AIが判断したあなたの信用度を基に、サービスが受けられる――そんな時代が当たり前になるかもしれない。年齢、職業、公共料金の支払い状況などのデータからスコアリングした個人の信用に基づいて、ユーザーに新しい価値やサービスを提供する日本の大手企業が続々と現れている。
例えば、みずほ銀行とソフトバンクが共同出資するJ.Score(ジェイスコア)のサービス「AIスコア」は、ユーザーが質問に答えていくと、個人の信用力と可能性を表すスコアが算出され、さまざまな提携サービスに活用できるようになるサービスだ。
今回は、「あらゆるデータから人の信用を評価する仕組みは、データからその性質や規則性を見いだす『統計学』の考え方に近いのでは」という仮説を基に、シリーズ累計で40万部を超える『統計学が最強の学問である』(ダイヤモンド社)の著者である統計家・西内啓(ひろむ)氏に、AIを使ったスコアリングの可能性を聞いた。
──今回はスコアリングについてのお話を西内さんにお伺いするにあたり、そもそも膨大なデータを基に答えを推測するAIと、データから意味を読み取る統計学は近しいだろうという認識は合っていますか。
西内氏 そうですね、AIの第2次ブームと呼ばれる80年代ごろから、 統計学で使われていた確率や、データの中から一番当てはまるものを推定するといった概念がAI開発の分野で盛んに取り入れられるようになりました。ディープラーニング(深層学習)技術も、そうした考え方の延長線上にあり、裏側では統計学に近い数学的仕組みで動いています。
一方で、 微妙な違いもあります。AIは人間が介入せずに「いい感じのものを勝手にやっておいてよ」というもの。仕組みや中身が人間には理解しづらいブラックボックスでも、正しい結果が出ればいい訳です。
それに対して統計学は、「自分たちが興味のある結果に対して、原因がこれくらい関係しているよ」というものを探り出し、それに対処できれば世の中を良くしていけるのではという発想です。
例えば、同じ電子カルテやライフログなどの健康データを扱ったとして、「この人はあと何年、生きられますか」「どんな病気になりそうですか」などをとにかく正確に推測しようというのがAIの仕事です。一方、「どうすればこの人がもっと長生きできるのか、運動したほうがいいのか、食事に気を付けたほうがいいのか──そういったものを考えていけば、もっと寿命が延びますよね」というのが統計学の考え方です。微妙に使い方が異なります。
ビッグデータやAI技術を活用したスコアリングサービスは、すでに日本国内でも始まっている。J.Scoreの「AIスコア」では、生まれた年と月や職業といった基本情報に加えて、自身のライフスタイルや性格、趣味といった質問に答えれば、自分の信用力とこれからの可能性をスコアとして算出できる。本名や住所など個人情報の入力は不必要で、診断はWebやアプリから無料で受けられる。
AIスコアの特徴は、日々の行動もスコアに反映できるところだ。アプリ版の機能「ハビットチェンジ」では、「規則正しい睡眠を取る」「1日8000歩運動する」といった良い行動を習慣化し、継続してアプリに記録していくとスコアに反映される。
評価軸は運動、学習、睡眠、お金の4項目。これからの習慣を指標にすることで、例えば、学歴のような画一的なデータだけでなく、実際にやったことや学んだことなどを示す「学習歴」のような“未来につながる行動”も取り込み、スコア向上を目指せるのが革新的だ。
──AIスコアを実際に使ってみると、信用力を測るのに本当に必要なのかと思うような質問が出て不思議です。
西内氏 「現時点では(この設問に)意味はないが、今後関係性が見つかるかもしれないものは試しにデータを取ってみよう」という作りなのかもしれません。自分ならそう設計しますね。その中で、「意外と個人の信用力や可能性を測るのに関係しているぞ」という設問を見つければ見つけるほど、精度の向上につながるはずです。
例えば、全体平均としては持っているゲーム機と信用がそれほど関係しないけど、友達とルームシェアしている人に限れば特定のゲーム機を持っているかどうかで大きく信用が予測できるとか、そういうさまざまな組み合わせの中で過去に借金滞納歴があるかなどのデータを照らし合わせていくと、「何%の確率で、この程度の額なら返済可能」みたいなことが提示できるはずです。
教育系の調査で子どもの学力を測りたいとき、学力に関連性が強い親の学歴や所得といったデータも収集したいとします。しかし、子どもの学力調査なのに親の収入を聞かれると回答者に引かれてデータの抜け漏れになってしまうことも。そこで「住まいは持ち家か賃貸か」「家に漫画や雑誌を除いた本が何冊あるか」など、収入や家の教育レベルに関係しそうな質問を入れるなんてことをします。
一見、本来の調査とは関係なさそうな設問でも、実は相関が強いみたいな設問をこっそり見つけておくと、調査の精度向上につながるわけです。
個人の信用力をスコアで測る仕組みが、今後日本でも身近な存在になるかもしれない。そして、そのスコアが自身のスキルアップを手助けする強力な武器になる可能性も。
「スコアリングは自分に点数を付けられているようで苦手」と消極的に捉えるのではなく、自分の日々の頑張りがどんな未来につながっているのかと将来を見つめるための「オトナの指標」として、むしろ積極的に利用していくというのもいいだろう。
自身が現時点でどの程度の信用力を持っているのか。スコアの算定だけならニックネームで使える「AIスコア」をまずは第一歩として試してみて、自分の信用力と将来の可能性を確認してみてはいかがだろうか。
(2020年3月12日 更新)
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