「RPAは自動化ツールではなく、ローコードの開発環境だ」――そう話すのが、RPA製品「AutoMate」を導入し、自社のワークフローサービスをアップデートしているケートリックの田付氏だ。果たして、その言葉の真意はどういったところにあるのか。そして、日本企業がRPAをこれまで以上に活用するためのカギとは。同社の事例から探る。
DXの推進が大きなミッションである日本企業にとって、業務改善を強力に推進できるRPAは是非活用したいツールといえる。近年は認知度も高まってきたRPAだが、実は導入している企業はまだそこまで増えていないのが現状だ。
これから日本企業がRPAを活用するためにはどんな考え方が必要なのか、そのヒントを探るべく、今回は三和コムテックが提供するRPA製品「AutoMate」を導入し、自社のワークフローサービスと連携させて使っているケートリック社の事例を紹介していく。
なぜワークフローサービスにRPAを組み合わせるのか、そして数あるRPAツールの中でなぜAutoMateを選んだのか。ケートリックの代表取締役である田付和慶氏に話を聞いた。
ケートリックの創業は2013年で、HCL Notes/Domino上で動作する業務アプリケーションの設計、開発、保守を行っているシステム開発会社だ。これまで、数千、数万単位のユーザーを抱える大企業の業務アプリケーション開発案件を多く手掛けてきた。
「HCL Notes/Dominoで業務アプリを多数開発してきた中で、そのアプリの多くに共通した部分があることに気が付きました。つまり、個々を見ると異なるアプリなのですが、その多くが共通する機能を有していたのです。そこで、毎回イチから開発するのではなく、共通する機能を汎用化させれば効率化できるのではないか、と気付いたのです。
請負開発をしていると、こうした共通部分の開発にも結構な工数と人月がかかってしまいます。これはお客さまにとっても当社にとっても望ましくありません。多くのアプリに共通する機能を汎用化させたツールがあれば、コストをかけずに手軽に企業の課題を解決できるはずだ、と考えました」と田付氏。
田付氏の話にある、「どのアプリでも共通して必要になる機能」というのが、ワークフローだ。業種・業界を問わず、ある程度の規模の企業であれば、申請と承認のフローは必須となる。特に日本の大企業では承認フローが複雑になる傾向がある。例えば、部門間をまたぐワークフローや動的な承認申請など、単純な申請機能では対応できないワークフローも多く使われているそう。
このようなニーズに応えるべく、ケートリックは21年6月、高度なワークフローにも柔軟に対応する「consentFlow(コンセントフロー)」というサービスを開発し、リリースした。複雑なワークフローを作成できるWebベースのアプリケーション構築システムで、プロコードだけでなく、ローコードでも開発できるのが特徴だ。
多くの企業がDXの波にもまれる一方、情報システム部は人手不足となりがちで、現場から出るアプリなどの開発ニーズを一手に引き受けることができなくなっている。そこで、現場でもシステムを構築する、いわゆる「シチズンデベロップメント」という考え方が重要になってきており、その流れを基にconsentFlowではローコードでワークフローを構築できるようにした。
その際、大企業が気にするのがガバナンスだ。簡単につくれるからといって、幅広い部門で好き勝手に“野良アプリ”が生まれると困ってしまう。
「ローコード開発で問題になっているのが、野良アプリです。誰でも簡単に開発できてしまうため、フィールド位置やデザインなどの開発スタイルがまちまちで統一感のないアプリがどんどん生まれてしまいます。そこで、consentFlowではアプリのリリース管理をきちんとマネジメントできる機能を組み込んでいます」(田付氏)
もちろん、consentFlowはローコードだけでなくプロコードにも対応するので、Javaの開発基盤を利用してサーバサイドの開発も可能。ローコード開発だけだと、ここぞというときにキモとなるアプリがつくれないこともよくあるのだが、プロコードに対応することで、死角のない開発ができるのが特徴となっている。
ケートリックではRPA製品であるAutoMateを、consentFlowと連携して活用している。AutoMateとconsentFlowは両者ともオンプレミスで動作するので、幅広い環境でもワークフローを構築できるのがポイントだ。
そもそも田付氏がAutoMateのことを知ったのは21年10月のこと。ワークフロー製品としてconsentFlowの差別化を図るため、オンプレミスでシステム連携できる製品にアンテナを張っていたところ、AutoMateのことを知ったそう。トライアルにチャレンジしてみると、「やりたかったことがすぐに実現できた」(田付氏)ため、すぐ導入することにした。
「他社のRPA製品とあまり比較検討をせずにAutoMateを導入したというのが実際のところです。ただ、その後、他社のRPA製品を触る機会があり、JSONファイルの解析を始め、consentFlowの強化に必要な機能がないことが多く、AutoMateの高機能性にあらためて気付き、導入したことは正しかったのだな、と実感しました」(田付氏)
中小企業では、今でもまだまだExcelで業務を行っているところも多い。本来ならシステム化して業務効率を図るべきだが、それらの業務を置き換えるシステムをイチから開発しようとすれば、大きな手間とコストがかかってしまう。
そこで、AutoMateを活用すれば、例えば特定のフォルダにあるExcelファイルを自動で読み込み、その結果を見てconsentFlow上でワークフローを進める――といったことが可能になる。逆に、RPAの自動処理の中で、人の手で承認が必要になる部分をconsentFlowで動作させることもできる。このように、AutoMateとconsentFlowを利用することで、PDFやExcelファイルなど、これまでシステム化できていなかったような環境でも、柔軟なワークフローを構築できるようになるのだ。
実際に、交通費精算のデモを見せてもらったが、本来であれば別の作業である「申請・承認」と「金額チェック」をシームレスに進行できたのが驚きだった。consentFlow上で申請がなされたら、AutoMateが起動して、受け取ったJSONデータを解析し、交通費情報をオンラインの路線案内サービスで照合。金額が妥当な範囲内であれば次の承認に回し、大きく異なるなら差し戻すという内容だ。
このように、簡単にシステム連携しにくいような仕組みも、RPAを介することであっけなくつながってしまう。人が行うような操作はだいたいAutoMateで再現できるので、consentFlowと連携させれば、多くのフローを自動化できてしまうのだ。
交通費精算の他にも、例えばユーザー情報の登録や変更の申請が上がってきた場合、従来であれば承認した後は総務部が登録や変更作業を行っており、申請数が多いと現場の負担が大きくなってしまっていた。一方、consentFlowであれば、申請が承認されたらそのままAutoMateでAD(Active Directory)にアクセスして処理できるので手間がかからない。その後は作業が完了したことを申請者に通知してもいいし、Saleceforceなど他のアカウントの登録・変更もREST APIで数珠つなぎにして同時に行ってしまう、というワークフローも組める。
「ネットワークドライブとの連携もAutoMateの強みです。クラウドに配置するにはサイズが大きすぎるファイルや社外秘の製図データなど、取り扱いが難しいファイルは社内のネットワークドライブで運用されがちです。もちろん、それらのファイルも正しく文書管理をしなければなりません。そこで、ファイルが保存されたら、AutoMateがファイル名やフォルダ名から部門やルールなどを付加して文書管理システムに自動登録するようにしておけば、きちんと管理できる上、データの利活用も促進されます」(田付氏)
通常、RPAというと単純な定型業務をロボットに行わせるイメージが強い。しかし、ケートリックでのconsentFlowの使い方を見ると、定型業務を自動化しているのはその通りなのだが、業務と業務をつなぐような形で活用されているのが印象的だ。
「当社では、consentFlowからAutoMateにワークフローを渡す際、申請内容をJSONファイルで転送する機能を開発しました。AutoMateはJSONやXMLを解析できるので、その情報を基に、例えば先ほど経費精算のところで紹介したような、路線案内サービスで交通費を照合するといった作業を任せることができます。また、AutoMateはOAuth2.0でHTTPポストできるのもおすすめのポイントですね。これができると、安全にデータを転送できます」(田付氏)
田付氏の話を聞いていると、RPAを単純な「固定業務の自動化ツール」としては見ていないことが分かる。ローカルにあるExcelファイルまでREST API化させてシステムに組み込める、いわば「ローコード開発環境」だと捉えて活用しているのだ。
「AutoMateはエラーが起きたときの処理もしっかりとつくり込まれています。プログラムを書く側の人間からいわせてもらうと、こうしたポイントはおろそかになりがちなので、とても優れていると感じます。REST APIをつくる際は、エラーチェックが必要不可欠なので、その点でもまさに単なる自動化ツールではなく、ローコードの開発環境と捉えられると感じています」(田付氏)
日本企業でなかなかRPAの活用が広がらない理由も、こうした考え方が根付いていないからかもしれない、と田付氏は指摘する。世間がRPAに持つイメージは「固定業務の自動化ツール」であり、そのためいくつかの業務を自動化したら活用が止まってしまい、RPAが持つ本来の魅力を引き出せないまま“宝の持ち腐れ”になってしまっているという。
「RPAを活用してシステム間の連携を進める、という考え方が広まれば、日本企業のDXが今まで以上に加速するのではないでしょうか」(田付氏)
今のところ、consentFlowはHCL Notes/Dominoを基盤としているが、今後はケートリックがライセンスをカプセル化し、一般的なクラウドシステムとして販売する予定もあるという。現在は、リリースに向けてベンダーと協議中で、早ければ年内にリリースする見込みだ。
田付氏はこれまでソリューションを提供するという目線でAutoMateを使ってきたが、今後は実際に自社の社内業務にconsentFlowとAutoMateを活用し、請求業務や顧客管理などを行っていく考えを示した。特に中小企業の場合、個別の目的であれもこれも、とクラウドサービスを契約すると、サブスクリプションのコストが大きくなり、費用対効果が薄まってしまう。そんなときに、consentFlowとAutoMateがあれば手軽にシステムを構築して、コストを抑えられる。今後は、こうしたSaaSに置き換えられる可能性を秘めたconsentFlowとAutoMateのシナジーに関してテストを行い、顧客に提案していきたいという。
最後に今後の展望を聞くと、田付氏は次のように締めくくった。
「今後はconsentFlowのシステム連携をより一層強化していきます。今回AutoMateとの連携を実現できたことで、顧客の皆さまのかゆいところまで手が届くようになりました。今までは業務効率化などについて、『クラウドとオンプレミス間の連携ができない』とか、『連携するにはデータウェアハウスやセキュリティゲートウェイが必要になる』といった課題が出ていましたが、そこをconsentFlowとAutoMateで解決しましょう、という提案をもっとできるようにしていきたいですね」
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