検索
インタビュー

ファーウェイはなぜ「24時間測り続けること」にこだわるのか ウェアラブル開発責任者が語る医療機器との違い

スマートウォッチは医療機器にはなれない。ならば何で勝負するのか。ファーウェイのウェアラブル開発責任者・龔元松氏は、24時間連続で測ることと判定の速さを挙げた。深センの交流会と東莞のラボで聞いた。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 Huawei(ファーウェイ)は9月29日、中国・深センの坂田地区にある拠点で日本メディア向けにウェアラブル開発部門との交流会を開いた。登壇したのは、ファーウェイデバイス ウェアラブル&スポーツヘルスケア部門バイスプレジデントのキョウ・ゲンショウ氏だ。同社は調査会社IDCの統計で、2026年上半期のウェアラブル出荷台数が世界1位になっている。

交流会の会場
深センの拠点で開かれた日本メディア向けの交流会。壇上はキョウ・ゲンショウ氏

 交流会の主題は、同社が2024年に発表した健康計測技術「HUAWEI TruSense」だった。心臓や内分泌など領域ごとに別々に開発してきた計測技術を、センサーとアルゴリズム、データ処理の基盤まで1つの体系にまとめたもので、WATCHやバンド、血圧計機能付きのWATCH Dシリーズはこの共通の部品とアルゴリズムを組み替えて作る。同社はTruSenseの特性として、精度、包括性、速さ、柔軟性、開放性、拡張性の6つを掲げている。

HUAWEI WATCH GT 6の心拍変動表示
HUAWEI WATCH GT 6で心拍変動を表示したところ

 キョウ氏はこのうち精度について、「できないこと」から話を始めた。「ウェアラブルが医療機器と同じレベルの精度を実現したいといっても、それはできない」と述べる。本体の体積と消費電力に制約があるからだ。

 ウェアラブルの利点は別のところにある、というのがキョウ氏の説明だ。防水の製品なら入浴中や睡眠中も外さずに済み、24時間連続で測り続けられる。病院の検査では取れない、1日の中の変化を追えることに同社は価値を置いている。

1回の測定ではなく、点を線にする

 血圧を例にすると、病院で測れるのは受診したその瞬間の値だ。ところが朝に血圧が上がる人もいれば、夜や午後に上がる人もいる。本人が測るべき時間を知らなければ、高血圧のリスクを見逃す。同社は血圧計機能付きの「HUAWEI WATCH D2」で、日常生活を送りながら血圧を自動で測る自由行動下血圧測定の機能を入れた。この機能では、HUAWEI WATCH D2を装着したユーザーの血圧を昼に20回、夜に7回計測してくれる。

HUAWEI WATCH D2の血圧測定
「HUAWEI WATCH D2」で血圧を測定中。ベルト内側のカフが手首を圧迫する

 心拍数が一時的に上がったり、睡眠中の血中酸素が下がったりしても、1回の測定では異常なしと判定されることがある。キョウ氏は、複数の指標を長い期間で重ねて見ることで初めて見えるリスクがあると説明し、これを点から線、線から面への移行と呼んだ。

 測り続ける一方で、1つの指標を判定するまでの時間は縮めてきた。6つの特性のうちの速さにあたる部分だ。血中酸素の測定は2021年に45秒かかっていたが、2025年には10秒未満に縮めた。高血糖リスクの判定は当初7〜14日の装着が必要だったが、最新世代では約3日で済む。高血圧リスクの判定は、昼7時間と夜6時間の装着を条件に24時間で結果を出す。

 短縮できた理由としてキョウ氏は、センサーからアルゴリズムまで自社開発している点を挙げた。順番に処理していた計測を並行して進められるためだという。

HUAWEI WATCH 5のX-TAPで測定
HUAWEI WATCH 5の「HUAWEI X-TAP」に指先を当てて測定しているところ

病院との研究でアルゴリズムを作る

 商品化までの手順については、病院などと契約してデータを集め、アルゴリズムを開発した後、約20万人の従業員による社内βテストと、「HUAWEI Fans」と呼ぶ外部ユーザーのβテストを経て発売すると説明した。発売後に機能やアルゴリズムを大きく変えた経験はなく、調整は表示方法や操作の流れなど小さなものにとどまるという。

 健康アプリ「HUAWEI Health」のユーザーは6.2億人に達し、研究機関との連携は180以上、340以上の研究プロジェクトに1800万人以上のユーザーが参加している。中国では中国人民解放軍総医院(301医院)と約8年にわたり心臓領域の研究を続け、900万人のスクリーニングのうち2万人については、病院の追跡でリスクを確認した。

 リスクが見つかったユーザーには専門医が追跡の対話をする。そのやりとりの80%は基礎的な質問だと分かり、2026年には301医院の専門医の知見で学習したAIが一次回答を担う仕組みを中国で導入した。

 国や地域による違いを問われると、人体の構造は共通で基礎の原理は変わらないが、高血圧の判定基準が国によって異なるため、基準側で調整していると答えた。日本のユーザーについては、詳しい取扱説明書を求める傾向があると述べた。ランニング中の音声通知も、周囲の迷惑になるとして日本のユーザーからのニーズは少ないという。

リングは競合ではなく補完

 スマートリングとの関係を問われると、キョウ氏は手首と指の血管密度は同程度で、光学式センサーで得られる信号の本質は変わらないと答えた。違いは測定面積で、ウォッチは発光部と受光部を増やして信号の質を上げられる一方、リングは太く厚くできない。夜にウォッチを外す人でもリングなら着け続けるため、睡眠の計測はリングに向くとし、両者は補い合う関係だと述べた。

質疑応答で答えるキョウ氏
質疑応答で答えるキョウ氏

次の突破口は新しいセンサー

 今後3〜5年で何が変わるかという質問に、キョウ氏は「新しいセンサー」を挙げた。現在の光学式センサーは心拍のリズムを読み取っているが、手首の血管の太さや分布、血流の速さまで測れるようになれば、新しい指標が開けると語った。チップとAIの進化で、スマートフォンで処理している解析をウォッチ上で済ませられるようになるとの見通しも示した。

東莞のスポーツヘルスラボで精度を検証する

 血中酸素や睡眠といった指標には、それぞれ医療のゴールドスタンダードとなる機器がある。ファーウェイはウォッチの測定値をそれと並べて精度を検証しており、その現場が東莞のスポーツヘルスラボだ。

 ラボには酸素濃度を下げた部屋があり、高地での血中酸素を基準機器と並べて測る。睡眠は研究員がウォッチと脳波計を同時に装着して一晩眠り、睡眠段階の判定が一致するかを確かめる。血圧や血中酸素など健康系の研究室は2階と3階にあり、撮影はできなかった。

 1階はスポーツの計測に使う。室内スキーシミュレーターや流水プール、走路に埋めた床反力計を備え、新しい種目の機能はまずここで検証してから、実際のスキー場やプールでデータを集める。ウォッチが対応するワークアウトは100種類を超えるが、最初に手掛けたのは参加人数の多いランニング、サイクリング、水泳の3つだった。

室内スキーシミュレーター
東莞のスポーツヘルスラボにある室内スキーシミュレーター。スタッフがウォッチを着けて滑走する

 同種のラボは西安とフィンランドにもある。東莞が新しい種目の研究、西安が製品に載せる前の検収、フィンランドが先端動向やパラスポーツの研究を受け持つという。

(取材協力:ファーウェイ・ジャパン)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る