Appleはもう「メモリのお得意様」ではない? NVIDIAだけでiPhone数億台分、苦境に陥った”買いたたき王者”のいま【前編】(2/2 ページ)
「最大の大口購入者」の座から滑り落ちたApple
一方のAppleだが、同社が部品供給業者や下請け業者を奴隷のごとく扱うという話はこれまでも数多く話題になっており、もはや珍しい話題ではない。ただ、この手法が通用したのはAppleが最大の大口購入者だった、という点が一番の理由である。
Appleに匹敵する大口の顧客はこれまで存在しなかった。問題はこれが過去形になってしまった事だ。現在はAIブームで、GPUベンダーは争う様にHBMメモリを購入し、CPUベンダーやAIプロセッサベンダーはLPDDRメモリを求めるようになっている。
例えばNVIDIAはVera CPUで「SOCAMM2」と呼ばれるLPDDR5XベースのDIMMモジュールを利用するが、1台のVera CPUには最大1.5TB分のLPDDR5Xメモリが搭載される。これは、12GBのLPDDR5Xを搭載するiPhone 17 Proの128倍に相当する。Vera CPUの生産量は公開されていないが、米Morgan Stanleyの推定では2027年に575万個、米Bank Of Americaの推定では同じく940万個を出荷するという話だ。
正確なところは不明だが、仮に600万個を出荷するとすると、iPhone 17 Pro換算で言えば7億6800万台分のDRAMを必要とする計算だ。もちろんこんなにDRAMが用意できるとは思えないので、1.5TBフル装備ではなく半分とか1/4とかでお茶を濁す可能性はあるだろうが、iPhoneの生産量が(モデル毎に異なるとは言え)2億台強でしかない事を考えると、NVIDIA1社だけでこれを軽々と超えているわけだ。
ちなみに米AMDのVerano CPUも同じくLPDDR5Xを利用し、恐らくVeraよりも生産量が多い。他に英ArmのAGI CPUもやはりLPDDR5Xを使う。つまりiPhoneやiPad、Macなどで必要とするメモリを全部合わせても、AI向けのLPDDRの需要には遠く及ばない訳で、既にAppleは最大の大口購入者の座から滑り落ちている訳だ。
Appleはジョブズ時代の昔から、自身で状況を完全にコントロールするというビジネスを基本原則としており、これは今も変わらない。しかしAIブームのお陰でこれが半導体デバイス(DRAMやFlashだけでなく、先端ロジックプロセスを含む)に対して成立しなくなってしまった。
今、仮にAppleが「もう部品を買わない」と言っても、メモリメーカーもファウンダリも一切困らないだろう。むしろファウンダリやメモリメーカーが「欲しければこの条件を飲め」と言える立場になっているわけだ。これはAppleのビジネスの基本原則に真っ向からぶつかる事態である。
こうした状況でAppleが取れる策は? というと、要するにこれまで契約してきた「以外の」メーカーから部品を調達できる様にすることで、少しでも価格交渉の糸口を掴みたいというところだろう。「こんな条件だったらAIブームが終わってもお宅からはメモリを買わないが、それでもいいのか?」という脅しを効かせたいわけだ。つまりCXMTへの急接近は、脅しのための口実みたいなものでしかないかもしれない。
もっともこれに意味があるのか? というと筆者的にはちょっと疑問である。何故か……という話は後日、後編の記事でお届けしたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
GMO、ランサム被害にあった顧客に新しいPC提供へ 犯行グループは1人の顧客情報公開か
-
2
資さんうどん、従業員の退職理由などが外部から閲覧可能に 委託先の勤怠システムに設定不備
-
3
NECのルータ「Aterm」、PHP脆弱性の影響なし 設定画面URLの「.php」は無関係
-
4
GMO、不正アクセス実行犯の手がかりに懸賞金 1億5000万円規模
-
5
「楽天トラベル」に不正アクセス 顧客情報最大約260万件など流出か 予約者約3.6万件のクレカ情報も
-
6
GMO不正アクセスの犯人サイト、ドメイン停止を確認
-
7
「推しがそばにいる日常」を ソニー、5万円台の裸眼3Dディスプレイ アニメ公式コンテンツに対応
-
8
メアドを検索→AIで“その人専用フィッシングメール”を生成する手法、クリック率が約2.7倍に 7000人以上で実験
-
9
So-net、会員情報約259万件が漏えい 一部メールサービスではパスワードも流出
-
10
GMO、攻撃者の公開情報に「アクセスは絶対に控えて」 悪質な拡散者には法的措置を準備
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR