“日本が知らない”海外のIT
進路相談もVRの時代に 海外発“職探しVR”が生まれたワケ
高校生は、進路に悩んでいる。それは、日本でも海外でも変わらない。
東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所の共同研究「子どもの生活と学び」研究プロジェクトが、高校3年生を対象に2015年、「高校生活と進路に関する調査」を行った。それによれば、進路を問わず、半数以上の高校3年生が「就きたい職業」や「自分の適性」について悩んだことがあるそうだ。
連載:“日本が知らない”海外のIT
日本にまだ上陸していない、IT関連サービス・製品を紹介する連載。国外を拠点に活動するライター陣が、日本にいるだけでは気付かない海外のIT事情をお届けする。
米国ではどうだろう。NPO団体、ユーストゥルースが10~11年、14~15年に行った「スチューデント・サーベイ」によれば、55%の高校生が、大学での勉学や将来の仕事についてあいまいな考えしか持っていないことが分かった。
一方、大学側はどうすれば学生を呼び込めるか頭を悩ませている実情がある。オーストラリアのトレンズ大学もそんな中の一校だった。現代の若者を引きつけるのにふさわしい、ユニークで真新しい策はないかと模索していた同大学のニーズとマッチし、開発されたのが、スマートフォン向けアプリ「ザ・フューチャー・オブ・ユー」だ。
制作は、ニュージーランドを拠点とした、VR(仮想現実)/AR(拡張現実)専門のクリエイティブ企業・メソッドの一部門であるMセオリーが担当。トレンズ大学のオープンキャンパスで初お目見えを果たした。
“VR占い師”が進路を指南
学生がVRヘッドセットを装着すると、ミステリアスな雰囲気の中、占い師が登場。次々と質問を出し、学生はそれに答えていく。ほとんどの質問の答えは、複数あるビジュアルから1つを選ぶ形式になっている。一連の答えが完了するたびに、風景や音楽が変化するなど、臨場感あふれる演出がなされる。
全ての質問に答え終わると、占い師はタロットカードの形で結果を提示してくれる。これには、個人の性格についての簡単な解説と、判明した資質に応じた職業、履修するとよいトレンズ大学の専攻学科が示される。また、実際に学生が持ち帰るためのタロットカードも用意される。それにはVR上のものより詳細にわたる情報が書かれている。
適性診断に「ホランド理論」を使用
各人の適性を診断するにあたっては、ホランド理論を採用している。米国の心理学者、ジョン・L・ホランド氏が開発した職業選択理論で、世界中で進路指導やキャリア選択のアドバイス時に採用されている。
これは、個人のパーソナリティーと職業のパーソナリティーはどちらも6つに大別することができ、人と職業のパーソナリティーが一致した際に、それがその人の適職になり得るというものだ。ザ・フューチャー・オブ・ユーは、ホランド氏が挙げる「現実的」「研究的」「芸術的」「社会的」「企業的」「慣習的」の6つのパーソナリティーを取り入れている。
学生をホランド理論の6つのパーソナリティーの1つに導くために、VR上の占い師が次々とする質問は、Mセオリーがリサーチを重ねた結果、独自に編み出したものだ。社内、友人、家族、トレンズ大学関係者に試行し、整合性があるかを確認。精度をさらに上げるために、VRの最後に二択の質問を加えるなど、配慮している。
学生と学校関係者間のコミュニケーションのきっかけに
VRは、テクノロジーに囲まれて生まれ育った現在の高校生に興味を持ってもらうのに適役だろう。役に立つツールでありながら、楽しい体験を提供できる点でも合格といえる。
トレンズ大学は、ザ・フューチャー・オブ・ユーによって「学生と学内アドバイザーとの間にコミュニケーションが生まれれば」と考えた。実際に説明会では、学生が進んでアドバイザーと言葉を交わす場面が多々見られた。適切なアドバイスを受けられるとあれば、大学の評判は上がり、入学希望者の増加も見込める。
トレンズ大学のオープンキャンパス、そしてクリエイティブ・イノベーション業界のイベントでは、韓国Samsung Electronics製ヘッドセット「Gear VR」を使用。各高校で学生に体験してもらう際には、段ボール製のヘッドセットを利用する予定だ。10月からは、「Oculus Store」でダウンロードが可能になる。
VRを取り入れたザ・フューチャー・オブ・ユーは、大学で何を学ぶか、将来どんな仕事に就くかを悩む高校生に指針を与えてくれる。しかし、これはあくまでツール。最終的に目標を定め、努力するのは本人以外の何者でもない。
執筆:クローディアー真理
編集:岡徳之(Livit)
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