現地フォトリポート
スペースシャトル、最終飛行に飛び立つ
アトランティスはほぼ予定どおり日本時間7月9日午前0時29分、無事にケネディ・スペース・センターから打ち上げられた。これがスペースシャトルの最終打ち上げになる。
前夜、アトランティスを照らす強力なサーチライトは天空までまっすぐに延び、幻想的な光景を作り出していた。スペースシャトル・ファンにはなじみ深い眺めだが、これもとうとう見納めだ。
今回は機体の状況は終始良好だったものの天気が最大の懸念で、打ち上げ時刻に条件が満たされる可能性は30%とされていた。しかし、一日中雨が降り続けていた前日と比べると、雲は比較的薄く、早朝から所々晴れ間がのぞき出した。この季節のフロリダはいつも灼熱地獄のような暑さだが、今日は意外に涼しく、見物客には恵みとなったはずだ。打ち上げを見に集まった観光客は、厳密な統計はないものの約100万人とのこと。アポロやスペースシャトル初期の頃に匹敵する数だ。
打ち上げ約4時間前、クルーが宿舎を出発した。これもいつもと同じ光景だが、報道陣の数が際立って多い。大歓声につつまれて発射台へ向かっていった。
カウントダウンは極めてスムーズに進み、とうとう天気もGOが出た。カウントダウンは幾つかの休止(ホールド)を含めて進行するのだが、9分前に最後のホールドがあり、そこで打ち上げチームの最終点呼(ポール)が行われる。全員がGOになると、報道陣から拍手が湧き起こった。
カウントが再開し、ついに行くかと思われた時、31秒前で時計が停止した。実は31秒前というのは、機上コンピュータにカウントダウン制御を引き継ぐ最終段階で、過去にしばしば厄介な問題が起きて打ち上げ延期になったことがある。最近は滅多にひっかからなくなったので「まさか」というところであり、今回も長期延期になると想像された。しかしマイナー・トラブルであることがすぐに判明し、約2分半でカウントが再開した。
カウント・ゼロ。シャトルは直視できないほどまぶしくオレンジに光輝く炎を放ち、ゆっくりと浮き上がるように、なめらかに離昇を始めた。まさに息を飲むような美しさだ。発射台から約5キロ離れているプレスサイトには、離陸から20秒近くたって、突然衝撃波がやってきた。打ち上げ花火が近くで連続的に炸裂しているような感じで、耳で聞く音というより、地面から腹に響くような振動だ。バリバリという弾けるような音もするが、これは物を激しく燃やす時の音に似ている。2000トンもある機体を持ち上げ超音速へ加速する、生々しいパワーが伝わってきた。
今回は打ち上げ後40秒ほどで雲に入ってしまい、残念ながらその後のシャトルの姿は追えなかったが、人間にこれほどのことが出来るのだ、という深い感動はいつもと変わりなかった。
スペースシャトルはその非常に高い運用コスト(1回の打ち上げ費用は約10億ドルと言われる)ゆえに退役となってしまった。世界的に多くの国で経済状況が芳しくない中、宇宙開発にかかるコストが問題視されるのはもっともだ。しかし、日本の「はやぶさ」でも同じだが、人間の到達点や可能性を目に見える形で広げ、多くの人・子供に夢を与えるプロジェクトはそうあるものではない。スペースシャトル以後が曖昧なまま、シャトルが引退してしまうのは少々残念なことだ。
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