YouTubeが日本戦略加速 成功のカギは「パートナー」(2/2 ページ)
YouTubeが日本戦略を積極化している。来日したGoogle幹部は、メディア企業にとって最大の懸念となっている著作権侵害対策に理解を求め、YouTubeの“ポジティブな面”を評価してほしいと語った。
YouTube配信を始めたことで、視聴者が本当に見たいコンテンツが分かってきたという。「YouTubeでのアクセス1位は当社のキャラクター・ライオンの動画だが、2位は首都高の西東京ジャンクションを紹介する報道番組の動画。こういったニュースは、作る側としてはあまり力を入れずに作ってしまうが、視聴者はああいうものが見たいのかと知った」(田沼局長)
今後は、インディーズアーティストのビデオクリップ配信や、競馬中継の配信、ワンセグとの連携などを検討していく。「ビジネスとして成り立たせないと意味がない」
GDH「新メディアは敵ではない」
GDHの内田康史副社長は「たくさんのユーザーに作品を見てもらえる機会」とYouTubeを位置づけ、「新メディアは敵ではない。いかにアジャストしてビジネスモデルを作っていくかが大切」と他パートナー企業よりもさらに前向きな姿勢だ。
「当社のような企業は、地上波でショーケースとして番組を放送し、DVDで売って回収する、というビジネスモデルを取ってきたが、YouTubeなら海外を含めたたくさんのユーザーに見てもらえる。YouTubeを利用してコンテンツの世界同時発信を行う、といった可能性も考えられる」(内田副社長)
吉本興業も、8月2日に専門チャンネルを開設した。中多広志経営・財務戦略室長は「新メディアの可能性を追求したい」と期待する。「最近、ムーディー勝山の携帯電話用コンテンツが、2カ月で2億円分売れた。新しいメディアでいままで想像しなかったことが起きている。世界一のサービスであるYouTubeとパートナーとなってビジネスモデルを探求したい」
著作権侵害動画もプロモーションに活きる?
パートナー企業は、YouTubeのマーケティングパワーに期待しつつも、著作権侵害対策には頭を悩ませている。スカパーの田中専務は「著作権侵害の専任担当者を付け、24時間体制で監視・削除しているが、YouTubeのパートナーとなることで、懐に入って防衛できる。対策の改善をYouTubeに強く要求している」と話す。
著作権侵害動画もただ削除するのではなく、プロモーションに生かせるなら残していく――という考え方の企業もある。「違法コンテンツについては対策チームを作り、各サイトに強い働きかけを行っているが、プロモーションとして活用したいというパートナーもいる。当社の著作権を侵害した動画は、必要ならば削除していくが、その動画を見たいという客がそこにいることに大きな意味がある」(GDHの内田副社長)
吉本の中多室長も「著作権侵害は残念と考え、対策は行っているが、ユーザーが違法コンテンツをわざわざ探しているのかというと、そうではない。YouTube上など、コンテンツを簡便に探せる場所を提示すれば、そこに来てもらえると思う」と、ある程度前向きにとらえているようだ。
mixi、カシオ――コンテンツ提供以外での連携も
ミクシィとカシオは、コンテンツ提供とは違った形で連携している。ミクシィは、YouTube動画をmixi日記に引用できるようにし、カシオは撮影した動画をYouTubeに簡単にアップできる「YouTube対応デジタルカメラ」を米国で発売する。
ミクシィサービス企画部の有野寛一マネージャーによると、1日約110万件ほど更新されるmixi日記のうち、1%にYouTubeのURLが入っているという。ユーザーがより簡便にYouTube動画を日記に引用できるよう、YouTubeとの連携を決めた。
mixi内にも動画共有サービス「mixi動画」がある。ただ「mixi動画は家族や友人とのプライベートな映像をアップするユーザーが多い」(有野マネージャー)とし、YouTubeに掲載されるような、ネットユーザー全般と共有したい動画とは住み分けられるとした。
カシオ計算機はYouTubeと独占契約を結び、EXILIMの「YouTube対応版」を8月に米国で発売する。YouTubeに最適なサイズのH.264形式の動画を撮影し、専用ソフトで手軽にアップロードできるデジカメだ。「撮影した後の楽しみ方を提案し、YouTubeでデジカメの用途を広げたい」(中山仁QV統轄部商品企画部長)。国内での発売は未定。
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