「ひと皮むけた」──そんな2004年だったかな(3/3 ページ)
衝撃だったり、参入したり、立ち上がったり──前年とはうってかわって多彩な話題に注目が集まった2004年を振り返ろう。
携帯型で盛り上がったゲーム業界、来年は据え置き型だ
ゲーム業界の台風の目になったのは携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」「プレイステーション・ポータブル」(PSP)だった。5月のE3で両製品の実機が公開されると、強力な新ハードの発売に向けてゲーマーの期待もカウントダウンが始まった。
焦点になった価格と発売日では2社間で駆け引きもあったようだ。任天堂がNDSの価格と発売日を公開したのは、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の発表会が開かれた9月21日。任天堂が当初公開したニュースリリースのURLは「040927a.html」だった。そして任天堂のリリース公開後に開かれたSCEの発表会では、PSPの価格と発売日は明らかにされなかった。任天堂のリリースのURLは単なる間違いの可能性もあろうが、噂好きなマニアたちの格好の話題にはなった。
両製品とも12月に発売。評判の高い「ドラゴンクエストVIII」と合わせ、ゲーム業界は久々の活況に沸いている。
そして来年は据え置き型コンソールの新製品ラッシュだ。任天堂は「新しい提案」を予告しているほか、SCEはCellプロセッサとNVIDIAのグラフィックス技術、Blu-rayドライブを搭載した“PS3”を披露する。Microsoftの“Xbox2”(開発コードネーム:Xenon)も来年の発表が予定され、情報を一部開示された開発者筋の前評判は高い。
元祖・IBMも投げ出すPC業界
「PC世界大手10社のうち3社が3年以内に退場を余儀なくされるだろう」──Gartnerのレポートが公開された直後に明らかになったIBMのPC事業売却。IBMの現責任者は「ThinkPadは変わらない」と語る。独立したPC事業会社として小回りをきかせ、「ウルトラマンPC」のような驚きの製品が登場するなら大歓迎だが……。
IBMが見切りを付けるほどのPC市場。米国は需要が回復しつつある一方、国内販売は低迷が続く。夏商戦で期待されたアテネ五輪特需だが、消費者の興味は大方の予想通りデジタル家電に。PCはわずかな分け前にあずかるのがやっとだった。
国内メーカーのPCはAV家電化がますます進んだ。シェアを落としても出荷を絞る作戦に出たソニーは「VAIO第2章」を打ち出したが、今のところ不発。しかしDellのような徹底したコモディティ戦略を採らない限り、各社とも方向性としてAVしか打ち出しようがないのが実情だ。Gatewayの国内再上陸も、撤退時の混乱を覚えているユーザーの視線は厳しい。
PCのAV家電化といえば「Windows XP Media Center 2005」が10月に米国発表された。しかし同OSの世界初販売は実は東京の秋葉原だったことは米国報道的には無視された。秋葉原での売れ行きは「お得なXP」として可もなく不可もないと聞く。
Intelをむしばむ大企業病
PC業界の寂しさに合わせ、Intelの話題も少なかった。x86系プロセッサの64ビット対応では事実上AMDに屈した上、最新チップセットは発売直後にリコール。Prescottはあまりの発熱で自作ユーザーをうんざりさせ、4GHz版はついにリリースを断念。数年前のIntelの勢いからは考えられない失点続きの1年だった。
デジタル家電ブームに沸いた1月のCESでLCOSへの参入を表明し、“家電へのIntelモデルの導入”をぶち上げたものの、1年も経たずに撤退。半導体世界最大手として収益は抜群だが、デジタル家電や携帯電話がエレクトロニクス産業の主流になった今、ブームに乗りきれないIntelアーキテクチャの存在感は希薄になった。Xbox次世代機はPowerを採用するとも噂され、Intelのリビングルーム戦略は不透明だ。
1980年代のIBMがそうだったように、Intelは今、深刻な「大企業病」にかかっているとの指摘もある。バレットCEOは社員に宛てたメールで「この状態は私たちが知っているIntelではなく、またそれを容認することはできないと考えている」などと語りかけ、社員の引き締めにかかった。
2005年はCentrinoと同様のプラットフォームをデスクトップでも立ち上げる計画。プロセッサのデュアルコア化も着々と進む。だがPCハードはDellの“貢献”もあって完膚無きまでにコモディティ化しており、Intelの取り組みが刺激になるかどうかは分からない。
Longhornを待つ谷間のWindows
PC業界を本格的に活気づかせるには、早くて2006年末とされるLonghornの登場を待つ必要がありそうだ。
そのLonghornだが、新OSの目玉になるはずだったファイルシステム「WinFS」の導入は先送りに。2006年内の出荷予定に間に合わせるためだが、それでもあと最低2年は待つ必要がある。
今年のWindowsの重要事件はWindows XPのService Pack 2のリリース。日本語版正式名称の「セキュリティ強化機能搭載」が端的に表している通り、導入するとファイアウォール機能がデフォルトで有効になるなど、メジャーアップデートに近い巨大なサイズながら、主眼はセキュリティの強化だ。
しかし導入で不具合に見舞われたユーザーが続出し、サポート対応に追われたPCメーカーからの不満も聞こえてきている。セキュリティ強化は歓迎すべきだが、他の業界では当然とされるメーカーの義務が今さらセールスポイントになってしまう空しさも漂い、業界を活性化させるには至らなかった。
LinuxはOS自体については大きな話題はなかったものの、政府系機関の関心が高まるなどし、海外では相次いで大型案件がまとまっている。SCOによる訴訟問題は「SCOが自滅した」「もはや懸念には及ばない」とする見方があるが、新たな特許侵害の指摘もある。
Linux関連では、広島県の高校生がKNOPPIXを使ってPCクラスタ構築に取り組んだレポートにアクセスが集まった。安価で柔軟性の高いフリーOSの有用性を分かりやすく示したと言えよう。
Linuxが打ち立てたモデルは力を増している。Solaris 10の無償提供に踏み切ったSunの「LinuxはSolarisの敵ではない」というコメントを額面通りに受け取る人は少ない。
エンタープライズ業界には再編の嵐
エンタープライズ分野では、大がかりな業界再編の動きが相次いだ。
12月についに決着したOracleによるPeopleSoftの買収劇。Oracleの攻勢に対しPeopleSoftが仕込んだポイズンピルだが、経営陣の単なる保身だとする見方も浮上する中、買収に強硬に反対してきたOracle出身のコンウェイCEOが10月に解任されるなど、終盤戦まで混乱続き。もはやITトピックスとも言えない泥仕合に堕し、「OracleとPeopleSoftはどちらも傷ついた」とする見方もあった。
12月にはSymantecによるVeritas買収が発表され、Oracle−PeopleSoftに続く1兆円規模のM&Aが業界を驚かせた。6月にはERP世界最大手のSAPとMicrosoftとの合併が検討されていたことも明らかになった(既に破談)。MicrosoftとSunとの“歴史的な全面和解”も、一連の業界再編の流れの中に位置付ければ腑に落ちよう。
北米でもエンタープライズ市場の本格回復は遅れており、実需に対しベンダー数が多過ぎるとの見方はかねてから根強い。Oracleの次の買収候補としてSCM大手などの名前が早速噂されており、業界再編は来年も進みそうだ。
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