News 2003年1月23日 08:25 PM 更新

レーベルゲートCDに採用された新しい音質改善技術

レーベルゲートCDには、コピーコントロール機能を導入すると同時にPDLSという新たな音質改善技術も導入された。これがどういうものか紹介しよう

 レーベルゲートCDで導入された音質改善技術「PDLS(Pure Digital Link System)」は、大きく3つの技術から成り立っている。


レーベルゲートCDで採用されいている音質向上技術「PDLSカッティング」の構成図

 まず、1つ目が「アルト・レーザーカッティングII(以下、ALC)」である。この技術は、回転系の影響を遮断して、外乱ノイズを徹底的に取り除き、高精度に信号を“整えて”レーザーカッティングを行うというものだ。最初のステップでは、マスタテープから再生を行った信号を巨大な「固体メモリ」にいったんすべて蓄積。次のステップでは、マスタテープの再生機を回線ごと切り離し、固体メモリーに蓄積された信号を元にEFM変調を行ってカッティング処理を行う。

 ALCでは、これによって、回転系の影響を排除し、同時に回線を接続しているだけで回り込んでくる符号外成分も遮断。また、固体メモリには、PCで一般的に使用されているDRAMではなく、スタティックメモリ(SRAM)を採用し、同社によると、これによって、デジタル回路から発生するノイズの低減を可能としたという。

 また、固体メモリからデータを読み出してEFM変調を行っているため、テープの再生を行いながらEFM変調を行うよりも、音質変化の大きな要因の1つとされる「ジッタ」が減少するということはいうまでもない。

 次が、「ダイレクト・クロック・ディストリビューションシステム(以下、DCD)」だ。この技術は、高精度クロックジェネレータを採用し、周波数変換を行うことなく高精度クロックを直接、機器に供給するというもの。

 CDは、再生だけでなく記録においても、供給されるクロックの質によって大きく音質が変化することがわかっている。同社によると、ルビジウムなどの精度の高いクロックを使用しても、周波数を変換して供給を行うだけで音質が変化するといい、周波数変換を行わないダイレクトクロック供給を実現することでクロック供給時の音質変化要因を減少させたという。

 また、DCDは、前述したALCや後術するピット・シグナル・プロセッシング、カッティング・マシンという原盤作成工程プロセスの要所要所で採用されている。これによって、クロックによるによる音質変化要因を排除し、高音質なCD作成を目指すというわけだ。

 最後が「ピット・シグナル・プロセッシング」という技術。これは、ソニー開発研究所がSACD用に開発した技術で、同社によるとジッタの低減に対し、画期的な効果を発揮するという。

 PSPは、簡単に説明するとCDの製造工程で生じるバラツキやスタンパーからディスク成形を行うときに生じる転写ムラを最小限になるようにコントロールするというものだ。PSPを使用した製造工程では、作成したスタンパでディスクの成形を行い、それを基準CDプレーヤを使用して読み出し、コンピュータ解析が行われる。

 コンピュータ解析では、ピットパターンを解析し、ピットが本来あるべき位置や正確な長さを調べ、そのズレを計測する。そして、計測データを元に、再度スタンパの作成を行い、ディスクの成形、コンピュータ解析という処理をジッタが最小になるまで繰り返し行っている。つまり、何度も検証を行うことで、ディスクのバラツキを減らすだけでなく、常に高精度なディスクを提供するシステムというわけだ。

 実際に筆者も取材時にPDLSを使用しコピーコントロールを施したディスクと従来の工程で作成したディスク、従来工程でコピーコントロールを施したディスクの3種類の試聴してみたが、音質劣化を感じたというより3種類の音の違いに驚かされた。というのは、3種類すべてで音が大きく異なっていたからだ。

 残念ながら、今回の試聴では、オリジナル音源との聞き比べを行ったというわけではない。すでに作成されたものを比較試聴したため、オリジナルからどう変化したかということは分からなかった。あえて個人的な趣味で言わせてもらうと、従来型のディスクの音が一番好みで、次が、PDLSを使用しコピーコントロールを施したディスクといったところだった。

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[北川達也, ITmedia]

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