LANケーブル1本で高品質な音と映像&電力供給! 「AV over IP」がこれからの新常識に ビジネスはどう変わる?

» 2023年10月05日 10時00分 公開
[小寺信良PR/ITmedia]
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 日本社会で推進されてきた「働き方改革」は、“コロナ禍”によって急激に進み、テレワークやWeb会議が定着した。昨今ではオフィス回帰の傾向も見られるが、テレワークとオフィスワークを組み合わせる「ハイブリッドワーク」導入のため、オフィスを縮小したりフリーアドレス制に転換したりと、オフィスの在り方も変わってきている。

 そんな中で悩ましいのが、オフィスから参加する場合のWeb会議システムだ。仮設で組み上げたためにカメラとマイクの回線がバラバラだったり、これまでほとんど使っていなかった会議室のネットワークではうまくつながらなかったりと、むしろ家の方が快適な状況も散見される。

 Web会議システムを構築する際、AV機器の設置や管理が難しいのが悩みの一つだ。カメラやマイクなどのAV機器は、コネクターの形状がバラバラだったり、アナログとデジタルの違いがあるのになぜか同じコネクターだったりする。それには長い歴史があるわけだが、AV機器の知識が相当ないとうまく扱えない。

 またケーブル1本につき1系統の信号しか流せないので、複数の映像機器をつなぐとケーブルの数はものすごいことになる。ラックの後ろは、一度外すと二度と戻せないような“スパゲティ状態”のケーブルが重くぶら下がり、機材の追加や移設となれば、一体どこの部署が担当なのかさえ分からない企業も多いのではないか。

 だが近年、AV機器の配線を全てIP化し、シンプルかつ従来不可能だったフレキシブルなオペレーションを可能にするシステムに変更する施設も増えてきた。そのソリューションが「AV over IP」。米国の企業、公共施設、大学などの文教市場で成果を出してきたが、日本でも導入する先進的な事業者がじわじわ増えている。

 AV over IPで何ができるのか、具体的なメリットは何か。そのポイントをつかむため、映像機器の専門家である筆者が、音響機器やコミュニケーション機器の輸入販売と映像および音声のIP化を手掛けるオーディオブレインズ(東京都渋谷区)の代々木ショールームに潜入した。同ショールームでは、米NETGEAR(ネットギア)のスイッチを核にネットワークを構築しているという。AV over IPの現状やショールームでの活用方法、NETGEAR製スイッチの特長について同社の山崎潤太社長に聞いた。

オーディオブレインズ 社長 山崎潤太氏。取材は2023年9月1日にリニューアルオープンした同社の代々木ショールームで実施

なぜ? 「AV over IP」がプロAV業界を席巻し始めている理由

―― 業務の世界では、映像・音声信号のIP化はどこから始まったのですか。

山崎氏(以下、敬称略): 音が関わる場所はほぼ全てと言ってもいいぐらいなのですが、当初は「音」が主力で、コンサートやイベントなどの仮設現場で使われていました。音声伝送で現在まで主力なのが、オーストラリアに本社を構えるAudinate(オーディネイト)社の「Dante」というプロトコルです。1本のイーサネットケーブルに多数のオーディオチャンネルを伝送できるのでコンサートホールやスタジアムといった広い場所では効果が大きく、次第に常設設備として普及しました。最近だと、企業の会議室や学校の教室などでも使われ始めています。

 当社でも音響機器以外に映像機器の取り扱いもしようと、数年前から米Visionary Solutions(ビジョナリーソリューションズ、以下Visionary)製の機器を扱っていますが、そこがAV over IPの製品を展開しています。従来の音響機器もネットワーク対応してきており、DanteやAVB(Audio Video Bridge)といった規格に対応するネットワークスイッチが必要になり、NETGEARさんの製品もラインアップに加えています。

――企業が導入し始めた背景には、コロナ禍でWeb会議が増えたこともあるのでしょうか。

山崎: それもありますが、やはり敷設やメンテナンスコストが下がる点が大きいです。映像、音声ケーブルに比べてネットワークケーブルは圧倒的に単価が安く、機材を追加する際もネットワークスイッチに挿すだけなので、システム設計全体をいじらなくていい点はメリットです。

数十台の映像音響機器のシステムがラック1本に軽く収まる

 ここは映像機器の専門家である筆者が少し補足したい。従来のように映像・音声ケーブルを引き回すシステムの場合、機材を追加するとなると、信号を切り替えるビデオルーティングスイッチャーに空きがなければ信号線をつなげられない。ただビデオルーティングスイッチャーはかなり高価なので、大抵は無駄がないように設計段階でフルにふさがっているケースが多い。

 入力数も2、4、16、32、64……と増えていく製品も多いため「1系統増やしたいだけなのに倍の入力モデルに買い替えざるを得ない」といったことも起こる。従って、拡張したくてもコスト的に無理という状況に陥りやすい。

山崎: AV over IPが持つその他の利点は、伝送距離が稼げる点でしょうか。学校の校舎全体をAV over IPでつなぐ場合、教室全部を貫いてキャンパス内の別棟もつなぐとなると、トータルで2〜3キロのケーブルが必要です。これができるのは実質光ファイバーしかないので、IP化のメリットが出やすいところです。

 代々木ショールームは1階にセミナールーム、3階に会議室を配置しており、その間を光ファイバーで結んでいます。ほぼ遅延なくコミュニケーションできることをご体験いただけます。

代々木ショールームのネットワーク概要と機器の接続イメージ

――イーサネットにはPoE(Power over Ethernet)という、電力も送れる仕組みがありますが、設備ではよく使われるのでしょうか。

山崎: PoEは必須と考えています。ここ数年会議室でよく見かける天井埋込型マイクの多くがPoE給電に対応しています。最近ではスピーカーもパワーアンプを内蔵し、PoE給電に対応している機種が増えてきました。当社が扱っているAV over IPのエンコーダーやデコーダーも全てPoE対応です。天井や壁面に電気工事を施すコストも削減できます。

 NETGEARさんのAV向けスイッチはコネクターが背面にあり、ラックマウントした際に他のAV機器とレイアウトがそろう点も魅力で、PoE対応ネットワークスイッチとして当社でも人気があります。

NETGEARのAV向けスイッチ。コネクターが背面にあるため、AV機器とのラックマウントに最適(型番:GSM4212P)

柔軟なオペレーションを実現するAV over IP

 オーディオブレインズが取り扱うVisionaryのAV over IPデバイスは、独自規格を用いて、汎用性の高い1ギガビットネットワークで4K映像を1フレーム以下の遅延で伝送可能。ソフトウェアによる制御が可能なので切り替えコントローラーのUIも自由に設計できるというメリットもある。

 ネットワークスイッチとしてオーディオブレインズが推奨するのが、NETGEARの「M4250シリーズ」だ。同シリーズは、AV over IPのために開発されたスイッチで、従来のラックマウント型AV機器との統合を容易にするように設計されている。

 静かな場所でも使用可能なファンストップ機能やポートの反対側からもステータスを確認できる仕様など、ProAV市場に最適な機能を搭載する他、音声・映像伝送に必要な設定が手軽に行える点などが支持されている。

 その他にも代々木ショールームでは、さまざまなシステムソリューションが体験できる。

―― 設備系において4Kや8Kの需要はあるのでしょうか。

山崎: 会議室などでは現状HDで十分だと思いますが、お客さまからは4K対応のリクエストを多く頂きます。デジタルサイネージでは8Kの需要はありませんが、HDを4本送って4Kにするといったソリューションもあるので、機材としてはほとんどが4Kに対応しています。

―― 商業設備のビデオウォールのように複数のディスプレイに同時に映像を出す場合、映像切り替えのタイミングをどのように同期させるのですか。

山崎: デコーダーを複数台束ねて、タイミングをコントロールします。ネットギアジャパンのYouTubeチャンネルに、160入力160出力を同期させた実証実験映像があるので、ご覧いただくといいと思います。

映像伝送の新時代到来!NETGEAR×IDK AV over IP大規模映像伝送実証

―― 大規模なシステムでも、AV over IPなら映像を1カ所でコントロールできるのですね。

山崎: そうです。代々木ショールームだと、会議室向けに当社が扱っている製品をタッチパネルでコンロールできるように組んでいます。私のPC画面をビデオウォールディスプレイの一部に共有するといったことも簡単にできます。

複雑な設定変更も一つのボタン操作に組み込むことが可能

 映像と音声を伝送するだけではなく、エンコーダー、デコーダーごとに映像が来ているかといったステータスを確認でき、エラー発生時は担当者にメールが送信されます。こうした運用もIPだからこそ実現できることです。

―― 映像管理では、複数の映像をマルチビューで見るソリューションが必要になります。これを映像信号ベースでやると専用機器が必要になるので結構大変なのですが……。

山崎: これもAV over IPのメリットの一つですね。ネットワークスイッチの中で複数の映像を分割画面に合成して出力する機能があります。それをネットワークに出してデコーダーで受けるという形で表示できます。ソフトウェアベースなのでレイアウトも自由ですし、ピクチャー・イン・ピクチャーでの表示にも対応できます。

多くのニーズに対応! AV over IPが今後のコミュニケーションのカギに

―― 最後に、AV over IPを導入した企業や施設の反響を教えてください。

山崎: 現在は、ネットワークといってもただインターネットにそれぞれがつながっているだけという企業や学校がほとんどです。一方でコロナ禍以降、学校などでは教室を広く使いたいという要望が増え、Web会議の使用が普及しました。

 現在の環境で運用できているなら問題ありませんが、先生がPCの設定にてこずってしまったり、会議システムにうまく接続できなかったりという課題も多いようです。

 同じキャンパスの教室間を接続する場合、AV over IPであればWeb会議システムを使わず設備のボタン一つで全て操作でき、スムーズに授業を開始できる点などが非常に支持されています。企業が運営するウェビナーなど、一般の会議よりも高精細な映像や音声が求められる場合も、AV over IPのメリットが生きるケースかと考えています。

―― ありがとうございました!

 Web会議やウェビナーが隆盛になって感じるのは、映像や音声ソースがどんどん増えているということだ。登壇者の数だけカメラとマイクがあり、会場と投影資料を同時に映し出すなどと、小規模なテレビ中継システムに近いレベルが普通に求められるようになっている。

 企業ではこうしたAVシステムの管理運用のために専門家を雇うわけにもいかず、結果的に情シス部門の仕事になるのだろう。しかし情シスが必ずしもAV機器に精通しているわけではなく、さらに一元管理できるわけでもないため、トラブルがあるたびに現場に出向くことになる。

 AV over IPでシステムを組めば、1カ所で管理できるだけでなく急なシステム変更も手元で対応可能だ。ソフトウェアで専用コントローラーを組めば、利用者が自分でシステムを変更できる。手離れが良く、多くのニーズにフレキシブルに対応できるAV over IPが、今後のコミュニケーションのキーになりそうだ。

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オーディオブレインズ様の新ショールームに潜入!AV over IPの現状やネットギア製スイッチの感想を聞いてみた

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2023年10月16日