スマホの「実質価格」高騰の恐れ、iPhone 18 Proは2倍高く? 総務省の残価設定ルール厳格化は“誰のため”か:石野純也のMobile Eye(1/2 ページ)
残価設定型分割払いの残価算出方法を巡り、キャリアやメーカーの意見が割れ総務省が規制見直しを進めている。キャリアの裁量を排除する2案が検討される一方、データ精度の課題からGoogleらが強く反発している。厳密なルール化は残価率の下落を招き、結果としてユーザーの実質負担額が大幅に跳ね上がる懸念がある。
端末購入の仕組みとして定着しつつある残価設定型の分割払いだが、その残価の算出方法を巡って事業者間の意見が割れている。9月25日に、総務省の「利用者視点を踏まえたモバイル市場の検証に関する専門委員会」が公表した「専門委員会とりまとめ2026(案)」とパブリックコメントにより、その対立が浮き彫りになった。
残価の設定が問題になっているのは、それを超えた分が割引と見なされるからだ。現状の規制では、中古事業者の業界団体が公表した実績値に基づき、各キャリアが予想価格を決め、それに基づいて残価が設定されている。その手続きが煩雑で、キャリアごとの差も大きいため、見直しを求める声が高まったのがこれまでの流れだ。一方で、どう見直すかの方向性が大きく2つに分かれている。その状況を解説する。
端末の残価はどう決まる? 中古市場参照もキャリアの裁量は残る
専門委員会での議論は、主にホッピング問題への対応に焦点が当たっているが、それと並行する形で、端末購入プログラムの見直しについても検討が進んでいる。まず現状を整理すると、各キャリアには、税別で4万円まで(ミリ波非対応モデルの場合)という割引の上限が設けられている。これに対し、端末購入プログラムで免除される残価に相当する部分は、端末の下取りに対する対価のため、割引とは見なされない。
一方で、キャリアが残価を自由に決めることができると、この部分を盛りに盛ることで実質的な割引になってしまう。これを防ぐため、残価の基準として中古端末の買い取り価格を参照するルールになった。ただ、一口に中古といっても、その販路は多岐にわたる。
現状の規制では市場の買い取り価格を超えた残価は、ユーザーに対する利益の提供と見なされ、割引上限の範囲に含まれてしまう(資料は利用者視点を踏まえたモバイル市場の検証に関する専門委員会の『専門委員会とりまとめ2026(案)』から抜粋、以下同)
実際、ソフトバンクはメルカリやYahoo!オークションといったオークションサイトを参照して、残価を高めに設定していたことがある。なお、2サービスともスマホの流通量は非常に多く、端末の残価を算出する際に参考にしてはいけない理由に乏しい。それを問題視するのが本当に適切だったのかには疑問の余地が残る。
現状の残価設定ではフェアな競争にならないということで、キャリアの恣意(しい)性を排除するため、中古端末販売店の業界団体であるリユースモバイル・ジャパン(以下、RMJ)の協力で、過去に販売された端末の買い取り価格から平均値を算出。これを残価として認められる基準にした。ただ、買い取り価格は1機種1機種異なっており、手続きが煩雑になる。
そのため、キャリアには端末の種類に基づくグルーピングが認められている。現状では、iPhoneはiPhone、AndroidはAndroidという形で、一律に残価を設定することができる。ここで問題になったのが、グルーピングの際にピックアップする端末によって、残価をキャリアがコントロールできるということだ。
簡単な例を挙げると、Androidはローエンドからハイエンドまで、価格が大きく異なり、傾向として、グローバルで流通するサムスン電子やGoogleなどのハイエンド端末の方がリセールバリューは高くなる。こうした機種のみをピックアップし、Androidとしての残価率を定めれば、その分端末購入プログラムで免除できる金額が大きくなる。
現状でも、キャリアごとに残価が大きく異なるケースがあるのはそのためだ。ただ、グルーピングをする手続きは依然として煩雑で、恣意性も残っているため、規制の抜け穴になっているのでは……というのが専門委員会での進められてきた議論だ。その改正の方向性として現時点で挙げられているのは、以下で解説する2つになる。
パブコメで反発したGoogle、基準となるデータを問題視
1つ目が、グループ化にあたり、キャリアが選択できる仕組みを排除するというものだ。どのようにグループ化するかまでは決まっていないが、一例としてメーカー別や価格帯別などに分け、RMJのデータを元にそれぞれの残価率を設定することが想定されている。もう1つが、グループ化を認めず、1機種ずつの残価率をそのまま使うという方法だ。
一方で、Googleやドコモ、ソフトバンクが提案していた、全機種の残価率を一定にするという案は却下された。この方式は、減価償却の考え方に近い。どの機種かによらず、1年たったら何%、2年たったら何%というように、定率で残価が目減りしていく仕組みだ。例えば、Googleはスマホの法定耐用年数に基づき、4年から6年の償却期間を定め、一律で残価が下がっていく方式を同委員会で提案していた。
関係者によると、上記2つの方式を水面下で検討しており、どちらかに決まる可能性が模索されているという。これにパブリックコメントで不満を表明したのが、Googleだ。同社は、現状のルールやRMJのデータを「統計的な客観性の観点で課題が残存」していると指摘。その上で「将来の残価を正確に予測することは困難」として、「適切なガイドラインの再検討が不可欠である」と述べている。
統計的な客観性というのは、価格を決める際のデータが少なすぎることを指す。実際、RMJのデータは9社のみから集めたもので、買い取り時の査定に利用するAからCランクのもののみを反映しており、かつその比率は公開されていない。また、機種数が膨大で集計に時間がかかるため、半年以上のタイムラグが生じている。
こうした点を踏まえ、グーグルは「RMJが保有するデータは国内のスマートフォン流通市場全体の規模と比較して極めて限定的である他、データの更新頻度も半年に一度にとどまり、公表までに大きなタイムラグが生じ、直近の取引実態を適時に反映できない」と述べている。
また、2つの方法どちらに決まってもGoogleがパブリックコメントで懸念を示していた「端末メーカーや販売代理店の事業継続を脅かし、市場競争の硬直化やユーザーの選択肢縮小を招くリスク」は残る。ユーザーにとってのデメリットは、残価が低く見積もられた結果、端末の実質価格が上がる恐れがあることだ。次項では、その実例を見ていきたい。
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