家庭向け進出への伏線――キヤノン、LCOSプロジェクター
キヤノンは10月13日、液晶プロジェクターの新製品“キヤノンパワープロジェクター”「SX50」を発表した。11月下旬から発売する。価格は62万7900円。
「原理から新しい」をコンセプトにしたSX50は、表示デバイスに「LCOS(Liquid Crystal on Silicon)」を採用。同社が独自に開発した光学エンジン「AISYS」と組み合わせることで、リアルSXGA+(1400×0150ピクセル)の高解像度表示と2500ルーメン/1000:1という高輝度・高コントラスト比を可能にした。
LCOSデバイスは、日本ビクターの「D-ILA(Direct-Drive Image Light Amplifier)」の0.7インチ(アスペクト比4:3)タイプを使っている。
リアルSXGA+対応機ながら、サイズは284(幅)×286(奥行き)×96(高さ)ミリで重さは3.9キログラムと「クラス世界最軽量」(同社)の軽量コンパクトボディに仕上がっている。価格も従来のリアルSXGA+対応機が100万円以上したのに対して、60万円前後という低価格な点も魅力だ。
LCOSデバイスは、従来プロジェクターが多く採用している透過型液晶パネルの欠点であった投写画面の黒い格子縞が目立たず、滑らかな画像表現が可能なのが特徴。半導体プロセスで製造するため高密度化しやすく、小さなパネルサイズで高解像度が可能な点も魅力。また画素間の隙間もほとんどないため、細かい文字や線などがクリアに表現でき、表計算ソフトやCADソフトなど情報量の多い映像表示に強いというのもメリットだ。
いいこと尽くめの表示デバイスなのだが、それではなぜ、これまであまりプロジェクターに採用されなかったのだろうか。
LCOSの光学系で必須となる偏向ビームスプリッターは、傾いた光に対して光漏れが発生してしまう。輝度をかせぐために照明系を明るくすると、光の入射角が大きくなって光が漏れてしまい、それがコントラストを悪くするというのが従来のLCOSプロジェクターの課題だった。
「照明系で明るさをかせげない従来のLCOSプロジェクターは、ランプ容量を上げることで輝度を高めていた。だが、ランプの電力が増えると大容量電源や冷却システムなどで本体が大きくなってしまう。そのため、明るさとコントラストのバランスがいい透過型液晶パネルに対抗できなかった」(同社)
同社では、このようなLCOSの弱点を克服するために光学系から全面的な見直しを実施した。
「偏向ビームスプリッターで傾いた光に対してコントラストが悪くなるというのは、偏向を分離する方向のみの現象で、それと直交する方向なら光漏れは発生しない。この原理を応用して新開発の光学エンジン・AISYSでは、縦成分の照明光を収束光として使って輝度をかせぎ、横成分の照明光を平行光として使ってコントラストをかせぐというように、縦・横方向の光をそれぞれ独立してコントロールすることで高輝度と高コントラストを両立させた」(同社)
データプロジェクターに種別されるSX50の主な用途は、プレゼンテーションなどビジネス向けだが、高精細さを生かしてCAD・建築系や医療分野などでの活用も期待される。
だが一般ユーザーとしては、ホームシアター向け製品の展開に注目したいところだ。
「LCOSと新開発の光学エンジンを活用すれば、ホームシアター向けに相当良い製品ができるとは思うが、家庭向け市場の展開まだ未定。だが、ビジネス向けのSX50は光学エンジンを高輝度方向にふっているが、ランプ光量を抑えてコントラスト比をかせぐ仕様にすれば、2000:1まで出せる実力がある。映像エンジンなど“画作り”の部分でノウハウが必要だが、家庭用も将来的には前向きに検討したい」(同社)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
GMO、ランサム被害にあった顧客に新しいPC提供へ 犯行グループは1人の顧客情報公開か
-
2
NECのルータ「Aterm」、PHP脆弱性の影響なし 設定画面URLの「.php」は無関係
-
3
GMO、不正アクセス実行犯の手がかりに懸賞金 1億5000万円規模
-
4
「楽天トラベル」に不正アクセス 顧客情報最大約260万件など流出か 予約者約3.6万件のクレカ情報も
-
5
GMO、攻撃者の公開情報に「アクセスは絶対に控えて」 悪質な拡散者には法的措置を準備
-
6
Google、プライバシーポリシーに「Gmail」「Googleフォト」のデータを広告に使う例外を追加 回避方法は
-
7
メアドを検索→AIで“その人専用フィッシングメール”を生成する手法、クリック率が約2.7倍に 7000人以上で実験
-
8
「自分の個人情報が漏えいした……どうすれば?」 IPAが対処法公開
-
9
タイムズカー、お見舞金3000円の算定基準は? パーク24に聞いた
-
10
GMO不正アクセス、犯人側は「27日に顧客のPC攻撃」予告 GMOが端末回収、ホワイトハッカーが解析中
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR