本田雅一のTV Style
ダウンロード配信、IT業界と映画業界の隔たり(2)
前回のコラムで、ハリウッドの映画スタジオと話をしているとき、「ダウンロード」というとネットワークダウンロードを意味しないことの方が多いと書いた。“えっ? なんで?”と思った方が多いのも無理はない。筆者も最初は取材の中でかなり戸惑った。インタビューをしていても、全く話が合わないことがあったからだ。
話が合わない理由は、1年ほど前から米国では、PCやWindows Media対応プレーヤー、iPodなどに映像を“ダウンロード”するための専用DVDが添付されることが多くなり、これを”ダウンロード”と表現することがあったからだ。
ダウンロードと呼ぶ機能はさまざまな名前で呼ばれており、機能の名称としては一昨年末ぐらいから、「セカンドセッション」といったキーワードが使われていた。セカンドセッションとは、通常、映画を楽しむ場とは別のところで楽しんでもらうことを意味している。実際のパッケージには「Digital Copy」という言葉がパッケージに記載されていることが多いが、発売元によっては異なる表記をしている場合もある。
いずれも本編を収録したDVDビデオやBD-Video規格に沿ったディスクとは別に、DVDが添付される2ディスク構成になっており、PCにコピーした動画ファイルの鍵を開けるIDを印刷した紙が入っている。ユーザーはこのIDを入力してインターネット経由で認証を得ると、携帯プレーヤーやコピーしたPCで視聴可能になる。
なお、コピーできる動画ファイルは携帯プレーヤーやPCに最適化されたサイズの小さなもので、リビングなどの大画面テレビで見るのには適しておらず、圧縮率も高く音声もステレオ。それでも「この前、この映画見たんだけど、面白かったよ」と同僚や友人に見せたり、気に入ったシーンを持ち歩いて見返したりといった用途には充分だ。
余談になるが、ワーナーは当初、Blu-rayの本編ディスクの余った領域にデジタルコピー用データを収めていたが、利用者が少ない(PC用BDドライブが必要になるため)ため、2ディスク構成に切り替えた。
もう1枚付けるなんてもったいないと思うかもしれないが、携帯プレーヤー向けの画質ぐらいならば、付加価値といて提供した方が得策と考えたのだろう。画質の低い動画はインターネットでスグに出回り始める。不法にそうしたコンテンツが出回るぐらいならば、それらよりも画質が良く(しかしBDやDVDよりは画質が明らかに低い)正規のビデオをPCユーザー向けに提供した方が不正コピー市場の抑止にもなる。何より、日本ほど高速なインターネット回線が普及していないこともあって、もう1枚ディスクを付けた方がいいという判断なのだろう。
なお、日本でも同様の機能を持たせたパッケージソフトが登場する見込みだ。日本市場の事情を考慮して、携帯電話向けにmicro SDメモリーカードなどにコピーして携帯電話で再生するといった使い方も想定しているようだが、専用DVDは添付されない。充分に高速なインターネットが普及している日本では、DVDを添付してコストを上げるよりも、インターネットからダウンロードした動画ファイルの鍵を印刷して添付しておくだけの方が効率がいいからだ。
もっとも、個人的にはこの機能、それほど魅力的なのだろうか? と疑問に感じなくもない。もちろん、PCに正規の手段でコピーできれば、出張の移動時などにHDDにコピーして手軽に持ち出せるので便利ではある。ただプラスαの金額を払ってくれるかというと微妙なところだろう。
しかし、1話の時間が短いコンテンツ、例えばテレビドラマやテレビアニメなどならば、積極的に利用したいというユーザーは多いのかもしれない。そうしたユーザーに対してプラスαの価値を提供しようという映画スタジオ同士の競争が生み出した機能が、ハリウッドでいう“ダウンロード”だ。
筆者は“セカンドセッション”という言葉を聞いた時、AACSで規定されているマネージドコピー(コンテンツの一部、あるいは全体を、コンテンツ提供者側のコントロールの元でコピー可能にする機能。例えば追加料金を支払うことで複製を許可するなど)を想像したのだが、まだマネージドコピーの具体的なビジネスモデルを考え始めるほど、ハリウッド映画業界内での“コピー”に対する理解は進んでいないのだと思う。
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