News | 2003年2月28日 09:56 PM 更新 |
インテルが「エコシステム検証」と呼んでいる無線LANアクセス環境の整備は、「アクセスポイント設置企業」「周辺機器ベンダー」「セキュリティベンダー」「ISP」「SI企業」と協力して行われており、空港、ホテル、飲食店などに無線LANが利用できる環境(機材、回線サービス、セキュリティ管理)を提供する。このプロジェクトで設置されたホットスポットには、インテル公認を示す「Centrinoロゴ」「ISP業者名」「無線LAN利用可能を示す“wireless internet access here”ロゴ」のステッカーが認可される。
現在国内における協力ISPとして、NTTコミュニケーションズ、ソフトバンクBB、成田空港e-airportなどが明らかになっているが、このほかにも多くの団体/企業で作業が進行中とインテルは述べている。
依然として解決しない「Centrinoの演出」
すでにIDF2003で紹介されたベンチマーク結果や、PCベンダーからの情報、試作機をテストした業界関係者の話では、Centrino搭載PC、もしくはPentium-M搭載製品のパフォーマンスは非常に良好のようだ。しかし、これが逆に「Centrinoの不安材料」としてだいぶ前から指摘されているのも、また事実。
すなわち、Centrinoを“どのようにしてプロモートしていくのか”という問題である。パフォーマンスは高いのにクロック数が低いアーキテクチャがユーザーに受け入れられないのは、インテル自身が一番よく分かっていることだ。AMDの「モデルナンバー」を痛烈に批判してきたのもインテルだし、少なくとも日本のユーザー(除く一部のマニアックユーザー)にとって、CPU動作クロック数はPCの価値を判断する重要な指標であるのは、現実の売り上げをみればよく分かる。
この問題について、インテルは未だ明確な方針を打ち立てていない。相変わらず「デスクトップPC用CPUとノートPC用CPUでは求められる目的が違う」(インテル クライアントソリューションマーケティング本部 Centrinoマーケティングマネージャ 菅原直人氏)と説明しているが、こうした理由がユーザーになかなか理解してもらえないのは前述のとおりだ。
さらに懸念されるのが実装される無線LANモジュールの問題。3月の発表当初はIEEE 802.11bのみ対応のモジュールが実装される。しかし、無線LAN市場は(ドラフト中にもかかわらず)IEEE 802.11gへのシフトが本格的に始まろうとしている。少なくとも今年の夏に規格はFIXし、対応製品が今年後半に登場する見通しだ。問題とされていた「IEEE802.11b混在環境における転送レートの低下」もドラフトのバージョンが上がるにともない、1−2Mbps程度に改善されている。今年の後半からIEEE 802.11gが無線LAN市場で主流になる可能性はかなり高い。
無線LAN市場に対するインテルの見通しは、「米国の動向を見ていると企業ベースではIEEE 802.11aがこれからの主流。リプレースも進んでいる。ただし個人ユースではIEEE 802.11gが主流になるでしょう」(菅原氏)と、やはりIEEE 802.11bがほかの規格に取って代わられると見ているようだ。
であるなら、今の時期にIEEE 802.11bをセットにしたCentrinoブランドを推進しなければならない理由はどこにあるのだろうか。 無線LANモジュールはminiPCIで提供されるので「換装可能」と思われがちだが、無線LAN製品はアンテナと一体化したモジュールとしてしか認可されない。すなわち、miniPCIの無線LANコントローラチップ単体製品は非常に困難であるわけだ。インテルも、無線LANコントローラモジュール単体のエンドユーザーへの供給は計画していない。
さらに、インテルは今年の後半から現在の0.13μmから0.09μmにプロセスをシュリンクして消費電力をさらに低下させたプロセッサの供給を予定している。そのころにはIEEE 802.11gのコントローラも正式対応版が入手できているはずだ。
インテルは、これらを反映させた「次期Centrino」の出荷を明らかにはしていないが、それでも、「半年待って次期Centrino搭載ノートPCを購入しよう」と考えるユーザーは少なくないのではないだろうか。
確かに最近のユーザーはロードマップからの遅延を実に厳しくチェックしてくる。しかし、より有効で確実な機能が実装される製品が控えているならば、当然そちらを手にしようとするはずだ。換装がままならないノートPCならなおさらのことだ。
果たして、ユーザーの都合はどれだけ考慮されているのだろうか。
[長浜和也, ITmedia]
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