News 2003年11月19日 09:35 PM 更新

空を飛び、感情を理解し、自然な表情を見せる――進化するロボットたち

2足歩行ぐらいでは驚かなくなるほど、近年のロボットの進化は目ざましい。ビッグサイトで開幕した「2003国際ロボット展」では、超小型ロボットが空を飛んだり、会話を通じて人間の感情を理解したりなど、進化した最新ロボットが集まった

 11月19日からビッグサイトで「2003国際ロボット展」が開催している。アームロボットなど製造業向けの産業用ロボットが展示のメインなのだが、会場の一角に非製造業向けの「サービスロボットゾーン」が設けられており、コンシューマ向けや学術研究用のロボットなどが集結している。ロボットネタ好きなZDNetでは既に取り上げたものも多いので、今回は初登場の注目ロボットだけをピックアップしてみた。

あれ?上昇するだけ?――エプソンのタケコプター

 アトム世代にとっては「ロボットが空を飛ぶ」ことは当たり前だが、ガンダム世代には「何?モビルスーツが空中戦だとぉー?」と敵将ガルマが驚くぐらい、空を飛ぶという行為が自重の大きなロボットにとっていかに難題であることか十分認識していることだろう。

 昨日11月18日に発表されたセイコーエプソンの“空飛ぶ小型ロボット”「μFR」は、空飛ぶロボットの中でももっとも“安易”ともいうべき「ドラえもんのタケコプター方式」を採用。竹とんぼの羽根のような2つのプロペラを二重反転させることで揚力を発生させている。もちろんアタマにつけて飛ぶのではなく、その姿は尾翼のないヘリコプターといった感じだ。

 世界最高のパワーウェイトレシオを持つ独自の超音波モーターで生み出される揚力は13グラムに及び、μFRの自重(8.9グラム)を軽々と浮かび上がらせることができる。


2つのプロペラを二重反転させて空を飛ぶμFR


 会場に行くまでは、手のひらサイズの超小型ロボットが自由にブース周辺を飛び回るサマを想像していたのだが、実際の飛行デモンストレーションでは、棒に固定されたμFRが上昇・下降を繰り返すのみと少々期待はずれのものだった。だが同時に紹介されていたビデオ映像では、自由に飛び回るμFRが映っている。担当者いわく「プロポ操縦での自由飛行はすでに検証が終わっている。今回のデモは、自律飛行に向けた第一段階のもの」とのこと。

 棒による固定で、一見すると自由を奪われたようなμFRは、実は外部PCの制御によって自律飛行していたのだ。

 「PCカメラでμFRを撮影して位置情報などをPCが把握し、Bluetoothを使って制御信号を送信するという方法で、自律動作で上昇と下降を行っている。棒がなくても飛行は可能だが、展示会場では危険なので固定式にした」(同社)


PCカメラでμFRを撮影して位置情報などをPCが把握。Bluetoothで制御信号を送信して自律動作する

 μFRはバッテリーを搭載していないため、電源コードを引きずって飛ぶカタチとなる。だが、揚力(13グラム)に対しての自重(8.9グラム)にほんの少し余裕があるので、バッテリーを内蔵した“完全ワイヤレス化”も技術的には可能という。

 「内蔵バッテリーとしての重量面をクリアした2〜3グラムの電池もあるのだが、飛行のために瞬間的に大きな電力が必要で、それに適した電池がないのが現状。将来的には制御システムまでもロボット本体に搭載して、完全自律で飛行を行うロボットを開発していきたい。カメラなどを搭載すれば、人のいけない場所の探索なども行えるだろう」(同社)

世界初!感情を理解する「ifbot」

 今年4月7日のアトムの誕生日に合わせて発表されたというビジネスデザイン研究所の「ifbot」。ROBODEX2003にも出展していたらしいが、この時期、軒並みあったロボット関連の発表に埋もれてしまったのか、ZDNetではなぜか取り上げていなかった可哀想なロボットだ。


ビジネスデザイン研究所の「ifbot」

 一見、NECのPaPeRoを思わせる容貌だが、このifbotもPaPeRoと同じく“おしゃべり好き”なコミュニケーション型のロボットだ。

 最大の特徴は「世界初の感情を理解するロボット」(同社)という点。話し相手の感情を読み取ったうえで、5歳レベルの会話を行うことができるという。

 「LEDを使った約40種類の喜怒哀楽の表情を織り交ぜ、話し手の性格やクセまでも感じ取った上で数万もの会話をこなす。感情の読み取りには、エイ・ジー・アイが開発したST(感性制御技術)を使っている」(同社)


感情を理解し、喜怒哀楽の表情を交えて会話をこなすifbot

 本体のシステムは、Pentium III/1GHz搭載のPCをLinuxで動かしている。CCDカメラで最大10人までの顔を識別し、車輪型の足と超音波センサーを駆使して、部屋の中を自由に歩き回ることが可能だ。試作機は1台あたり180万円のコストがかかっているが、来年4月に発売が予定されている量産タイプは50万円前後の価格で登場するという。

 「来年4月の第一弾は日本語対応のスタンドアロン型だが、英語版や簡単な英訳機能を持ったタイプ、ネットワーク対応型などバリエーションを広げていく予定」(同社)

人間らしい自然な表情――アクトロイド

 まずは下の写真を見てもらいたい。


 一見すると、キレイなお姉さんたちのツーショット写真だが、左のちょっと緊張気味の方は実はロボットなのだ(右の方は本物)。

 アミューズメントパークなどのロボットを手がけるココロが開発した「アクトロイド(仮称)」は、限りなく人間に近いディテールや動きを目指したロボットだ。皮膚には柔らかなシリコンを使い、独自開発のエアサーボシステムで顔の自然な表情を作り出している。目や口元など、顔をメインに駆動部分は31自由度に及び、顔と手の計11カ所に皮膚センサーを搭載。椅子の部分と台座に制御ユニットやコンプレッサーなどを振り分けているため、身長158センチのボディはとてもロボットとは思えないほどスレンダーだ。


ロボットとはいえ、自然なしぐさでじっと見つめられると悪い気はしない? 顔は人それぞれ好みが分かれるので、世界中の人の顔画像データベースの“もっとも平均的な顔”を参考にして、万人受けする顔を独自に作り上げたという。

 「空気の出入りを利用して人間らしい柔らかなしぐさまで表現できる。また、従来のアクチュエータと違い、エアサーボは動作音も非常に静か。音声に合わせた表情と両手を使った自然な動きで、イベントMCから企業の受付までこなす」(同社)

 受付なら座ったままでもいいが、イベントの司会となるとそうもいかない。そこで同社は来年春をメドに「立ちポーズ」のアクトロイドも開発する予定。イベント専門の“カメラ小僧”は、激写する前にまずロボットかどうかを確かめなくてはいけなくなりそうだ。


医療用に使われるシリコンと同じ材質を使用しているので、肌の見た目は本物と見分けがつかない。触った感触も非常に柔らかく、これで“人肌”の温度が加われば、握手を求める人が後を絶たないかも。テニスウェアにストッキング&ルーズソックスは“ルール違反”(意味不明)との来場者の声も

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[西坂真人, ITmedia]

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