AppleがほしかったのはPentium M、IBMはXboxを選んだ
IntelとApple Computerがプロセッサ分野でパートナーを組むことは、5年前には考えられなかっただろう。当時、Appleのスティーブ・ジョブズCEOは、「万が一」、IBMおよびFreescale Semiconductorとの関係が行き詰まった場合に、Intelチップに切り替える計画を初めて練り始めた。IBMとFreescaleがAppleとは異なる方向に進んだことで、この予備の計画が現実のものになった。
ジョブズ氏は6月6日、サンフランシスコで開催のAppleのWorldwide Developer Conference(WWDC)基調講演で、何日も前から流れていた憶測に終止符を打ち、Appleが2006年からMacintoshコンピュータにIntelプロセッサを搭載することを正式発表した。これにより、ソフト開発者はアプリケーションをIBMとFreescaleのPowerPCアーキテクチャからIntelのx86アーキテクチャに移行しなければならなくなる。これは一部の開発者にとっては大仕事だ。
2006年に登場するAppleの最初のシステムでは、IntelのPentium Mプロセッサが採用されると両社の計画に詳しい筋は話している。Pentium MはPentium 4と同じx86アーキテクチャを採用しているが、消費電力はPentium 4よりもはるかに少なく、Pentium Mの設計理念はIntelの今後のプロセッサのベースになると見られている。Appleの広報担当者は再三のコメント依頼の電話に応じず、Intelの広報担当者もAppleの製品方針についてコメントを控えた。
ジョブズ氏はPowerPCアーキテクチャからIntelのx86アーキテクチャに移行する主な理由として、Intelが、IBMの将来のチップと比べて消費電力当たりの性能が高いチップを提供できることを挙げた。そうした点で強みを持つプロセッサはPentium Mだ。実際、Intel幹部は今年、Pentium MはハイエンドのPentium 4プロセッサ並みの強力な性能を持ちながら、消費電力が格段に少ないと説明している。
業界アナリストは、Intelが2006年初めに発売を計画しているPentium M製品であるデュアルコアのYonahプロセッサは、その時点で業界屈指の消費電力当たり性能を持つという見方で一致している。
AppleがG5と呼んでいるIBMのPowerPC 970FXチップは、ノートPCや小型のデスクトップPCなど、省電力化が必要なPC設計にまったく適していないとジョブズ氏は語った。またAppleは、IBMが昨年、プロセッサを十分に供給できなかったことに不満を持っていた。これはIBMがニューヨーク州イーストフィッシュキルの新しい製造施設の立ち上げ時に、歩留まりの問題に悩まされたためだ。
だがApple向けのチップは、同施設でのIBMのチップウエハ生産量の2%程度を占めていたにすぎないと、業界筋は話している。またIBMは、PC市場向けチップからゲーム機やハイエンドサーバ向けチップの製造へと舵を切っている。IBMの広報担当者は同社のAppleとの関係についてコメントを控えたが、IBMが発表した声明は、IBMにとってAppleとのビジネスは、おそらく惜しくはないことを示唆している。
「IBMは、PC向けにとどまらずPower Architectureの展開を積極的に推進している。ソニーやMicrosoft、任天堂が発表した次世代ゲームシステムでのわれわれの最近の成功もこのことを示している。IBMは各市場で最高の価値を生み出す機会に力を注いでおり、われわれがPower Architectureとともに進んでいる方向は、この戦略と合致している」と同社は声明で述べている。
Sony Computer Entertainment(SCE)やMicrosoft、任天堂のようなゲーム機メーカーは、今後数年間に何千万台ものゲーム機を販売する見通しだ。IBMとしては、Appleが持つ小さな市場に合わせて技術的に難しいG5プロセッサの省電力化に挑むのではなく、これら3社すべてと結んだ取引に集中する方が得策と考えていると見られる。
AppleにPowerPCチップを供給するもう1社のメーカーであるFreescaleは昨年、G4コアを2つ搭載したデュアルコアのPowerPCチップを投入した。現在、G4プロセッサはAppleのMac mini、Powerbook、iBook、eMacに搭載されている。この新しいG4プロセッサならばIntelのYonahと対抗できたかもしれないし、そうなれば厄介なソフトの移行は少なくとももう1年先になっていただろう、とInsight 64の主席アナリスト、ネイサン・ブルックウッド氏は語る。
しかし、Freescaleは主に組み込み向けと携帯電話向け市場に力を入れており、将来のPCチップ設計にIntel並みの投資を行う準備はないと、Mercury Researchの主席アナリスト、ディーン・マカロン氏は語る。このため、Appleには、PCの標準チップへの歴史的な転換を行う以外にほとんど選択肢はなかったと同氏は指摘している。
今回の動きを指をくわえて見る格好となったチップメーカーがAMDだ。何人かの業界アナリストは、Appleがx86チップに移行することがあるとしたら、弱者の立場という共通点と、AMDのOpteronとAthlon 64プロセッサの競争力を理由に、AMDのほうがパートナーとしてふさわしいと考えるのではないかと見ていた。実際、AppleとAMDは過去のある時点で協業について話し合ったことがあり、Hypertransport Consortiumのメンバーとして協力していると、AMDの広報担当者ドルー・プレーリー氏は語る。
しかし、プレーリー氏はAMDとAppleの最近の話し合いについては、コメントできないと述べた。
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