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» 2019年11月18日 10時00分 公開

「あと半年も持たない」 データの急増に追い詰められたコニカミノルタの技術者たち、起死回生の一手

[PR/ITmedia]
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 スマートフォンの位置情報ゲームが社会現象を起こし、リオデジャネイロでは史上最多となる金メダル獲得に日本中がわいた2016年、コニカミノルタのサポートシステム技術部に所属する川合彰氏は頭を抱えていた。普段は笑顔を絶やさない彼の顔を曇らせていたのは、ストレージ不足だった。

コニカミノルタでFDASのAzure移行を主導したサポートシステム技術部の川合彰係長

 日本有数の複合機メーカーであるコニカミノルタは、2004年に複合機の情報を集約したデータ分析基盤「FDAS」(Field Data Analysis Services:エフダス)を構築。分析データから複合機の故障予測など利便性の高いサービスを提供し、顧客企業や販社の評価も高い。しかし導入から12年が経過し、さまざまな問題が生じていた。

 「ハードウェアの老朽化やストレージ不足への対応がたびたび発生し、そのたびに一部のハードウェアリソースを更新して対応してきました。でも直近の1年はデータ量がうなぎ登り。今後のシステム対応が立ちゆかなくなるのが見えていたのです」(川合氏)

 しかし半年後、彼らのシステムはハードウェアへの依存から脱却し、驚くほどの効率化を実現していた。得られたデータはマーケティングや開発など他部署でも活用され、事業戦略にも影響を与えようとしている。何があったのか。

2社の統合を裏で支えたデータ分析基盤「FDAS」

 複合機で長い歴史を持つコニカとミノルタが経営統合したのは2003年のこと。両者対等、どちらも強みを持つイメージング領域で収益力向上などシナジー効果を狙った。

 しかし現場はさまざまな面で違いに直面していた。複合機という同じものを販売していても、その方法論は売り方からサポートに使うデータの集め方まで、多くの面で異なっていた。

 当時を知るベテラン技術者の井上太二部長が振り返る。「私は一社員に過ぎませんでしたが、サービスを統括するそれぞれの部隊で、データ分析のためのデータをそろえていこうという話が進んだと聞いています」。

 当時は、いつ、どこで誰が、どの顧客に何をしに行ったかという、サービスマンが登録するERP(基幹システム)のサービス履歴を販売会社から地道に集めていた。しかし、コニカとミノルタではこのデータの内容が異なる。「例えば1カ月に何枚コピーした、というような単純なデータでも、締め日が違ったり計算の仕方が違ったり。まず、それを統一する必要がありました」(井上氏)

 コニカミノルタのセールス・サービス体制は150カ国にもなり、データの統一どころか意思疎通も容易ではない。このため本社で一括して変換処理をすることも試みたが、継続させるには負担が大きかった。データ分析のためにはシステムだけでなく、元データも極力意味合いを統一することも並行して行いながらFDAS導入を進めた。

 FDASのシステム構築は、東京に本拠を置く1975年創業の老舗ベンダー、インテック ソリューション パワーが担当した。まずメンテナンスに必要な時間や頻度といったサービス活動の状況、複合機の稼働品質を同じ定義で把握する仕組みを作った。複合機に遠隔診断システム「CS Remote Care」が導入されてからは自動的に送られてくるマシンデータもFDASに入れるようにした。サービス履歴とマシンデータの両方を活用することでデータ分析の精度が高まり、「より多角的な分析ができるようになった」という。

「CS Remote Care」は複合機の状態をリモートで管理する保守サービス。出力枚数などの使用状況の他、機器の状態、故障情報を機器から収集する。万一のトラブル発生時には自動通報機能で担当エンジニアが訪問の前に状況を把握できるため、機器のダウンタイムを最低限に抑えられる(出典はコニカミノルタ)

 FDASは現在、日本、北米、ドイツ、フランス、イギリス、オーストリア、中国、オーストラリア、インドの各サービスエリアからデータを収集しており、コニカミノルタの複合機事業に欠かせない存在となっている。しかし、ある時期からデータの増え方が尋常ではなくなった。

オンプレミスの限界、失敗からの学び

 2016年の時点でFDASに入るデータ量は4TBに達しようとしていた。しかも1TB以上は直近1年間で収集したデータだった。複合機の接続台数が増え、取得情報の細分化、高度化により1台あたりのログも増加。CS Remote Careによりマシンデータの情報が参照できることが拍車を掛けた。「データに対する要望が増えたのです。こういう情報を見たい、ここまで見たい、となってくるとデータ量がどんどん増えていきます」(川合氏)

 データを欲しがっていたのは販社や部内だけではなかった。社内の製品開発にかかわる様々な部署が、データを活用することで製品の稼働状況や障害情報をいち早くつかみ、業務における課題分析、状況把握に利用できるデータが求められていた。川合氏は「取得するデータの項目が追加されたことを知らず、データが増えているのを見て気付くこともありました」と苦笑いする。

 このままでは遠からずストレージが足りなくなる。しかし、オンプレミスでは物理的な制約で思うように拡張できない。

 指をくわえて見ていたわけではない。実は、データ分析環境をクラウドに移行し、抜本的に刷新しようという取り組みを2015年から進めていた。川合氏は、「FDASに追加、拡張する形で新しいデータ分析環境を作ろうというプロジェクトを1年ほどかけて進めていましたが、うまくいきませんでした。いわゆる“失敗プロジェクト”です」と振り返る。

 要因は様々あるが、この失敗は現在に向けての大きな「学び」になった。

 川合氏は、FDASを構築したインテック ソリューション パワーに再び声をかけた。担当の福井謙二課長(西日本本部 中部支社 システム一課)は、2005年からずっとコニカミノルタのシステムに携わっていた人物だ。前回(2015年)のコンペでは採用されなかったが、「チャンスがあれば」(福井氏)と期待し、提案していたAzure移行について検討を続けていたという。

 強力な味方は得たものの、時間の余裕はなかった。「データ量の増加が著しく、あと半年持たないところまで来ていました」と川合氏。「そんな状況に対処できるベンダーさんは多くはないです。でもインテック ソリューション パワーさんは『できます』と言ってくれました」。

データが増えると利用価値も大きくなる

 インテック ソリューション パワーの福井氏は、川合氏らサポートシステム技術部と協力しながらシステム構造を抜本的に見直した。それまでのFDASを本来の共通データ基盤とアプリケーションに切り分け、さまざまなサービスから利用できるようにする。スケーラビリティ確保のため、ストレージはAzure SQL Data Warehouseに移行し、全てのデータを集積した。

 「過去の取り組みで何が足りないかを考えながら作りました。Azureに移行し、その先に進めるアーキテクチャのイメージが私の中にあり、これに対して上司の理解も得られました。ブレずに進められたことが良かったと思っています」(川合氏)

 データの処理時間も大幅に短縮できた。例えばシリアルで処理していたため1カ月もかかっていたデータのバッチ処理は5日程度で終わるようになった。

「処理時間の短縮は分析の担当部門にとっても大きかった」という井上部長

 サポートシステム技術部を統括する井上部長は、「時間短縮はわれわれにとって非常に大きかった」と振り返る。「担当者が本来やるべき分析や、将来的な分析システムの戦略を考えるようなことに時間を割けるようになりました。そして最新の市場データを皆が活用できる、これはお金には換算できないメリットです」。

FDASは、ユーザーの利用に向け、メニュー画面、ポータルサイト、データ辞書用Wikiなどで構成する(出典はコニカミノルタ)

 では、実際のコスト面はどうだったのか。川合氏によると、オンプレミスのシステムを5年単位でリプレースする場合に比べ、定常的なAzureの費用、ソフトウェアのライセンスを含めても運用にかかる金額は「以前とほぼ同じか、安いくらい」という。

 最近ではデータがマーケティングや次世代複合機の企画開発に使えることが社内に知られ、本社の企画部門を始め、各部署がAzureベースの新しいデータ基盤に注目している。いずれはコニカミノルタの事業戦略にも影響を与えることだろう。井上部長は、「データを利用する人や範囲が増えるとデータ量は増えますが、それ以上に利用価値も大きくなります。それに、社内の注目を集めたことで継続した改修の理解も得やすくなりました」と笑った。

(後編)1カ月かかっていたバッチ処理が5日に──「10年先まで考えた」コニカミノルタのデータ基盤ができるまで

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 インテック ソリューション パワーの福井謙二氏は、心の中でガッツポーズをした。コニカミノルタが、複合機のデータ分析基盤「FDAS」(エフダス)をMicrosoft Azureに移行すると決め、同社に直接支援を求めてきたからだ。

 実はFDASは、2004年にインテック ソリューション パワーが構築したもの。以来12年間にわたり、機能追加/運用を支援してきたのは福井氏のチームだった。


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