日立製作所の「HMAX」 センサーでデータ収集、AIが解析 保守作業など効率化
人手不足やインフラの老朽化への対応で、保守・点検作業で鉄道事業者が直面するさまざまな課題に対し、デジタルトランスフォーメーション(DX)やAIを活用する動きが広がっている。日立製作所は、電車の車両などにセンサーを取り付け、膨大なデータを収集し、高性能のAIが分析。保守作業や運用を効率化するソリューションサービス「HMAX」を展開する。
すでに2000編成以上に搭載
HMAXは2024年9月に初めて披露され、主に欧州で普及が進んできた。すでに2000編成以上の車両にHMAXが搭載され、国内でも25年11月に東武鉄道との協創で、HMAXを活用した業務改革に取り組むことを発表している。
HMAX開発のきっかけは05年にさかのぼる。「英国で受注した高速通勤車両は車両の納入にとどまらず、車両のメンテナンス契約も結んだ。現地のワーカーの作業でも保守・点検作業の信頼性を向上させる必要があった」。鉄道ビジネスユニットを担当する日立製作所価値創造部の森太郎部長はこう話す。
森氏はHMAX導入による作業効率化の一例に、鉄道の台車のベアリングの修繕を挙げる。2年に1度定期的に交換していたものを台車に走行中の振動を利用して自ら発電する高性能センサーを取り付け、センサーがデータを収集し、AIが分析。より詳細な状況を分析が可能となり、交換期間を最大で4年に延ばすことができた。コスト削減や作業の効率化でHMAX導入の効果は大きい。
沿線経済圏のビジネスモデル変革も
HMAXで高度なソリューションを提供を可能とするのは、自社以外の技術も最大限活用しているからだ。例えば、台車からデータを収集するセンサーは20年に買収した英国企業の技術が生きている。AIの活用では24年から協業関係にある半導体大手の米エヌビディアの技術も重要な役割を果たしている。
台車以外では、架線から走行するための電気を集めるパンタグラフの摩耗の自動計測や、車両の外観の動画撮影による傷の検知や、レバーが開放状態になっているなど正常ではない機器の状態も確認可能だ。作業員による目視点検で行ってきたものを置き換えられるようになっている。
HMAXに関しては、今後は日本の鉄道事業者向けにもサービスの提供で拡大を図る考えだ。森氏は「抱える課題は事業者ごとに異なる」としつつ、「どの事業者にも価値と解決策を正しく提供していきたい」と全国各地の鉄道事業者との協業に意気込みを見せる。
日立は、エネルギーや産業機器など別の分野でもHMAXの応用を進めている。HMAXの導入が日本でも本格化すれば、鉄道事業者の保守点検にとどまらず、沿線経済圏を巡るビジネスモデルが大きく変わる可能性もありそうだ。(永田岳彦)
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