三菱、世界最長96キロの量子暗号通信に成功
三菱電機は11月29日、屋外としては世界最長となる96キロの量子暗号通信実験に成功したと発表した。従来の世界記録である67キロを大幅に上回り、量子暗号通信の実用化に向けて大きく前進したとしている。
情報通信研究機構(NICT)の委託で実施した。同社によると、国内で量子暗号のフィールド実験が行われたのは初。
実験室内での量子暗号通信実験では、これまでに数十-数百キロ前後の光ファイバーを使った例が報告されている。だが屋外では、偏波揺らぎや温度によるファイバー長変化など実験室にはない条件が加わるため長距離通信が難しく、スイスのジュネーブ大学がレマン湖下で行った68キロが最長記録だった。
三菱電機は、遠方2地点で動作でき、駆動周波数を調整可能なハードなど、量子暗号通信の安定性や効率性を高める技術を開発。堂島(大阪市北区)-大安寺(奈良県奈良市)-けいはんな(京都府相楽郡)を結ぶNICTの光ファイバー実験施設「JGN II」を利用して96キロの量子暗号通信に成功した。
実験の送信ビットレートは8.2bps、平均光子数は0.1で、比較的短いデータの送信に適しているという。今回の実験では、暗号鍵の配布に量子暗号通信を利用。その鍵を使い、既存の暗号方式で暗号化した文書などをより高速な通信経路で送信するという二段階の通信を行った。
実用性を高めるため、光学装置は30(幅)×5(高さ)×21(奥行き)センチ、重さ約1キロと小型化した。検出部の冷却部も24(幅)×28(高さ)×24(奥行き)センチ、重さ約20キロにまでコンパクト化し、持ち運び可能なサイズにした。
官公庁のセキュリティーシステムや銀行間取引など、高度なセキュリティが求められるシステムでの実用化を目指して改良を進めるとしている。
量子暗号通信は、データを運ぶ媒体として光子の量子状態を利用する。第三者が盗み見ると光子の状態が変化してしまい、内容が無意味なものとなる上、盗聴があったことを確実に知ることができる。将来、コンピューティング能力が格段に進歩しても、暗号方式の解読による盗聴や改ざんと無縁な「究極の暗号」として実用化が期待されている。
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