小寺信良の「プロフェッショナル×DX」

素材と完成動画を見せるだけ “型”を覚えたAIに動画編集をどこまで託せるか GPT-6 Astraで試す(2/2 ページ)

Bロールの作成も可能に

 AdobeがAIを使って、動画編集に必要なBロールの生成をやるというコンセプトを提示したのは、2024年の「NAB」が最初である。そこから、どうやってAIに生成させるかの方法論が模索されてきたが、2026年9月に発表されたPremiereの26.5で、ようやくUI内にBロールの作成を可能にするアップデートが追加された。

 これまでタイムラインツールとして、AIを使ってカットの後ろや前を伸ばす生成延長機能は実装されていたが、今回はそこを拡張するかたちで、タイムライン上で範囲指定してそこに生成AIによる動画を挿入する、生成メディアツールが追加された。生成延長ツールと使い分ける格好だ。

タイムラインツールに生成メディアと生成延長ツールが追加

 生成メディアツールを選択し、Bロールを挿入したい範囲を指定すると、ダイアログが出てくる。ここにどのようなカットが欲しいか、テキストでプロンプトを入力する。生成AIは「Firefly」以外にもパートナー企業のAIが並んでおり、それぞれ消費されるクレジット量も表示される。Fireflyが最安というわけでもないので、注意して欲しい。

生成メディアツールのダイアログ
使用可能な生成AI

 生成には参照フレームを指定することができる。最初のフレームを指定すると、そのフレームの続きを生成するという格好になる。最初のフレームの指定なしでも生成できるが、それができるのは特定の生成AIに限定されるようだ。今回は「Kling 3.0」を選択した。

 プロンプトはしゃべりの内容に合わせて、「40インチのテレビをパソコンに繋いで快適に原稿を書いている様子」とした。実際に生成されたのが、これである。

プロンプト入力で生成されたBロール

 確かにパソコンと同じ画面が40インチに表示されているが、別の場所を向いているので、趣旨を理解していない。またパソコンを操作しているのは筆者とは別人である。これをまた、プロンプトを細かく指定し直して生成し直すのは、なかなか面倒だ。

 GPTとDaVinci Resolveとの組み合わせでは、GPTがDaVinci Resolveの音声書き起こし機能を動作させることでトークの内容を把握していたので、特に指示せずに適切なBロールを生成してくれた。しかし今回はPremiere上でテキストプロンプトを入力しただけなので、トークの内容を生成AIが把握できていないわけだ。

 そこでトーク内容を把握しているGPT側に指示して、Bロールの作成を依頼した。プロンプトは以下のようにした。

 「シーケンス03で作成した動画の内容に合わせて、Bロールを作成したいです。「40インチのテレビをパソコンに繋いで快適に原稿を書いている様子」の動画を生成してください。出演者本人の後ろ姿があり、その向こう側に40インチのテレビがあり、パソコンの内容をそこに表示してください。パソコンの表示としては、ブラウザ画面、原稿執筆中のテキストエディタ画面、参考資料のPDFなどを配置してください。生成秒数は5秒で、タイムラインの1分32秒の位置、V2トラックに配置してください。」

 今の環境ではGPTが使える動画生成機能がないということで、内蔵ブラウザでAdobeにログインし、Fireflyを使ってBロールを作成するという手段でやるようだ。プロンプトや参照画像などもGPTが自動的に作成する。

横にブラウザを開いてFireflyへのログインを求めてきた
参照画像もGPTが自動生成した
GPTが生成したBロール

 Premiere内で作成した動画より、ずっと意図した通りのBロールが生成された。筆者の猫背な感じとか、後頭部がちょっと薄くなったところなどが妙にリアルだが、そこはそんなに再現してもらわなくてもよかった。素材のダウンロードからPremiereへの読み込みなどで時間がかかったが、それも自動で行われている。

 Bロールの挿入は、編集マンとしては待望の機能なのだが、現実には独立した機能としてポンと編集ソフト内に導入されても、あまりうまく機能しない。編集ソフト自体が編集コンテンツの内容を把握していないからである。それよりもエージェンティックAIを間に挟んで生成させた方が、よほど内容に合うものが生成されるということが分かった。

 生成AIと編集ソフトはシームレス連携できるようになったが、それはあくまでも人間が手を動かす前提の構成である。一方AIを編集のアシスタントとして利用するなら、編集ソフトとエージェンティックAIを同一アプリ内に融合した方が、使い勝手がいいように思える。別アプリになっていると、ファイルのダウンロードやインポートなどで手間取るし、UI的に常時2つを表示しておかなければならなくなるからだ。

 将来的には、エージェンティックAIと人間が同一アプリ上で1本の動画編集を、手分けしながら並行して行っていくというスタイルになるのかもしれない。

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クラウド活用にリモート編集環境と、映像にまつわるプロフェッショナルの分野にDXの波が押し寄せている。プロの現場で何が起こっているのか。最新のITトピックを小寺信良氏が解説する。

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