。そのため、似ているという印象を持たれるかと思います。
―― arrowsらしくないデザインにするよりは、「arrowsといえばこのデザイン」というのを定着させたいということでしょうか。
外谷氏 はい。2023年の「arrows N」という製品からデザイン言語を少し変えていまして、arrowsのブランド自体のロゴも変えています。そのタイミングでデザイン言語を変更し、ブラッシュアップはシーズンごとに行っていますが、基本的にはカメラ周りのデザインなどは全体的に統一しているのが、2025年モデルまでの動きです。
―― 今回のarrows Alphaで何か変更点はありますか。
外谷氏 arrows Alphaに関しては、このミドルフレームの形状を、従来はラウンドさせていたのですが、今回はスパッと切ってストレートにしています。これにより、手触りの良さや持ちやすさ、そして高級感といった質感出しも行っています。ランクが1つ上のモデルに対する品位の向上として、持ちやすさなどをキープした上で取り組んだ変化点です。
正能氏 コンパクトなサイズ感や持ちやすいサイズ感も、Weと近いイメージを持たれたかもしれませんが、arrows自体がすごく使いやすさを大切にしているので、その中でも大きな要素である「持ちやすさ」という観点で、今回のAlphaの横幅もこだわりを持ってこのサイズ感にしています。コストダウンとは真逆で、そのサイズ感にこだわった結果です。
外谷氏 派手さはないのですが、あえて狙っている部分でもあります。スマホを買ってから買い換えるまで、一般的に4〜5年くらいのサイクルがある中で、購入後に飽きずに長く使い続けていただけるデザインを目指しています。
サイドフレームやディスプレイ、IPX9等級は何のため?
―― アルミニウムのフレームも特徴の1つですが、こちらを採用された意図は何でしょうか。
外谷氏 いくつかありまして、1つは、プレミアムなレンジのモデルなので、高級感を演出するという点です。金属の質感や、今回はヘアライン加工を施し、高級感を出せるような処理をしています。プラスチック樹脂と比べるとアプローチの幅があるという点がまず1つ。もう1つは、より強靱(きょうじん)なボディーにする点です。先ほど正能から説明がありましたが、横幅72mmというところにすごくこだわっており、その幅感の剛性を保ちつつ、堅牢性を保っていく中で、この金属のミドルフレームが非常に役立っているというところで、合理的に採用しています。
【訂正:8月28日14時36分】初出時、端末の幅が71mmと記載しておりましたが、正しくは72mmです。お詫びして訂正いたします。
―― ディスプレイの縁がわずかにラウンドしている理由を教えてください。
外谷氏 実は、落下したときのさまざまなパターンをシミュレーションしています。落下時に完全なフルフラットだと当たる面積が広くなってしまいます。そこに若干ラウンドを持たせることで、ある一定の角度からの当たり具合を吸収できるというところがあります。
近藤氏 具体的には「第一衝突面にならないように」ということですね。ガラスが直接当たらないように少しラウンドさせています。そのために額縁、つまりケースの方が先に地面に当たりますので、ガラス割れに強くなるという設計になっています。
―― 過去のモデルでは、ディスプレイ面がフレームより窪んでいる構造で、それが衝撃に強いとされていましたが、構造としては変わったのでしょうか。
外谷氏 同じロジックです。昔のモデルはフレームを高くすることで衝撃から守っていましたが、デザイン的に少し古くさく感じたり、指が引っ掛かったりすることがありました。今回は、表面的には同じ高さに見えつつも、縁の周囲をわずかに高くし、さらに四隅を盛り上げることで、直接ガラスが当たりにくくしています。
―― 耐久性能は過去のarrowsと比較してどのように進化しましたか。
近藤氏 今回はさらに防水性能を強化しており、arrowsでは初めて「IPX9」に対応しています。これまでも堅牢性を訴求してきましたが、さらにそういったところも最新のトレンドとして押さえています。
―― 具体的にはどういう等級なのでしょうか。
近藤氏 「高圧蒸気洗浄噴射」に対応する規格で、80℃のお湯に対応しています。
―― どういった場面を想定されているのでしょうか。
外谷氏 実際に高圧蒸気洗浄噴射シーンはまれなケースだとは思いますが、日本の防水性能への要求は非常に高く、より上の等級を取得できることは防水性能が高いことの担保になります。また、「ハンドソープで洗える」という訴求をしている中で、最も防水等級が高いものに対応していることが安心感につながると考えています。お風呂の湯気などがある環境でも問題なく使えます。
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