Innovative Tech
“酒を飲むと顔が赤くなる”体質は収入を左右する? 日本男性含む3000人を調査 東大などが2023年に学術誌で発表
ちょっと昔のInnovative Tech:
2019年の開始以来、多様な最新論文を取り上げている連載「Innovative Tech」。ここではその番外編として“ちょっと昔”に発表された世界中の個性的な研究論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。X:@shiropen2
東京大学、一橋大学、ソウル国立大学、国立台湾大学に所属する研究者らが2023年にHealth Economicsで発表した論文「Is Asian flushing syndrome a disadvantage in the labor market?」(プレスリリース)は、アルコール耐性の有無が収入や労働時間といった労働市場における成果に影響を与えるかを調査した研究報告だ。
東アジアの多くの人々は、遺伝的な要因によってアルコールをうまく分解できず、飲酒により顔が赤くなる「アジアン・フラッシュ症候群」を経験する。日本、台湾、韓国などでは、同僚や取引先との良好な関係を築くために飲み会などの飲酒を伴うコミュニケーションが不可欠だという見方が根強い。
そのため、アルコール耐性がないことは労働市場において不利に働くのではないかという疑問が生じる。この仮説を検証するため研究チームは、日本、台湾、韓国の25~59歳の就業男性を対象に独自の調査を実施し、遺伝的なアルコール耐性が所得や労働時間に与える影響を分析した。
調査は日本で約2000人、台湾で約1000人、韓国で約500人の男性を対象に行われた。アルコールに対する遺伝的耐性を測定するため、対象者にはアルコール・パッチテストを実施してもらった。
これは、エタノールを染み込ませたパッチを上腕の内側に20~30分間貼り付け、剥がした後の皮膚の色の変化によって耐性の度合いを判定する簡便な検査法。皮膚に変化が出ない人は「アルコール耐性のあるタイプ」、赤く変色する人は「アルコール耐性のないタイプ」に分類される。
分析の結果、アルコール耐性のある男性は、耐性のない男性に比べて高頻度かつ多量に飲酒していることが確認された。しかし、両者の間で収入や労働時間を比較したところ、統計的に有意な差は見られなかった。韓国については、耐性のある男性が耐性のない男性より11.5%多く稼ぐことが分かったが、この差は10%水準でわずかに有意であるにすぎなかった。
つまり、酒を飲める体質の人々がより多く酒を飲んでいるのは事実だが、それが高い所得や有利な労働条件に結びついているわけではないことが明らかになった。
Source and Image Credits: Kawaguchi, D., Lee, J., Lin, M.-J., & Yokoyama, I. (2023). Is Asian flushing syndrome a disadvantage in the labor market?Health Economics, 32(7), 1478-1503. https://doi.org/10.1002/hec.4675
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Innovative Tech
2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説している。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
資さんうどん、従業員の退職理由などが外部から閲覧可能に 委託先の勤怠システムに設定不備
-
2
NEC、委託先の情報漏えいで謝罪 「セキュリティ事業を手掛ける企業として反省」
-
3
VTuber「兎田ぺこら」グッズにSNSで風評被害→示談成立 「保護者同伴で謝罪などがあったため」
-
4
JALの予約システムに不正アクセス 約9万人分の予約情報が漏えい 一部ではパスポート番号も
-
5
GMO、ランサム被害にあった顧客に新しいPC提供へ 犯行グループは1人の顧客情報公開か
-
6
NECのルータ「Aterm」、PHP脆弱性の影響なし 設定画面URLの「.php」は無関係
-
7
「対策を後回しにしたサーバが軒並み狙われている」 相次ぐ不正アクセスにラックCTOが警鐘
-
8
メアドを検索→AIで“その人専用フィッシングメール”を生成する手法、クリック率が約2.7倍に 7000人以上で実験
-
9
GMO不正アクセスの犯人サイト、ドメイン停止を確認
-
10
Anthropic、独自の“創薬活動”に着手 社員1人のバイオ企業を買収、小児難病の治療薬研究を進める
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR