News 2002年10月24日 05:52 AM 更新

コンピュータと通信の融合――Intel CTO、Gelsinger氏基調講演

「Intel Developer Forum Fall 2002 Japan」でIntel副社長兼CTOのPatrick Gelsinger氏が基調講演を行い、通信とコンピューティングの融合や、半導体ベースのワイヤレス技術について語った

 東京・赤坂で開幕した「Intel Developer Forum Fall 2002 Japan」で基調講演を務めたIntel副社長兼CTOのPatrick Gelsinger氏は、今年9月初旬に米国サンノゼ市で行われたIDF Fall 2002でのプレゼンテーションをなぞりながら、Paul Otellini氏(社長兼COO)が語った通信とコンピューティングの融合や、自身の基調講演でプレゼンテーションした半導体ベースのワイヤレス技術について語った。

 そのストーリーの大筋は米国での基調講演と同じだが、いくつか日本向けのカスタマイズも行われている。例えば、米国の講演ではSamsung製のBanias搭載薄型2スピンドルノートPCを使っていたが、日本の講演では、その代わりにBaniasを搭載したDynabook SS/SシリーズおよびIBMのThinkPad X30にしていたのがそうだ。同氏はこれらのマシンを用いて、高品質のビデオカンファレンスやワイヤレスで録画したビデオを再生するなど、一連のBaniasプラットフォームデモンストレーションを行った(米IDF Fall2002の特集はこちら)。


コンピューティングと通信の融合について話したGelsinger氏(左)。薄型の東芝製Banias搭載試作機にはデュアルバンド無線LANとBluetoothが統合されている

 また米国でのスターバックスの代わりに、日本国内でもっとも多くのホットスポットを展開する「モスバーガー」を紹介。登場したモスフードサービスの永井正彦氏によれば、同社はNTTコミュニケーションの行ったホットスポットの実証実験に参加したが、当初1000人程度の予定だった実験参加人数は、最終的に8000人にまで増えたとか。

 ホットスポット利用者が昼間や夜間のピークに来店するのではなく、その合間に多いこと。利用者の年齢層や性別が、若い女性をメインターゲットにしたモスバーガーとは正反対に98%が男性で、かつ年齢層も若年から壮年まで幅広いといったデータを収集できたという。

 永井氏は「こうしたデータを照らし合わせると、店内でホットスポットサービスを展開することで顧客回転率を上げ、これまでとは異なる顧客層にアピールできることがわかる。モスバーガーにとってホットスポットサービスへの対応は大きなビジネスチャンスであり、ビジネスを活性化させるために不可欠なツールと判断した。本サービス開始後、積極的にホットスポットサービス対応店舗を増やし、今後も大阪や横浜など、これまでホットスポットサービスを提供していなかった地域でもサービスを展開していきたい」と話す。現在、東京23区内だけでも150店舗がホットスポット対応、もしくは対応を予定している。


モスフードサービスの永井氏によると、ホットスポット導入によるビジネス効果は著しいものだったという。今後は全国でホットスポットの導入を進めていく

 こうした例を挙げるまでもなく、ホットスポットの増加ペースはIT不況という言葉を忘れさせるほどの勢いがある。Gelsinger氏が示した調査会社BWCSのデータによると、2001年はワールドワイドで7000カ所だったホットスポットが2003年中には1万7000カ所にまで増加し、2006年までには14万4000カ所に達する見込みという。


世界のホットスポット普及予測(ソースはBWCS)

 もはや802.11ベースの無線LAN技術の広がりは誰も否定できないほどの速度で進んでいる。インテルはモバイルPCの利用価値を高めることを目的として、無線LANアクセス環境の強化の動きを加速するためワールドワイドで1億5000万ドル(約180億円)を投資することを発表した。

 また通信とコンピューティングの融合に関し、今後シリコンゲルマニウムを用いたデジタル/アナログ混載技術により、チップレベルの統合化が進む話もサンノゼと同様に展開。将来のユビキタスなワイヤレスアクセス環境へと向かう話の流れの中で、NTTドコモ研究開発本部長の木下耕太常務を招き入れた。木下氏は「高速化のメリットをユーザーが享受するためには、帯域が広くなると同時にコストもけた違いに安くならなければならない」と話した。半導体技術でロジック回路とアナログ回路が融合するようになれば、圧倒的なコストダウンも夢ではない。

 木下氏によると、NTTドコモでは4G技術の開発に関して各社と協議、いかにネットワークコストを下げるかをテーマに技術開発を続けているという。4G携帯電話はIPベースの技術になるため、交換機をルータやサーバに置き換えることができる。また、基地局側の仕様も、現在は世界中の携帯電話会社がバラバラのカスタム仕様で量産効果が見込めないため、業界全体で基地局に使われるコンポーネントの標準化を行っている(モバイルの記事)。

 こうした努力でけた違いの低価格化を実現できるとしているが、反面で「ルータやサーバに設備を切り替えても、プロプライエタリの交換機と基地局で実現していたのと同等の信頼性を確保する」と意気込む。速度的には現在の3G携帯電話の延長線上で実効1Mbps前後を目指すが、その先の4G携帯電話ネットワークでは10Mbps以上の速度に達する見込みだ。

 このほか、Pentium 4/3.06GHzに搭載予定のハイパースレッディングテクノロジや、システムプラットフォームレベル暗号化に対応するLaGrande技術を紹介。こうした様々な要素を、携帯情報端末からデジタルホームネットワーク、エンタープライズ通信インフラで展開し、ムーアの法則が生き続ける半導体技術革新をエンジンとして、すべてのプラットフォームを前進させていくと話した。


富士通と東芝のTabletPCも紹介。写真はGelsinger氏にTabletPCを見せるマイクロソフトの御代茂樹氏。ただしデモンストレーションではPCが動作しなくなるトラブルも……

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[本田雅一, ITmedia]

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