不動産とITのナゾ
なぜアマゾンで不動産は買えないのか? 専門家が解説(2/2 ページ)
それでも通販サイトで不動産を販売しづらいのは、細かい障壁が次々に立ちはだかるからだ。例えば、不動産の売買契約を結べても、顧客が対面で重要事項を説明することを求めれば、オンラインでは実施できない。対面でもオンラインでも説明できる仕組みを整えなければならないからコストがかかりやすくなる。
不動産取引に付き物の銀行借り入れも高いハードルだ。家や土地は高額なだけに自己資金だけで購入する人は少ない。銀行からお金を借りる際には、通帳やマイナンバーカードなどの書類を提出したり、融資の審査があったり、担当者と面談したりといった多くの段階を踏む必要がある。不動産経済研究所(東京・新宿)が発表した25年の東京23区の新築分譲マンション平均価格は1億3613万円。高額な取引なだけに、買い手である顧客が「『ワンクリック』で購入するのではなく、時間をかけて考えたい」というケースも多い。
次に立ちはだかる「登記の壁」
こうした多くのハードルを乗り越えて、顧客と業者がようやく決済までたどり着くとする。しかし、決済後には登記という壁が残る。登記では、司法書士による顧客の本人確認が必要だ。オンラインでも可能ではあるが、事前に免許証やマイナンバーなどの書類を送ってもらわねばならない。権利書やカギは郵送できるものの、非常に重要なモノだけに、顧客も事業者も「きちんと手元に渡るのか」と心配するハメになりやすい。販売拡大に向けた広告にも新築と中古住宅で表示規制が違うなど細かい決まりが多い。結果として、両者ともにネットでの売買のリスクがメリットを上回りやすいというわけだ。
不動産のネット購入に関わる多くの規制は一見、不便にも思える。だがそれらは買い手である個人や法人を守るためのものであるだけに、過度の規制緩和は諸刃の剣だ。このため米国など海外でも不動産取引の規制は日本と同様に厳しい。
日本では、ごく一部の不動産の専門業者のサイトでは、ネットを通じてマンションや住宅を売買できる。しかし、不動産の専門業者でない大手通販サイトにとっては、今のところ費用対効果が合いづらいのも事実。将来、技術革新が進み、不動産のネット販売のリスクとメリットの差が埋まり、互いのコストが下がった時には、一般の通販サイトを通じて、ワンクリックで土地や住宅が買える世の中が実現するのかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
不動産とITのナゾ
多くの人にとって「住まい」に当たる不動産は身近なはずなのに、なぜかよく分からないことだらけ。他の業界では常識なのに、不動産業界では非常識。そんな不動産の「ミステリー」を専門家がわかりやすく読み解き、AIをはじめITを活用した不動産の近未来を探る。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
資さんうどん、従業員の退職理由などが外部から閲覧可能に 委託先の勤怠システムに設定不備
-
2
NEC、委託先の情報漏えいで謝罪 「セキュリティ事業を手掛ける企業として反省」
-
3
VTuber「兎田ぺこら」グッズにSNSで風評被害→示談成立 「保護者同伴で謝罪などがあったため」
-
4
JALの予約システムに不正アクセス 約9万人分の予約情報が漏えい 一部ではパスポート番号も
-
5
GMO、ランサム被害にあった顧客に新しいPC提供へ 犯行グループは1人の顧客情報公開か
-
6
NECのルータ「Aterm」、PHP脆弱性の影響なし 設定画面URLの「.php」は無関係
-
7
Anthropic、独自の“創薬活動”に着手 社員1人のバイオ企業を買収、小児難病の治療薬研究を進める
-
8
GMO不正アクセスの犯人サイト、ドメイン停止を確認
-
9
メアドを検索→AIで“その人専用フィッシングメール”を生成する手法、クリック率が約2.7倍に 7000人以上で実験
-
10
「対策を後回しにしたサーバが軒並み狙われている」 相次ぐ不正アクセスにラックCTOが警鐘
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR