News 2003年3月19日 09:33 PM 更新

「でも、燃やせるだけじゃないんです」 ――ルーポの段ボールPCBOX

いらなくなったら燃やして捨てられるという環境にやさしい段ボールPCBOX。しかし開発元のルーポに話を聞くと、それだけではないようだ

 話題になっているルーポの燃やして捨てられるPCケース「段ボールPCBOX」。同社のWebページでも、またすでに紹介しているメディアなどでも、この「燃やして捨てられる環境に優しいPCケース」点がうたい文句になっているが、話を聞いてみるとメインのコンセプトはどうも違うようだ。


段ボールながら、丁寧な作りで気品さえ感じさせる「段ボールPCBOX」


切り抜いて貼り付けたロゴもさりげなくかっこいい。なんとオーダーメイド(英字のみ)でロゴ作成サービスもあるらしい


PCケースの基本「メンテナンス性」も良好。ネジなしで、すっと引き出せばもう中身に手を入れられる

 「これ、燃やして捨てられるんですよねー」。

 「いやー、自宅で燃やすのはチョット大変かもしれませんよ」。

 「ええっ?」。

 もちろん、段ボールなので資源ごみとして処分できる(もっとも記者の住んでいる横浜では有料になってしまうのだが……)し、切り刻んで指定のごみ袋に入れれば「燃えるゴミの日」に捨てるという裏技もあるらしい。

 だが、「もともとは、『無印良品』がデザインの出発点なんですよ」(ルーポ)。パワーユーザー向けによくある「とりあえずPCパーツを突っ込んでおこう」系PCケースと思いきや、意外にも年末注目された球形PC「Artemis」と同じ“インテリア系路線”だったのだ。

 「段ボールの素材感を何よりも優先させたかった」が基本コンセプトで、とにかく紙だけで作りたかったため、「マザーボードの固定にもネジを使わなかった」徹底ぶり。マザーボードは裏からはめ込むようになっており、さらに熱対策のために上げ底にして空間を確保するなど、細かい技が随所に見られる。デザインが何よりも優先されるあたり、ソニーの「バイオノートZ1」にも負けていない(?)。


マザーボードはネジでなく、四隅の切れ込みと真ん中にある「ツメ」で抑えるようになっている


このように基板台座の裏側からマザーボードをはめ込んで、「上げ底」を内側に折り込んで基板を押し付けるようにして固定する


基板台座を裏から見る。上げ底にして空間を設け、隙間を空けて空気を循環させる。これで熱対策を施しているそうだ


記者が注目したドライブベイ構造。これもドライバなしで、すっと持ち上げればOK

 段ボールPCBOXの形状は、強度維持を考慮して共同開発のBOXMASTERが考案したオリジナルのもの。ただし段ボール紙は規格のものを使っている。ちなみに段ボールは強度に影響する「材質」と厚さに影響する「厚み」、そして箱としての形に影響する「形状」という規格がある。

 今回開発したPCケースは、「厚さ」にB段(約3ミリ)とE段(約1.5ミリ)の2種類、「材質」に上から3番目の強度になる「K5」、形状としては「B式」に則っている。

 現在同社のWebページで紹介されているのは、JetwayのキューブPC「miniQ」のパーツを流用した試作品。ケースサイズもminiQに搭載されているB650DF(socket478、SiS651+SiS962、AGP×1、PCI×1)に合わせて設計されている。


右がモデル、というかパーツ取りに使われてしまったJetwayのminiQ。キューブ型ながらAGPスロットあり、フロントにインタフェースありと、なかなか使えるやつ

 ただし、製品版はVIA TechnologiesのEPIAマザー専用となるのは、同社のWebページにあるとおり。ここで問題になるのはやっぱり熱。段ボールの発火点はかなり高いので、使っていていきなり燃え出すということはないものの、高温状態で使い続ければ、劣化は避けられないらしい。

 そのため、現在、製品版ため大幅な改良作業を行っている真っ最中。実装CPUに関しては「まず低クロック版のEPIAを搭載し、熱テストを行ってからだんだんクロックを上げていく」。

 それでもルーポでは4月中旬から下旬に販売開始予定。実売は1万5000円程度(ただし 電源ユニットなし)。「売れる売れないは別として、笑ってもらえればいい」とは言うものの、同じことを言っていたArtemisが大反響だったりするので、この段ボールPCBOXも、けっこうブレイクするのではと、記者は勝手に思っていたりする。

 ただ、できることなら今のB650DFベースも製品化してほしいところ。FSB533MHz版Pentium 4対応、AGPスロット搭載ときたらパワーユーザーにも受けるはず。

 「Artemisも電源内蔵してくれたし、今度もお願い聞いてもらえますよね?」

 「いやー、はっはっは」



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[長浜和也, ITmedia]

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