News 2001年4月26日 11:59 PM 更新

スピードネットが狙うのは“隙間”か?

NTTに依らないファーストワンマイルとして注目を集めながら,なかなか本格展開に至らなかったスピードネット。その間に,インターネット環境は大きく変化し,他のインフラに先を行かれてしまったが……?

 スピードネットは4月26日,5月に開始する本格サービスの概要を発表した。月額料金は,ISP料金や機材の貸し出し料を含めて4350円。広域エリア実験の対象地域だった,さいたま市(浦和市,大宮市,与野市が5月1日に合併)を皮切りに,首都圏環状エリアでのインフラ整備を進め,1年後には25の市区でサービスを展開する。加入申込み受付は5月1日に開始予定だ。

 スピードネットのサービスは,ベランダなどに設置したアンテナと電柱の基地局をIEEE 802.11(2.4GHz帯)準拠の無線LANで結ぶというもの。通信速度はベストエフォート型の最大1.5Mbpsとなる。サービスの内容は以下の通り。

アクセス回線 IEEE802.11準拠無線LAN
無線機 FHSS方式
転送速度 最大1.5Mbps(ベストエフォート型)
開始時期 2001年5月1日より受付
IPアドレス グローバル(動的割当)
ルータ使用 可(サポート外)
サーバ設置 不可
月額料金 4350円(通信料,接続料,機材使用料を含む)
初期費用 9900円(標準工事費用)+3000円(手数料)

狙いは隙間の市場?

 以前は,NTTに依らないファーストワンマイルとして注目を集めた同社だが最初の発表から既に2年近い時間が経過し,ネットワークを取り巻く環境は大きく変化してしまった。ADSLやFTTHが相次いでサービスを開始し,一部では既に価格競争の様相を呈してきている。「圧倒的な価格とスピード」(発表当時の孫正義ソフトバンク社長)を謳った同社だったが,価格も回線速度も,今となっては特別なものではない。市場ではADSLで先行するめたりっくグループやイー・アクセスなどに取り残され,スピードでは有線ブロードネットワークスやNTTのFTTHに大きく差をつけられている。

 発表会で挨拶に立ったスピードネットの和田裕社長によると,今回のサービスエリア選定基準は,「ADSLやFTTHのサービスを受けることが難しく,かつ需要が見込める場所」という。例えば,ADSLは基本的に電話局から4キロ以内という技術上の制限があるため,電話局から距離がある場所は不向きだ。また,FTTHやCATVでは煩雑なケーブルの引き込み工事が必要になるが,無線LANはベランダなどに置いたアンテナからケーブルを引き込むだけでよい。窓枠に這わすことのできるフラットケーブルを使えば壁に穴を開ける必要もなくなり,特に集合住宅に適しているという。


スピードネットのサービスエリア拡大予定(出典:スピードネット株式会社)

「余力はある」

 ADSLやFTTHの隙間を狙っているようにも思えるスピードネット。だが,自らの立場をあまり不利だとは捉えていないようだ。今回の発表会では,低価格化と高速化の余地があることを,さかんにアピールしていた。

 例えば,4350円という料金設定について,同社の馬場博之常務は「余力がある」という。インフラ事業は継続して提供するという大前提があるため,事業者が利益を確保できる価格でなければならない。このため,あえて挑戦的な価格設定は行わなかったというわけだ。

 また,スピードに関しても,「現在のアプリケーションやコンテンツは数100Kbpsのものが一般的であり,不足することはない」としながら,「光ファイバーバックボーンをベースに,FTTHやメタルアクセス,より高速な無線LANなど各種のアクセス技術を取り込んでいく」と意欲を見せた。スピードネットは,今夏にも光ファイバーを直接宅内に引き込むFTTHサービスを開始する予定で,ベストエフォート型ながら最大10Mbpsのスピードを実現する(下表を参照)。詳細がはっきりしない時点で発表したのは,“ニッチなサービス”という烙印を押されてしまう前に将来像を示しておきたかったからかもしれない。

 先日の第3者割当増資によって社内的な混乱を収め,資金的にも余裕ができたスピードネット。東京電力が敷設した総延長5万3000キロにおよぶ光ファイバー網をバックボーンとする同社は,他社と競合する上で有利な条件をいくつも持っている。これを活かし,メジャープレーヤーとなれるかどうかは,今後の舵取り次第だ。

アクセス回線 光ファイバー
転送速度 最大10Mbps(ベストエフォート型)
開始時期 2001年夏を予定
月額料金 未定
初期費用 未定


光ファイバーをループ状にすることで,たとえどこかが断線しても逆方向のネットワークは維持できる

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[芹澤隆徳, ITmedia]

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