「1年で200億円の赤字」――藤田社長が投資するAbemaTVの“謎”
「AbemaTVは1年で200億円の赤字を出した。しかしあと1年、また同じペースで投資する」――サイバーエージェントの藤田晋社長はこう話す。
藤田社長とC Channelの森川亮社長が4月6日、両社が手掛ける動画サービスについて新経済サミットで話した。昨今、こうした新しい動画配信サービスの動向に注目が集まっているが、藤田社長が手掛けるAbemaTVは1年間で200億円の赤字を出したという。インターネット広告で成功した彼はなぜ、そのような新事業に手を出したのか。
「テキストや画像をクリックさせて自分たちのWebサイトに人を呼ぶ、そんなインターネットの時代はもう終わった。インターネットで映画やハイクオリティーな映像を見る、そんな時代が訪れている。何クリックだからどうだという話ではなく、ブランディングができるようになった」――藤田社長は言う。
AbemaTVは、サイバーエージェントとテレビ朝日が共同出資で設立したAbemaTV社が運営する、ライブストリーミング形式の動画配信サービス。2016年4月にスタートし、テレビ局のように“ハイクオリティー”な映像制作を目指している。
気になるのは、どのようなビジネスモデルかということ。これはテレビ事業の“歯がゆいビジネスモデル”から着想を得たものだと藤田社長は話す。
藤田社長はテレビ朝日で2013年から番組審議委員を務め、同局の番組視聴率をずっと見てきた。「テレビ離れ」という話をよく聞くが、タイムシフト視聴を足すといまだに多くの視聴率があるのだという。しかしタイムシフト視聴の場合、CMが早送りされてしまうことが多い。民放のテレビ局は、番組間に挟まれるCMのスポンサー収入によって視聴者に無料で番組を届ける仕組みのため、ここでビジネスモデルの崩壊が起こる。
それならば、オンデマンド配信は初めからユーザーに課金し、生放送は無料で視聴できる仕組みにしよう――という考え方を取り入れたのがAbemaTVだ。これはニコニコ生放送などで既に実践されているモデルでもある。
「この事業は自分たちとの勝負として始めた。サイバーエージェント社員の3分の1はテレビを持っていない。ここに何かがあるはず。AbemaTVは、ハイクオリティーの中で新しい視聴方法を提案する」(藤田社長)
「ぼくが長年ネットビジネスをやってきた感覚だと、(Webサービスは)ある程度の規模になるとものすごく簡単に広告が売れていく。だが、小さい規模だと売るのがすごく厳しい。例えば月に10億円広告が売れたら(その調子で)20~30億円は簡単に売り上げられるが、数億円規模だとそこで回すのは本当に難しい。今は市場を開拓している段階。とにかく規模を拡大する必要がある。あと2倍ちょっとで、その規模に達する。だからあと1年くらいは同じペースで投資を続けていくつもりだ」(藤田社長)
AbemaTVの視聴者は、約7割が10~20代だという。藤田社長はこういったテレビ離れをしている世代に対し、これまでになかったCMを流す手段を生み出そうとしている。
「既存のインターネットサービスの中で、クオリティーを保証した広告を出せる場は非常に限られている」――藤田社長は自信を見せる。
(太田智美)
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