News 2003年9月8日 10:50 PM 更新

「周回遅れからトップシェアへ」――ソニーDVDレコーダー「スゴ録」

ソニーは9月8日、「スゴ録」という新ブランド名で、DVDレコーダーの新製品4機種を発表した。今後は従来のコクーンとHDD&DVDレコーダーの機能・ラインを融合させ、一気にトップシェアを狙う戦略も併せて打ち出している。

 9月8日にソニーが発表したDVDレコーダー新製品群。急拡大する同市場で決定的に出遅れた同社だが、HDD&DVDモデルなど欠けていたラインアップを埋めて「船出の準備は整った。狙うはトップシェア」と意気込む。だが“周回遅れ”のスタートで松下電器産業らトップグループをかわすことはできるか(関連記事を参照)。


250Gバイトの大容量HDDを搭載したRDR-HX10。コクーンの自動録画機能「おまかせ・まる録」を搭載した

 新製品はHDD搭載モデル「RDR-HX10」(実売価格15万円前後)、「RDR-HX8」(同10万円前後)と、VHSビデオ一体型「RDR-VD6」(同7万5000円前後)、DVDレコーダー単機能の「RDR-GX5」(同6万円前後)の4機種。業界最大クラスの250GバイトHDDを搭載した上位モデルから、DVD-R/RWドライブの採用で実売6万円前後に抑えた普及機までラインアップした。

 新ブランド名は「スゴ録」。ソニー一流のスタイリッシュなカタカナ名を避け、ファミリー層にも親しみやすい日本語名を採用したのも特徴的だ。

“周回遅れ”のソニー

 “新・三種の神器”の一つと言われるDVDレコーダーは家電分野でも数少ない急成長市場。だが早くから低価格攻勢に出た松下電器産業と追随する東芝、DVD-RWを推進するパイオニアの3社で市場シェア約9割を占める。ソニーのシェアは数%程度と存在感は薄い。

 「DVDレコーダー関連の記事が新聞雑誌に出てもそこに『ソニー』の名はほとんどなく、“周回遅れ”との言葉も聞かれるまでになった」とソニーの岩崎亨・ホームネットワークカンパニー ホームストレージカンパニーDVD事業部長は出遅れを認める。

 もともとソニーはTV番組録画のデジタル化には早くから取り組んできた。2000年にはHDDレコーダー「Clip-On」、2002年4月には同「チャンネルサーバー」を発表。さらに同年11月には「コクーン」を投入した。大容量HDDと学習型の自動録画機能を組み合わせ、ユーザーの好みに合った番組を次々にHDDに録画して楽しむという提案型の製品だった。

 たがこれらは保存先がHDDのみに限られ、容量いっぱいまで録画し切ったらデータを消去する必要がある。これに対し松下らはHDD&DVDレコーダーを相次いで商品化。HDDの利便性と記録型DVDによる保存性を兼備した上、激しいシェア争いで低価格化も一気に加速。VHS置き換え需要を刺激した。

 コクーンは新しいTV生活を提案する“ソニーらしさ”を全面に押し出した製品だが、各社のHDD&DVDレコーダーが実売10万円以下で量販店で並ぶ現状ではその良さをアピールしにくかった。


500GバイトHDD搭載のコクーン最新機種「CSV-EX11」

 ソニーがDVD±R/RWデュアル対応のDVDレコーダー「RDR-GX7」を発表したのは、既に市場がHDD&DVD機にシフトした今年4月になってから。同社は「既存のDVDプレーヤーとの互換性を第一に考え、時間と技術的困難を覚悟の上でデュアル方式の開発を最優先に進めた」(岩崎事業部長)とDVDレコーダーで出遅れた理由を説明する。

 だが同製品の発表の約1週間前には、HDDにDVD-R/RWドライブを組み合わせた「NDR-XR1」をコクーンブランドから発表している。しかもコクーンの最大の売りだった学習式自動録画予約機能が省かれていた。この辺りにソニー社内の足並みの乱れを感じ取った業界関係者は少なくない。

「開発ステージは終了」

 今回の「スゴ録」4機種でDVDレコーダーのラインアップがようやくそろった。HDD&DVD機ではコクーンの自動録画機能を導入し、コクーンの弱点を別製品で補った形だが、「単なるEPG対応、HDD複合機とは異なる」(岩崎事業部長)と胸を張る。

 最初のシェア争いで出遅れたソニー。既に次の段階を見据えて勝負をかけている。というのも「コンテンツも多様化し、次世代レコーダーは単にテープからディスクに置き換えるだけではニーズに応えられない環境になってきた」(岩崎事業部長)との読みがあるからだ。

 ここで強みを持つのが早くからHDDレコーダーで培ってきた自動録画機能など、インテリジェンス性やEPGなどのソフト的な要素技術。コクーンはあくまでソニーが考える次世代レコーダーの進化型としてラインアップの最上位に置き、DVD単機能機やHDD&DVD機はコクーンへと至る進化の道筋として位置付ける。「単純なビデオ置き換えから新しい概念の次世代家電の提案というアプローチが容易になる」(辻野晃一郎・同カンパニープレジデント)。

 ソニーは今回の新製品投入で開発ステージは終了との認識。今後は機能の融合で相互にシナジーを発揮させ、遅れた参戦ながら同市場で「トップシェアを目指す」(岩崎事業部長)。

 ただVHS置き換え需要が市場拡大をけん引している以上、ソニーの提案が一般ユーザーに魅力として受け入れられるかは未知数。製品ラインアップがそろったこれからが力を問われる正念場だ。



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[小林伸也, ITmedia]

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