ブロードバンドブームのなか、急激な勢いでエリアを拡大しているADSL。一方、CATVの場合、残念なことに急速にエリアを広げているという話は聞かない。J-COMの瀬沼氏は、「日本の場合、CATV事業が成立するようなエリアはほぼ整備が終了している」と打ち明ける。また「他社が提供中のエリアにあえて進出するつもりもない」(同氏)とも。つまり、CATVのエリアは今後大きく広がることは考えにくいというわけだ。
J-COMでは、HFC化されたネットワークでサービスを提供している。これはユーザー宅のすぐ近くまで光ファイバーが敷設されているという意味でもある。であれば、家に引き込む手前で同軸ケーブルに変換しなくても、いっそのこと各戸にそのまま光ファイバーを引けば、あっという間にFTTHが可能になるはずだ。しかし「物理的には可能だが、ホームターミナルやモデムなどをFTTH対応にさせなければならないのでコストが高くなり、初期費用や利用料金に跳ね返るので現状では考えにくい」(同氏)とのことだ。CATVの完全光ファイバー化は当面はなさそうだ。
J-COMのインターネットサービスを語るときに必ず話題に上るのがルーターの禁止問題だ。J-COMでは、ユーザーがルーター*5を使用することを禁じている。これに関して「利用者全体でパソコンが何台接続されているかを正確に把握することで、すべてのユーザーに均等なサービスが行えるようにしたい」「ユーザーアンケートを採っても、ルーター解禁を支持する人は10パーセントに満たない」(同氏)と、現時点では解禁するつもりはないようだ。確かにルーターを使って2台、3台のパソコンを接続する行為は、利用者の多くを占める1台のパソコンしか使わない初心者にとっては無関係といえる。ただし、最近はセキュリティ*6を確保するためにルーターを導入する人も増えており、「セキュリティは大切な問題なので検討はしなければならない」(同氏)とルーターの解禁が全くの夢物語でないことを示唆する。
これまで築年数の古い集合住宅への導入に関して、テレビの視聴設備がインターネットの双方向通信に適さないため不可能となる例が多かった。しかし、いまはそのような古い設備でもインターネットサービスができる新しい技術が実用化されている。「古いマンションでも3分の2以上は問題なく導入できている」(同氏)と自信を見せる。したがって「管理組合などで、法律で定められた、住民の3分の2以上の同意が得られればCATVを導入することができる」(同氏)とマンション住民にとって朗報といえるだろう。
ジュピターテレコムマーケティング部HSDSプロダクトアシスタントマネージャー 瀬沼高康氏 値下げ競争には参加しないというJ-COM。技術的に未成熟なADSLに比べ、通信品質や実効速度では負けない自信があるという