“感動と創造性のディスプレイ”を実現する「極小の技術」
MEMSと呼ばれる“極小のテクノロジー”が、次世代の高性能ディスプレイ作りで主役になりそうだ。
このほど開催された国際マイクロマシン・ナノテクシンポジウムの講演で、ソニー マイクロシステムズネットワークカンパニー レコーディングメディアカンパニー開発部門長の竹井裕氏が、MEMSを使った高性能ディスプレイの可能性について語った。
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems:微小電気機械システム)とは、半導体プロセス技術を用いて基板上に電子と機械機構を融合させた微細な立体構造からなるシステム。一般的な半導体デバイスとの違いは構造が立体的であって可動部を有するという点だ。
「ディスプレイもMEMSも、ともに近年急成長を遂げている分野だが、特に米国では、MEMSを使ったディスプレイがここ1、2年たいへんな成長をみせている。もともとMEMSは応用範囲が広いが、ほとんどが脇役に甘んじていた例が多かった。だがディスプレイにMEMSが使われる場合は、MEMSモジュール自体が高い値段で取引されるなど従来の脇役から一転して主役に躍り出る」(竹井氏)
MEMSを活用したディスプレイでの代表選手は、DLPで使われるDMD(Digital Micromirror Device)素子だろう。DMDはその名の通り、マイクロメートルサイズの超極小な鏡(マイクロミラー)を反射板としてCMOS半導体基板上に敷き詰めたもので、1つ1つのミラーが1画素となって画像を構成する。
DLPはこのDMDにランプで光を当てて、マイクロミラーに反射した光がレンズを通して画像を投影するという仕組みになる。マイクロミラーは、1秒間に数千回という高速スピードでON/OFFを切り替えて光の反射角度を変えることが可能。超極小ミラーの反射で1ピクセル単位で光のON/OFFを切り替えることで高いコントラスト比が可能となり、動作スピードもマイクロ秒単位と非常に高速なのが特徴だ。
「液晶テレビの応答速度はミリ秒単位だが、DMDの場合はそれより3ケタ速いマイクロ秒単位。画素の数だけミラーを作りこんでいくので、その生産技術確立は苦労も多かったろうが、MEMSがそれを可能にした。もともとディスプレイとMEMSは相性がいい。MEMSを活用することで従来になかった高性能ディスプレイができる」(竹井氏)
そのMEMSディスプレイで今後期待されるのが、ソニーが米国Silicon Light Machinesからライセンスを受けて開発しているGLV(Grating Light Valve)だ。
GLVは、リボン状の光回折素子をシリコン基板上に一列に並べて形成。1画素を6本のリボンで構成しており、静電力で引き込むことで微細に動かすことができ、光回折量を変化させることで画像の明暗を作り出すという。そしてGLVのキーデバイスであるリボン状の光回折素子を製造するのにMEMS技術が使われているのだ。
「リボンの移動マスが少ないので、DMDよりもさらに高速で動作でき、応答速度はナノ秒単位になる」(竹井氏)
このように、MEMSで作られるデバイスは基板上に電子と機械機構を融合させていることで非常に高速動作が可能となる。また、微細なミラーやリボン状素子などが1つ1つ独立して動き、1ピクセル単位での光のON/OFFの切り替えができることで非常に高いコントラスト比が可能となる。高速応答性と高いコントラスト比は、高品位な映像再現につながる。
「動作原理的に高速・高コントラストが得意なMEMSディスプレイは、今後必要な“究極のディスプレイ”の実現に役に立つ。ディスプレイ第1世代のCRTは“表示力”を競ってきた。そして液晶/プラズマなど薄型大画面が全盛の現在(第2世代)は“表現力”を競っている。次に来る第3世代では、人に感動を与え創造性をかきたてるようなディスプレイが登場する」(竹井氏)
「例えば、1秒間に24コマではなく、1秒間に1000コマ見せられたら人間はどんな風に感じるかなど、ディスプレイでスーパーリアリティを追求していく時にはMEMS技術が欠かせない。オーディオの世界では本物のオーケストラとの“すり替えテスト”で成功例はあるが、ディスプレイではまだない。しかしMEMSディスプレイなら、それが映像なのか本当の人なのか見分けがつかないようなスーパーリアリティが可能になる」(竹井氏)
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