(提供:株式会社日本HP)
コロナ禍で多くの企業が在宅勤務を実施しているが、その土台となるIT環境や制度の構築で、情報システム部門の負担が増している。特に中小企業は“情シス”の人数が限られていることも多く、社内からの問い合わせやサポートなどの対応に追われていることも多い。
しかし、情シスの存在が価値を発揮する業務領域は今後ますます広がる。withコロナの状況において、安定した経営や事業発展の将来を見据えたとき、リモートワークが実施できる体制やITツールを活用した生産性向上の環境作りはもちろんのこと、その先にあるITやテクノロジーを前提とした事業変革が重要な経営課題になることは間違いないからだ。
そこで今回は、数多くの企業で情報システム部門が主導する改革を率いてきた“情シスエバンジェリスト”の高橋秀治氏をゲストに招き、日本HP渕上弘士氏との対談を通じて、企業における情報システム部門の将来像を考えた。
【プロフィール】高橋秀治(プレナス 上席執行役員待遇 DX本部長)
1996年、日立製作所に入社し、半導体部門でドッグイヤーの世界を経験。三社の半導体部門合併に伴う企業再生の組織横断的なプロジェクトに参画する。その後、V字回復の経営で知られるミスミに入社し、徹底的な変化とスピードに対応する働き方を経験。セゾン情報システムズでは、情シス部門長を経て「情シスReborn!稼ぐ情シスエバンジェリスト活動」を推進。現職のプレナスでは、IT再生・DX請負人として企業変革およびデジタル変革にチャレンジ中。座右の銘は、日立製作所が掲げる「和・誠・開拓者精神」と、修行の理想的なプロセスを示した「守破離」。
【プロフィール】渕上弘士(日本HP パーソナルシステム事業統括 クライアントソリューション本部 ソリューション営業部 部長)
1977年福岡県生まれ、外資系IT企業などを経て2007年日本ヒューレット・パッカード(現日本HP)に入社。SIパートナー営業、グローバルアカウント営業、モビリティスペシャリストに従事したのち、2017年よりシンクライアント、rPOS、PC/プリンタサービス、セキュリティソフトウェアのセールスリードを担当。年間数十回を超えるユーザー・パートナーとのワークショップや、デバイスソリューションに関するセミナー登壇を通じ、「テレワークやDXを推進する企業」を支援する。
――高橋さんは“情シスエバンジェリスト”と名乗られていますが、どのような活動をされているのでしょうか
高橋氏 情シスエバンジェリストは聞き慣れない言葉だと思いますが、社内で請負構造化しやすいIT部門の変革と復活、そして企業全体の変革も推進するエンジンの役割を担っていると考えています。
――請負構造といえば、2020年は多くの企業で急ピッチな在宅勤務等の対応に追われた年となりました。特にIT部門は苦労の年となったのではないでしょうか
高橋氏 コロナ禍以前からリモートワークなどの環境整備を進めてきた企業と、そうでなかった企業で2極化していたように思います。「今のままの働き方でもやっていける」「特に困らない」と考えていた企業は急な対応に苦労したはずです。現在は当初に比べて落ち着いてきていると思いますが。
渕上氏 おっしゃる通りだと思います。以前から多くの大企業を中心に「働き方改革」に取り組んできましたが、正直に言えば、思うように進んでいなかった部分もありますね。私たちの顧客からも、コロナ禍でIT部門の負荷が高まっていたと聞いています。
一方で、コロナ禍でテレワーク環境の導入を強いられたことは、経営陣の意識を変えるきっかけにもなっています。これまでよりもPCという存在がより重要な位置を占めるようになっており、「オフィス以外で働くなら、適切なPCが必要である」という理解も広がっています。
「オフィス=働く場所」だったのが、「PCと人がいれば働く場所になる」という認識が強くなっていますね。
高橋氏 いろいろな制約で実現できなかったことができるようになったという意味では、企業や情シスにとってもチャンスだと思います。クラウドをはじめとして、世の中には多くのサービスやツールが存在しています。まさに選びたい放題ではありますが、たくさんありすぎて選べないという方もいます。
今の時代は機能や利便を比較するよりも、まずは触ってみていいなと感じたものを体感するアジャイル的な進め方がおすすめです。例えば、全部入りの100点を取れるようなシステムやツールを探すのではなく、自分たちのやりたいことは何なのか、本質的なものに絞って素早く体感することが大事です。
PCやデバイス環境という視点においては、それぞれの役割、ペルソナによって適したスペックや機能を用意するというのは大事ですね。
渕上氏 われわれはPCメーカーとしてその判断をアシストするために、PCやソフトウェアがどのように使われているのか、または快適に動作しているのかといった状態を可視化できる「HP TechPulse プロアクティブ管理サービス」を提供しています。
ここで得られた具体的な情報を基に適材適所なPCの導入を検討できます。情シスにPC管理の負荷をかけず、これまで以上に業務を効率化してもらうことを目指したものです。
企業内のデバイスの状況をリアルタイムで監視および予測し、デバイスの故障予兆やセキュリティリスクなどを事前に検出する予測分析型のデバイス管理サービスです。どのPCにどんなOSやアプリケーションが使用されているのか、CPUやメモリに負荷がかかっているかなどの情報をシンプルなダッシュボードで表示。IT管理者が、ブラウザのコンソール画面や、インシデント通知メールを通じて状態を把握することも可能です。問題が発生した場合も、有人サポートが対応するプランも選択できます。
高橋氏 まずは、どんなツールでもいいのですが、状況を俯瞰(ふかん)してみることですね。可視化できたら、どう次のアクションにつなげられるのかを分析して行動することが大事だと思います。
渕上氏 例えば、職種や業務内容によって機種が異なるPCを運用管理するという選択をするお客さまも増えています。さまざまなタイプのユーザーから寄せられるサポート要請やリクエストに対応する必要がありますが、情シスにとって負担になっていないでしょうか。
高橋氏 それを“クレーム処理”と考えるか、次の種が生まれる宝の山と考えるかで意識が異なると思います。また、依頼する人と、依頼される人との間に信頼関係があるのかも大事となるでしょう。例えば、ヘルプデスクというとクレームを受けるセンター的な役割と考えてしまうとつらい仕事になりますが、ホテルのコンシェルジュデスクのように、全ての困りごとに耳を傾け、傾聴して寄り添う関係だと定義すれば、意識や行動、振る舞いが変わってくるように思います。
結果として、クレームではなく「ありがとう」といわれるようになる。情報システム部門とエンドユーザーとの関係性が大事ですね。自分たちの価値をもっと変化させていくことが重要です。
また、意識変化だけでなく、新しいプロセス、テクノロジーを導入することも重要です。人との接点を大事にしながら、依頼された案件をこぼすことなく効率よく対応していくためにも重要となります。例えば、チャットbotの活用や依頼状況のダッシュボード化(自動化、可視化)などが必要となる理由は、その点にあります。
渕上氏 そういったツールを活用することは、「ヘルプデスク業務が楽になる」という効果だけではなく、会社におけるITの存在価値を変えていくことにつながりますね。
高橋氏 モニタリングして業務を可視化する視点は大事だと思います。例えば、人の働き方ひとつとっても、セルフBI(ビジネスインテリジェンス)のような可視化ツールで確認し、自分たちの働き方や業務が企業の目指す方向と一致しているのか、改善ポイントは何か、客観的に見ることで自ら意識して行動や振る舞いができることが重要です。
それを具現化するうえでも、いくつか選択肢があります。既存のシステム・データを刷新することで変化する選択肢もありますが、もし変化とスピードに応えようと考えるならば、既存システム・データ刷新アプローチではなく、既存のシステム・データに、新しいシステム・データを混ぜる“デジタル・エコシステム化”(全てのシステムやデータが、あたかも生命体のようにつながること)がおすすめです。
渕上氏 そういう意味で言えば、HP TechPulse プロアクティブ管理サービスはハードウェアから収集した情報をAPI連携することができます。既存の管理ツールにアドオンする形で利用できる柔軟性があるツールです。
高橋氏 クラウド関連のテクノロジーやサービスを選定するときに、つなぐことを意識した構造になっているのか、デジタル・エコシステム化で考える視点が重要となってきます。独自開発に陥り、変化とスピードの足かせにならないためにも必要な視点です。連携できること──これはビジネスでもシステムでも更に重要になっていくでしょう。
――情報を可視化していくことによって、情報システム部門が手作業でやっていた管理やサポートを自動化、効率化できます。どのような新しい価値を企業に提供できるとお考えですか
高橋氏 これまでの情シスの役割といえば、社内で顕在化したニーズに対応することが主要業務でした。それが行き過ぎてしまうと、請負構造化するという負のスパイラルに陥ってしまいます。既存システムの改善、社内からの依頼・問い合わせ業務など、日々の業務に忙殺されてしまうわけです。
一方で、今は先行きが不透明です。変化のスピードが速い時代には顕在化されたニーズに対応するだけでなく、顕在化されていない“シーズ(種)”に先回りすることが必要です。つまり、これからの時代は請負構造化したIT部門ではなく、事業部門とIT部門が一体化している必要があるのです。
私がプレナスで担当するデジタルテクノロジーを使った変革領域ですが、従来あったIT本部をDX本部という名称に変更しました。その意図は、請負構造的なITではなく、ビジネスとITが一体化した組織に変わるという決意表明をすることで、今までのITというブランドイメージを置き換えることを意識しています。自組織内の意識が変わり、相手から見える意識が変わる大事なポイントだと考えています。
渕上氏 今後の情シス部門は請負型の組織構造ではなく、自らを変革して戦略的にITを活用する“攻めのIT経営”につなげていくことが大事──その通りだと思います。しかし、顧客から「時間が無いがDXを推進しなければならない」「社長が『DXをやれ』とむちゃぶりをしてきた」という声をよく聞いており、実際にそこまで行き着いていない企業も多いのではないかと。
――DXのような施策を進めていかないと、企業はどのようなリスクに直面するとお考えですか
高橋氏 ずっと成功し続けるビジネスモデルは少ない、変化を受け止めるのが大事という前提で企業風土・文化を創っていく必要があると思います。
今後は、変革にチャレンジする人、ポジティブな人の足かせにならないようにプロセス設計することが重要だと考えています。新しい取り組みが道半ばで止まらないように、例えば、ガーデニングのように、種を植え、育て、成長させていくようなプロセス設計が必要です。一方で、現在のキャッシュを生み出している既存ビジネスやオペレーションも大事です。どちらが、良い悪いではなく、両方重要で、時代や市場環境の変化により、その比率が変わってくるだけとなります。
渕上氏 当社のようなPCメーカーは、四半期に何千万台ものPCを出荷している会社だからこそ見えてくる世界もあります。PCメーカーとしてはめずらしく世界有数の産業研究所であるHP Labsも持っていて、さまざまな分野の研究をおこなっています。そのうちの一つであるセキュリティラボではPCのようなエンドポイントのセキュリティをITインフラの中で重要な部分であると位置付けて研究をおこなっています。
この結果、PCハードウェアが実装するセキュリティと、ソフトウェア・サービスとして提供するセキュリティいずれも提供できています。こうした安全にPCを利用するという面からも、DXを進めたいと思っている人たちを下支えできると考えています。
――経営層が「情報システム部門」の価値を理解し、存在が重要であると捉えるために必要なことは何でしょうか
高橋氏 経営層との対話が大事だと考えています。経営課題の難易度が上がっている今、もっとも解決したい経営課題とは何か。傾聴して、顕在化していないニーズを引き出すプロセスがますます重要となってきます。未来を予測して、相手の無意識の中に眠る痛みに共感するためにも、単なるITサービスを作るのではなく、経営課題に寄り添うシェルパのような信頼ある関係性が重要となるでしょう。
そのためには、ITに求められる機能は、従来のデジタルテクノロジーだけでなく、ブランディングやマーケティング、営業的な要素が必須となってくるでしょう。
渕上氏 経営層の悩みに応え、経営課題の解決に寄与できるデバイスやサービスをうまく選択し活用できれば、情シス部門の役割や重要性も向上していきます。日本HPもPCメーカーとして中小企業の情シス部門に寄り添い、業務負荷の軽減、そして企業の変革に貢献できるようなデバイスやサービスをお届けしていけるよう尽力していきます。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2021年6月30日