クリーンルームに潜入! HDDの分解・部品交換からファームウェア書き換えまで、データ復旧のプロの現場を拝見

超精密機器であるHDDを分解し、部品を交換して復旧できるクリーンルームを持つ工場が東京・銀座にある。国内業界でトップクラスの日本データテクノロジーの工場で、クリーンルーム内での作業などを取材し、高い技術力とノウハウを持つデータ復旧のプロの現場を体感してきた。

» 2010年07月05日 10時00分 公開
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 「忘れたころにやってくる」のは天災だが、PCの超重要パーツ「HDD」の故障もそれに似ている。PCの故障の半数はHDDが原因と言われており、OSのエラーメッセージやHDDからの異音に肝を冷やした経験があるユーザーも多いだろう。

 「会社の大切なデータが入ってる」「家族の写真が」──HDDに保存していたかけがえのないデータだが、バックアップも忘れていた。HDDの故障が疑われる場合、どうすればいいのだろうか。

 ITmediaの読者のようなPCのヘビーユーザーであれば、市販のソフトなどを使って自分で復旧させようと努力をするかもしれない。だが「生兵法はけがの元」。ヘタに自分で処置をした結果、HDDやデータの損傷を悪化させる可能性もある。

photo HDDのプラッタにこんな傷がついてしまったら大変だ

 あまつさえHDD内から異音がするからといって、秋葉原で買ったドライバーでHDDの中を開いて……なんてことは厳禁。回復不可能な致命傷を負う可能性が極めて高くなるのだ。

 HDDの故障の要因はさまざま。プラッタ(円板)の劣化やヘッドの損傷が原因の場合もあれば、ファームウェアの交換が必要なケースも出てくる。あるいはRAIDを組んだHDDが壊れた場合のデータは? 仮想化OSを格納したHDDのデータは?──と聞けば、PCに詳しい方であれば「もはや自分の手には負えない領域」だと分かるのではないだろうか。

 というわけで「餅は餅屋」に任せよう。データ復旧市場で国内シェアトップに急成長した日本データテクノロジーには、HDDのレスキューを求める年間4万件の問い合わせがあるという。東京・銀座に構える工場には、ユーザーの大切なデータを救い出すため日夜奮闘する匠(たくみ)たちの姿があった。

これがHDDの“手術室” クリーンルームだ!

 HDD内から「カチカチ」「カッタンカッタン」といった妙な音がしたら、これは内部の部品の不具合が起きている可能性が高い。日本データテクノロジーに持ち込まれるHDDのうち、こうした部品などの不具合を修理する「物理復旧」が約7割を占めるという。

 物理復旧は、人間で言えば「外科」の治療。病院の手術室が無菌状態になっているように、HDDの“外科治療”を行う現場も、ちりなどを最小限に減らしたクリーンルームでなければならないのだ。

 HDDはハイテクの固まり。データを記録しているプラッタと、データを読み取るヘッドの間はナノメートルレベルの隙間しかない。ちょっとしたほこりであっても、プラッタの表面に記録されたデータから見ると、巨大な岩石のようなものなのだ。

 オフィスや住宅などの部屋では、どんなにきれいにしたつもりでも、精密機械を扱うレベルではほこりだらけも同然。データを守りたいのであれば、間違ってもHDDを自宅で開封してはいけない。このようなクリーンルーム内での作業が絶対に必要なのだ。

photophoto 帯電防止タイプの作業服を着て、入り口のエアシャワーを浴びてほこりを落としてからクリーンルームに入室する。クリーンルーム内は外からも見えるようになっている
photophoto 手慣れた手つきでHDDが開封されていく。1日に1人当たり20〜30台程度開けるという
photophoto みるみるうちにヘッドが取り外される。ここまで1分程度しかかからない

photo HDDに耳を当てて音を聴くことも欠かせない作業の1つ。修理に使う“七つ道具”には、培ってきたノウハウが詰まっている

 日本データテクノロジーの銀座工場では、大勢が入れるクリーンルームを設けて、担当者がHDDの復旧に励んでいる。以前のルームは2人程度しか作業できなかったが、拡大したことでみんなで同時に作業できるようにしたという。

 クリーンルーム内には、交換用の部品としてHDD約2000台分が保管されている。地下の倉庫にはその3倍があるという。同じモデルであっても使っている部品が違うことなどがあるため、あらゆる種類のHDDをストックしておくことが物理復旧には欠かせないのだ。

 日本データテクノロジーには部品を探す専門チームがあり、部品調達のために提携している海外の企業と情報を密にとり、必要な部品の調達をしているという。

photophoto HDDのストックなどが置かれたクリーンルーム内。クリーンルームというと涼しいイメージがあるかもしれないが、ここではHDDや各種機器が動作しているため、室内は結構暑い

 技術力、ノウハウ、設備、部品のストック……どれ1つ欠けても大切なデータを守ることはできない。銀座のビルに設けられた日本データテクノロジーのクリーンルームは、データ復旧にかける同社の意気込みを表すシンボルでもあるのだ。

ファームウェアだってお任せ!

 HDDを動かしている重要な要素の1つが「ファームウェア」だ。ファームウェアは、HDDを制御してデータを読み書きするために組み込まれたプログラムのこと。データ復旧の際には、HDD本体のファームウェアを書き換える場合もあるという。

 ファームウェアには、HDDのヘッドやプラッタなどの固有の情報が書き込まれている。同じモデルのHDDであっても、製造された期間などによって内部の部品は異なる。この部品の違いはファームウェアの設定で対応しているため、同じモデルのHDDに対し、いくつものバージョンのファームウェアが存在することになる。

 つまり部品を交換すれば、その部品に対応したファームウェアに書き換える必要があるということになる。例えばヘッドが故障した場合、このヘッドを単に交換しただけでは復旧できない可能性がある。なぜなら、ファームウェアに書き込まれたヘッドの情報と、交換したヘッドの情報が一致しないためだ。再びデータを読めるようにするには、新しいヘッドの情報が書き込まれたファームウェアに書き換えてやる必要がある。

photophoto HDDのPCB(基板)もストックしている。ファームウェアはPCB上のチップ内に格納されている

 このように、単純なパーツ交換ができたとしても、ファームウェアレベルの知識と技術もなければHDDのデータは復旧できないのだ。過去のさまざまなHDDに対応するため、日本データテクノロジーには、約10万ものファームウェアをバックアップして保管しているという。ファームウェアの情報は公開されているとは限らない。あらゆるHDDに対応できるよう、HDDの部品とともにファームウェアも収集し、ユーザーからのレスキューに備えている。

 ファームウェアは約1000のモジュールで構成されているといい、「どんどん複雑化している」という。日本データテクノロジーでは、海外の技術者などと協力し、情報が公開されていないファームウェアを解析する努力を続けている。

RAID・仮想化だってレスキュー!

 高速化を追求するヘビーユーザーなら、複数のHDDで構成するRAIDによるストライピングを組んだことがあるかもしれない。だがこの場合、HDDが故障してしまったら一体データはどうなるのだろうか……。

 日本データテクノロジーには、こうした特殊なデータを復旧するための専門スタッフがいる。RAIDの復旧であれば、RAIDの知識やファイル関連の知識を完璧に身に付け、HDDのバイナリデータを直接見ながら、RAID特有の情報を見つけてデータをつなげていくのだという。

photophoto RAIDを組んだHDDのデータセクタをバイナリで表示した画面。これを見ながらデータをつなぎ合わせていく。1セクタ1画面として、1Tバイトなら20億セクタ、つまり20億画面分あるという……

 まるで気の遠くなる作業に思えるが、そこは専門家。早いもので1日、複雑なものでも1週間で復旧できるというから驚いてしまう。

 近年増えてきた仮想化にも対応可能だ。ファイルシステムを数カ月かけて解析し、社内の仮想化システムを使って実験を繰り返すなどして、対応方法を研究し、復旧につなげているという。

「復旧のチャンスは1回」

photo 取材に応じていただいた復旧技術チーム エキスパートの趙暁豪さん(中央)と、復旧チームの安藤佳晃さん(左)、同じく岩谷謙太さん(右)

 日本データテクノロジーには、個人ユーザーからの依頼に加え、企業や官公庁、研究機関からの案件も多い。時には海外の法人から直接持ち込まれることもあるという。

 「復旧のチャンスは1回」──取材のために話をうかがった趙さんたちは話す。誤った方法による復旧作業が行われ、どうにもならずに日本データテクノロジーに持ち込まれることもあるが、もはや復旧が不可能になってしまっていることも多い。

 企業の将来を左右するデータベース、大切な家族の思い出──かけがえのないデータを救い出したいのなら、確かな技術力と実績を持つプロフェッショナルに依頼するのが確実だ。趙さんたちは「1秒でも早く1つでも多くのデータを復旧することが使命です」と力強く語ってくれた。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ニュース編集部/掲載内容有効期限:2010年8月4日