アニメに潜むサイバー攻撃
篠原重工は行政指導が必要? 劇場版「機動警察パトレイバー」で学ぶ「内部犯行」リスク(5/5 ページ)
F: 彼はストーリー上のキーマンでありながら、その姿は冒頭にほぼシルエットで登場しただけで、結局のところ動機も本当の人物像なども明かされていません。警視庁の松井刑事の捜査活動を通して、断片が暗喩されるだけで、全編「死んだまま」でした。
後藤隊長は「何をしなくても湾岸一帯が壊滅、阻止したとしても方舟を失ってバビロンプロジェクトは後退」であるとして、「あいつが飛び降りた時に、本当の勝負はついていたのかもしれん」と話しています。
HOSの問題が発覚した段階で、篠原重工と政府の協議によって、HOSにアップデートした全レイバーは、それ以前のOSに書き戻す「ダウングレード」処理(表向きはHOSの新バージョンへの無償更新)が行われました。それに関しても「書き換えなんてお手軽な方法で決着がつくなら、帆場が自ら命を絶つ必要はなかった」とも言っています。
事実その通りであり、後のMITの分析でも「バックアップメモリはもちろん、あらゆるところに名前を変えて潜伏し、アクセスした対象に片っ端から侵入する」と説明されていました。言ってみれば、サイバーテロによる重要インフラ攻撃がまだ発生していないのに、将棋でいうところの“詰み”の状態になっていて、特車二課にできるのは、後はどれだけ被害を軽減できるか、という負け戦だったわけです。
サイバー攻撃の場合、大抵は攻撃者に「意図」や「利益」があって、守る側からするとそこが逆に防御の手掛かりとなるのですが、この帆場の捨て身で無欲の攻撃は自分を守る必要ないので、あとはもうどうなろうと構わないわけです。そんな状態で重要インフラ攻撃が行われることを想像すると、背筋が寒くなりますね。究極的にいえば、本人は世界が滅んでもいいわけですから。
帆場について詳しく語られなかったり、帆場自身が自分を語ったりしなかったので、その分、どういう意図を持っていたのか、そしてどういう攻撃の広がりを想定しているのか分かりません。ただ重要インフラに関わる企業内部の人間が攻撃者となった場合、どういうことがあり得るのか、それらを想像し、よくよく頭の体操をさせられた作品でした。
繰り返すようですが、これに関しては「誰か一人の天才に重要事項を握らせるのではなく、複数人がチェックできる体制にする」というセキュリティを構築して、リスクを軽減するしかありませんね。根っからの性悪説である必要はありませんが、情報漏えいが内部犯行によるものが多いことを阻止するのと同じように、フリーハンドの性善説はやめて、「悪意の行動を起こしにくくなる環境」を作るしかないでしょう。
しかし、それでも内部犯行は行われると思いますが。ところで……。
K: どうしました?
F: この作品を初めて観たとき、まだ学生だったんでよく分かりませんでしたが、いま役人になって見返すと、この後藤隊長、本当に「カミソリ後藤」の名にふさわしい人ですよね。キレすぎるが故にたぶんやり過ぎて左遷されたわけです。
F: 洞察力、役人的枠組みの中でいかに最大限自由を確保して動き、そして抜け道を見つけ目的を達する能力。帆場よりも、この後藤隊長の、生き延びつつ目的を達成する能力に感服します。役人って、活動の幅が狭まってくると、結構あがこうとしないんですよ。1.1~1.2倍くらいまでは頑張って、後は長いものには巻かれちゃうのです。息を長く仕事して目的を達成するためにね。そうじゃない人間は「霞が関の破壊者!」なんていわれるし。
後藤隊長は、まさしくこの破壊者たり得たから、疎ましがられたんでしょうね。その結果が今の飄々(ひょうひょう)とした、からめ手を多用する後藤隊長なのかと思うと、見えない部分の歴史を感じますね。上司でいたら、クビにならない程度に楽しく仕事ができそうです。部下を生け贄にはしても、クビにはさせていませんからね(笑)。
K: Fさんに似てますね。
F: 何それ、俺の狂犬ライター時代のことを言ってんの? 同じ切れでもキレが違うんだよ!
K: イヤー! ITmediaをつぶさいないでー!
F: ……みんなで幸せになろうよ( ̄ー ̄)ニヤ
「噂の学園一美少女な先輩がモブの俺に惚れてるって、これなんのバグですか?」
F: 昨年度から日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)さんと協力して、サイバーセキュリティ小説コンテストを開催しておりましたが、ついに大賞作品が出版されました! その名も「噂の学園一美少女な先輩がモブの俺に惚れてるって、これなんのバグですか?」です!
K: んんん? なんか名前が違いませんか? たしか目つきの悪いなんちゃら、だったのでは?
F: はい! そのとーり! 出版元のKADOKAWAスニーカー文庫さんと作者の瓜生聖さんが、出版に当たり、より「ラノベらしく」ゴリゴリっと改稿され、タイトルもラノベらしくなりました。さらに「これぞラノベ」って感じで、著名なイラストレーター、西沢5ミリさんがイラストを描いてくださいました! もう、私、西沢さんのファンでして、ありがとーございます! ありがとーございます! と、毎日拝んでます!
K: なんかこう、真面目なサイバー記事と人が変わってませんか?
F: ははは。ネット上では「ラノベと思って買ったら、ラブコメだけどゴリゴリのサイバーネタでした」という感想や、サイバーセキュリティ界隈で厳格な識者である徳丸先生がラブコメの書評を書いてくださったので「徳丸先生、ウイルス注入された?」という声もあって、話題になっていました。というわけで皆さん、ラノベだけどゴリっとサイバーなラブコメにハックされてみませんか?
K: もっとカジュアルな雰囲気のサイバー小説が増えるといいですね!
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アニメに潜むサイバー攻撃
サイバー攻撃は、時代に合わせ、攻撃の対象や手口が変化してきました。しかし近未来の世界、最新技術へのセキュリティ対策はイメージしにくい部分もあります。そこで、そう遠くない未来、現実化しそうなアニメのワンシーンをヒントに、セキュリティにもアニメにも詳しい内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)の文月涼さん(上席サイバーセキュリティ分析官)が対策を解説します。
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