“調達バブル”から幾年、2026年はスタートアップの正念場 資本市場・人材・M&Aの現実から読み解く(2/2 ページ)
ガバナンスが弱い会社は「壊れる設計」になりやすい
一方でスタートアップとの協業・共創に当たったり、M&Aを考えたりする事業会社やその経営層には、こういった企業をどう見極めるかが求められていきます。
こうした会社を見極めるためには、「失敗した場合、誰がどの責任を負うのか」「想定が崩れるとしたら、どの数字が最初に壊れるのか」「この施策で、現場で最も嫌がるのは誰か」といった問いに、具体的に答えられるかどうかを見る必要があります。
赤字前提、統制未整備のまま評価が急膨張するスタートアップは、構造的に壊れやすい状態にあります。2025年にもさまざまな不祥事・炎上沙汰がありましたが、売上の強引な前倒し計上、KPIの恣意的な定義、循環取引などが起きやすいのは、個別企業のモラルだけでなく、「次の調達まで数字を持たせる」圧力が強く働くためです。
一方で、調達額を過度に誇らない会社は、キャッシュフロー感覚を持ち、いつでも黒字化できる前提で事業を設計している傾向にあります。調達は目的ではなく手段であり、評価が下がっても壊れにくい構造を持っています。
ディープテック企業をどう見るべきか
他方、巨額の資金を集めたディープテック企業のように長期間にわたって研究開発を続けているスタートアップが、「短期的な資本市場の論理とは異なる成功モデル」として語られることがあります。ただし、事業会社や経営の視点から見ると、必ずしも「事業としての勝ち筋が明確だから残っている」とは言い切れません。
そこには、撤退しづらい合理的な理由が重なっています。例えば、一定のユーザーがいる事業は「やめられない」点。SaaSやプラットフォームに限らず、一定数のユーザーや取引先が存在する事業は、成長性とは別に「簡単に止められない」状態になります。
顧客への責任、取引先や自治体との関係、サービス停止時のレピュテーションリスクを考えると、「もうからないからやめる」という判断は成立しません。これは評価されていることとは別軸であり、「やめられない」と「伸びている」は全く異なる概念です。
ものづくり系スタートアップとサンクコストの問題
また素材、バイオ、製造といったものづくり系スタートアップには、サンクコストが極端に大きいという特徴があります。長年にわたる研究開発投資、専用設備や工場、特定分野に特化した人材は容易に転用できません。
そのため経営判断としては、「成功確率が高いから続ける」のではなく、「ここまで投資してしまった以上、やめられない」という心理的・組織的バイアスが強く働きます。長く続いていること自体を健全性の証拠と誤解しないことが重要です。
これから重要なのは、「どのスタートアップが残るか」ではなく、「なぜその会社が残るのか」を見極めることです。成長しているから残るのか、ユーザーや契約関係によりやめられないのか、あるいはサンクコストが大きく撤退できないだけなのか。事業会社・経営層にとっては、この違いを理解することが、2026年以降のスタートアップ環境との現実的な向き合い方になるでしょう。
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