「ファイルローグが著作権侵害」、二審も認める
P2Pファイル交換ソフト「ファイルローグ」による著作権侵害が控訴審でも認められた。JASRACとRIAJは今後、中央サーバを利用しない「Winny」タイプのP2Pソフトユーザーへの対応を強化する。
日本エム・エム・オー(MMO)が運営していたファイル交換サービス「ファイルローグ」による楽曲データの交換で著作権を侵害されたとして、レコード会社などが損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が3月31日、東京高裁であった。佐藤久夫裁判長は、MMO側に約7100万円の賠償金支払いとサービス差し止めを命じた一審判決を支持し、MMO側の控訴を棄却した。
ファイルローグは、ユーザーのファイルリストを中央サーバで管理するハイブリッド型のP2Pファイル交換ソフト。MMOが2001年にβ版を公開し、国内初のP2Pファイル交換ソフトとして話題になった。
2002年2月、日本音楽著作権協会(JASRAC)と日本レコード協会(RIAJ)の会員19社が、ファイルローグに著作権を侵害されたとして、MMOを東京地裁に提訴。地裁は2003年1月、著作権侵害を認める中間判決を、同12月に、MMOに対して約7100万円の賠償を命じる終局判決を言い渡した。
MMOは、「ファイル交換の場を提供しただけで、著作権侵害はしていない」などと主張し、一審判決を不服として控訴していた。
控訴審は、「MMOは、音楽データの著作権侵害行為を誘発することを知りながらファイルローグを提供していた。サービスはMMO管理下にあったと言え、MMOが責任を問われるのは当然」などとし、MMOがユーザーに著作権侵害行為をさせている主体であると認定した一審判決を支持した。
JASRACの代理人・田中豊弁護士は同日の会見で、「ファイル交換ソフトが著作権侵害の主体となりうるという判決が高裁の知財部で出たことは、著作権者にとって意義が大きい。ネット上で適法な音楽流通網構築に尽力している人にとって大きなインセンティブを与える判決」と評価した。
ユーザー個人の提訴も視野に
田中弁護士は、「Winny」や「WinMX」など、中央サーバを持たないP2Pファイル交換システムについて言及。「法的な対処は難しい」(田中弁護士)としながらも、「著作権侵害しているユーザーを相手に訴訟を起こすことは手段として考えられる」(田中弁護士)と話した。RIAJの弁護を担当した前田哲男弁護士も同様の見解を示し「WinMXユーザーが刑事事件として摘発された例もある(関連記事参照)。権利者は決して無力ではない」(前田弁護士)とした。
RIAJはすでに、ユーザーへのアプローチを始めている。昨年末までにISP 44社に対し、P2Pソフトで音楽ファイルを不正アップロードしているユーザーの情報開示請求を実施(関連記事参照)。RIAJの生野秀年専務理事によると、「相当数のISPが応じてくれた」という。
JASRACの加藤衛常務理事も、「警告しても違法なファイル交換をやめないなど、確信犯的で悪質なユーザーに対しては、個別に対策を取りたい」と話す。「5年や10年先という遠い未来ではない」(加藤常務理事)時期に、何らかの対処をする考えを示した。
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