#012 - 2000年総集編	High Speed Access

ブロードバンド元年の2000年
最も普及しているのはCATV

「もっとパワーを…」。F1ドライバーの故アイルトン・セナの言葉だ。彼ほどの天才になると、あり余るパワーを自在にコントロールしてこそ満足のいく走りができるのだろう。われわれインターネットユーザーも、これまで彼と全く同じ言葉を叫び続けてきた。「もっとパワーを、もっとスピードを」。インターネットのラストワンマイルにおける接続速度のことだ。一般ユーザーがインターネットを利用するには、NTTがほぼ独占している高くて遅い市内電話網に頼らざるをえなかった。ほかに選択肢がなかったのだ。しかし本連載で、ことあるごとに“2000年はブロードバンド*1元年”という言葉を使い続けたように、ようやく手の届く料金で利用できるブロードバンドが普及しはじめた。

　ブロードバンドと一口にいっても、いくつか種類がある。まず、現時点で最もユーザーが多いのはCATVインターネットだ。郵政省の発表によれば、2000年9月末時点で、全国で約46万世帯が利用している。伸び率を考えると2000年度中に50万を突破するのは確実だ。ただし、CATVは提供エリアが限定されていることや、集合住宅では導入しにくいといった問題がある。

低コストが魅力のxDSL
光ファイバーもついに個人宅へ

　一方、今後の伸びが期待されているものにxDSLがある。DSLは既存の電話回線をそのまま利用できるので、新たにインフラを整備する必要がない。国策レベルでIT化を急ぐいまの日本にピッタリのブロードバンドといえる。ただし、試験サービス開始から1年を経たいまでも、思ったほどユーザー数が伸びていないのが実情だ。

　郵政省によればxDSL回線数は、2000年11月末の時点で5000余りと、悲しいほど少ない。これは、サービス導入時にNTTが回線調査に手間取ったり、DSL業者がDSL用の設備を電話局内設置する際にNTTの対応が悪く、手続きや工事に時間がかかるのが原因といわれている。

　だが、2000年7月、郵政省の諮問機関「高速デジタルアクセス技術に関する研究会」がNTTに対してDSL導入のガイドラインを提示してからは、事態は改善の方向に向かっている。さらに、これまでDSL業者に支払う接続料以外にNTTに対して月額800円のADSL回線使用料*2を支払う必要があったが、これが200円前後に引き下げられることとなった。このように環境は好転しており、ブロードバンドの大本命に一気に躍り出る可能性もあるのだ。

　2001年4月、ブロードバンドの真打ちともいうべき光ファイバーによる接続サービスが開始される予定だ。提供者はNTTでもなければKDDIでもない。有線ブロードネットワークス*3という有線放送の会社だ。有線放送の同軸ケーブル*4に沿って光ファイバーを敷設することで、一気にエリア拡大を狙っている。東京の5区（世田谷、渋谷、目黒、杉並、大田）を皮切りに、2001年10月には東京23区および政令指定都市、2002年4月には全国の県庁所在地でのFTTHサービス実現を計画している。

　この国をあげてのIT時代に、巨人NTTも手をこまねいているわけではない。とてもブロードバンドとはいえないが、定額制“疑似”常時接続「フレッツ・ISDN」が始まった。ただ、一部地域では開通まで数か月待たされる場合もあり、ユーザーをやきもきさせている。さらにこの冬には、地域IP網*5を利用したADSL事業「フレッツ・ADSL」への本格参入や、FTTHの試験サービス開始などを予定している。

　また、2001年春からは、スピードネットがサービスを開始し、無線インターネットも選択肢に加わりそうだ。2000年に産声をあげたブロードバンドが、2001年に大きく普及することを願っている。

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