News | 2002年12月11日 11:39 AM 更新 |
ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)が1月から導入を始めるネットワーク認証機能をサポートした「レーベルゲートCD」(11月20日の記事参照)。レーベルゲートCDでは、どのような技術を使用して認証機能を提供するのだろうか。
まずレーベルゲートCDの構成を簡単に説明すると、ファーストセッションにコピーコントロールを施したオーディオトラック(CD-DA)、セカンドセッションにPC用のデータを記録したマルチセッションCDというもの。ファーストセッションにコピーコントロール技術が採用されていることからも分かるように、これはコピーコントロールCD(CCCD)の一種だ。
採用されたコピーコントロール技術は、Midbar Tech(Macrovisionが買収)が開発した「CDS(Cactus Data Shield )」。そのバージョンは、CDS200以上だがCDS300でもない。これは、同CDが採用しているネットワーク認証技術が、CDS300で予定されていたものとは異なり、ソニーが開発した「OpenMG X」ベースのDRM(Digital Right Management)技術を組み合わせたものだからと想像できる。
Postscribed IDとネットワーク認証
レーベルゲートCDのネットワーク認証は、ソニーが開発した「Postscribed ID(以下、PID)」を使用して実現されている。PIDは、プレスしたCDに後からディスク一枚ごとに異なる「個別情報(IDデータ)」を記録する技術だ。
物理フォーマットには、「CD-ROM XA/Mode2 Form2(ユーザーデータエリアは2324バイト)」を採用、最大32バイトの情報を記録することができる。
このPIDには、ベーシック、スタンダード、カスタムの3タイプのフォーマットがある。このうちベーシックは、自動生成されるコードで、タイトル内でユニークなナンバーを実現する。タイトルごとに6バイトのデータが記録でき、シリアルナンバー用に4バイトのデータの領域が使用される。約43億個の番号が使用できるとされている。
スタンダードは、タイトルナンバー、ジェネレーションフラグ、プルーフフラグ、シリアルナンバーの4種類を記録できる。これらは、完全管理されたコードで、すべてのCD-ROMに対してユニークなナンバーを提供する。タイトルナンバーは、タイトル識別のためのユニークナンバー。4バイトのデータが記録でき、やはり約43億個のタイトル番号を使用できる。また、ジェネレーションフラグは、1バイトの領域が割りあてられており、プルーフフラグも同様。それぞれ、リ・ジェネレート識別フラグ、プルーフディスク識別フラグと呼ばれる識別用のフラグとして使用される。最後のシリアルナンバーは、ベーシックで使用されているものと同じものだ、
カスタムは、発注者が自由に定義したカスタムデータを記録するというもの。16バイトと32バイトの2種類がある。
また、PIDは、PC用のデータが記録された領域(エリア)に対してのみ、後工程で追記される。もちろん、PIDの情報は、通常のPC用ソフト(エクスプローラなど)では読み出すことができない。PIDの読み出しには、専用ソフトが必要とされている。
ただし、PIDは、読み出しに専用のソフトが必要なだけで、通常のCD-ROMドライブで読み出し可能な場所(アドレス)に記録されている。このため、この情報は理論上、市販されているクローンソフトでコピーできてしまうということになる。このため、ソニーでは、コピープロテクト技術との併用を検討中としている。
PIDを読み出しネットワークで認証
レーベルゲートCDのネットワーク認証の仕組みは、それほど複雑なものではない。基本的には、ディスク1枚ごとに異なるPIDを読み出し、それを使ってネットワークで認証を行い、暗号化されたデータを復元するための「鍵」を入手するというものだ。
ディスクには、PIDを読み出すための専用ソフトも一緒に記録されており、PCにCDが挿入されると、PIDが読み出され、認証サーバに接続が行われる。そして、そのPIDが初めてHDDに複製するために使用されるものか2回目以降なのかのチェックが自動的に実行される。つまり、PIDは、ディスク1枚ごとに異なるものが使用されているので、後は、それを利用して、複製の管理を行えばよいというわけである。
例えば、1つのユーザーIDを使用してインターネットのプロバイダに2重、3重でログインするようなものだ。初めの接続は、無料だが、次は課金を行ってもよいだろうし、2度目、3度目以降に課金を行ってもよい。そのあたりは、コンテンツを提供する側が、自由に設定できる。
また、PIDは、レーベルゲートCDで提供されている暗号鍵の入手以外の使い方も可能だ。例えば、すでに実用が始まっているが、CDを購入したユーザーが専用のサイトに接続し、特別なコンテンツの提供を受けるといった応用例がある。この機能を利用すれば、CDを購入したユーザーのみが、ライブのチケットの先行予約を受けることができるといった使い方が可能だ。
これはコピーユーザーと正規ユーザーの差別化を図る方法としては有効だろう。今後は、このPIDを使用し、特別な機能を提供するCDが案外増加していくかもしれない。
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[北川達也, ITmedia]
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