AppleとIntel、提携はビデオiPodで?
その市場シェアをはるかに超える話題性を持つApple Computerは、世界中でハイテクマニア、グラフィックスアーティスト、反体制的なコンピュータユーザーに愛されている。Wall Street Journalの5月23日付の記事によると、世界最大の半導体メーカーもAppleにぞっこんかもしれないという。
AppleとIntelはパーソナルコンピュータでの協力に関して過去に何度か話し合いを持ったことがある。しかし23日の報道は、日付は不明だが、AppleがMacにIntelプロセッサを採用することに合意すると伝えている(5月23日の記事参照)。こうした噂を前にも耳にしたことがあるベテラン業界アナリストは、この展開をかなり懐疑的に見ている。Intelの広報担当者はこの報道に関するコメントを控えている。Apple広報にもコメントを求めて電話したが、回答は得られていない。
両社の間にある最大の障害は、今の製品で使われている2つの異なるプロセッサアーキテクチャに互換性がないことだ。Macは、現行サプライヤーのIBMと元サプライヤーのMotorolaが開発したPowerPC命令セットを基盤としている。Intelプロセッサはx86命令セットを採用しており、これは1980年代からWindows PCに動作命令を供給してきた。
一方のアーキテクチャ向けに開発されたソフトは、エミュレータなしではもう一方のアーキテクチャでは動作しない。エミュレータを使えば、通常はパフォーマンスが大きく落ちる。従って、Appleがx86プロセッサに乗り換えるのなら、Mac向けソフトを提供するすべてのパートナーに、Mac OS用アプリケーションをx86アーキテクチャ向けに移植してもらわなくてはならなくなる。
Appleが1990年代初めにMotorolaの68000プロセッサファミリーからPowerPCアーキテクチャベースのプロセッサに移行したとき、市場シェアの約半分を失ったとInsight 64の主席アナリスト、ネイサン・ブルックウッド氏は指摘する。
「ソフトの移行は常に手間がかかるものだ。(Appleは)独立系ソフトベンダー(ISV)にすべてのソフトをコンパイルし直させることができるだろうが、それをやらされるのはISVにとって楽しいことではない」(同氏)
しかし、Appleは既にx86プロセッサに向けた暫定的な措置をとっている。Mac OS Xの基盤となるUNIXベースのコードの集合「Darwin」のx86版はAppleのサイトからダウンロードできる。しかし、これは大量のx86プロセッサのサポートが必要になるフル機能のMac OSではない。
「やろうと思えば(x86のサポートは)できるだろう」と話すのは、Mercury Researchの主席アナリスト、ディーン・マカロン氏。「ソフトの移植は10年前よりもずっと簡単になっている。しかし、それをやりたいと思うだろうか?」
Appleがx86プロセッサに移行する主な理由は、コストの削減、あるいは近い将来IBMが提供しそうにない技術を利用することにあるとマカロン氏は指摘する。またWall Street Journalの報道が正しいとすると、Appleが近いうちにDellと直接競合する可能性は低いため、同社がIBMのロードマップを心配している可能性の方が高いという。
IBMはAppleの唯一のPowerPCサプライヤーとなって以来、歩留まりの問題に苦労してきた。また、現行のPowerPC 970FX(AppleのG5プロセッサ)以降のロードマップをほとんど明らかにしていない。同社は最近、開発リソースの大半を「プレイステーション3」に搭載されるCellプロセッサや、Xbox 360のPowerPCベースプロセッサなどのゲーム機向けプロセッサに投じている。
IBMの広報担当にロードマップに関するコメントを求めたが、返答は得られなかった。
一方、IntelはPC市場で最も急速に成長しているノートPC分野において、プロセッサ設計で大きな前進を遂げた。AppleのPowerBookは旧世代のG4プロセッサを搭載している。これに対し、強力だが発熱の大きいG5を搭載したノートPCを求めるMacユーザーは不満を持っている。
IntelのPentium Mプロセッサは、短期間で同社の最も魅力的な資産になりつつある。IBMからそれに匹敵する競合製品は当面出てきそうにないため、AppleはPentium M搭載ポータブルコンピュータの可能性についてIntelと話し合っているのかもしれないとマカロン氏は指摘する。
Intelはまた、64ビット技術や複数のソフトウェアスレッドのサポートなど、Mac OSに適用しやすい機能を新しいデスクトッププロセッサに組み込んでいるとIDCのクライアントコンピューティング担当副社長ロジャー・ケイ氏。
しかしソフトの問題は大きく、またIntelプロセッサを採用すれば、Appleはコモディティハード市場――スティーブ・ジョブズCEOが以前から軽蔑していた――に接することになるかもしれないとケイ氏は指摘する。Appleは現在、Mac OS XとPowerPCプロセッサを組み合わせた独自のシステムを他社が開発することを防げるが、Intelプロセッサに乗り換えたら、理論的にはMac OSは世界中の何百万台ものコンピュータで実行できることになる。これはMac OSの市場を広げる可能性があるが、広範な海賊行為やクローン作成につながる恐れもあると同氏。
アナリストらによると、もっと可能性の高いシナリオは、IntelのXScaleプロセッサを搭載したビデオ再生対応iPodで両社が協力するというものだ。iPodをXScaleに移行するためのソフト開発は、PowerPCからx86に移行する場合ほど難しくないという。
IntelとAppleは過去にも協力したことがあり、AppleはIntelのネットワーキングチップを幾つか採用している。両社がフラッシュメモリや無線LANチップなど、PentiumやXScale以外の製品で提携する可能性もあるとアナリストらは語っている。
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