半導体大手の米Intelが非営利プロジェクト「One Laptop Per Child」(OLPC)理事会からの離脱を発表した翌日、OLPC側が、Intelは加盟していた半年の間プロジェクトのためになるような貢献はほとんどしなかったと批判した。
1月4日付の声明でOLPC側は、IntelがOLPC理事会と書面で交わした契約に反して同プロジェクトのソフト開発支援を行わず、OLPCのノートPC「XO」を「中傷した」と主張した。
OLPCの声明は次のように述べている。「われわれは常に、ほかの低価格ノートPC提供企業がこのプロジェクトに加わるのを受け入れ、歓迎してきた。しかしIntelは2007年7月にOLPC理事会に加わって以来、幾度となくOLPCとの書面による契約に違反していた。IntelはXOノートPCを中傷し続けた――既にOLPCとの協力を決めた開発途上国(ウルグアイとペルー)やノートPCソリューション選定の途上にある国(ブラジルとナイジェリア)、遠方の小さな国(モンゴル)ででさえ」
Intelは1月3日にOLPC理事会から離脱すると発表。この時に同社広報がReutersに語ったところでは、OLPCはIntelに対し、「OLPCシステムのみ」に専念することを求めていたという。しかしIntelには自前の新興国向け低価格ノートPC「Classmate」があり、この種のPC向けに設計された「Diamondville」というコードネームのプロセッサに取り組んでいる。
Intelのプロジェクト離脱を受け、OLPCはAMD製のプロセッサ利用に戻る。
OLPCの声明では、Intelの脱退の仕方にも矛先を向け、同社が事前にOLPC理事会に相談することなく発表を行ったと非難した。OLPCはIntelの離脱に落胆することなく前進する意向だと表明している。
「IntelがOLPC理事会を離脱したメリットとして、目的と市場が改めて明確になった。われわれは今後も、すべての子供に学ぶ機会を与えるという使命に力を注ぐ」とOLPCの声明は述べている。
Endpoint Technologies Associatesのアナリスト、ロジャー・ケイ氏の見方では、OLPCプロジェクトは今後も続き、必要なプロセッサはすべてAMDが供給できるはずだという。しかしIT業界内部でのOLPCの信頼性は、Intelの脱退で深刻な打撃を受けるとみる。
「要は、OLPCのような組織の理事会にはIntelのような企業が必要であり、それを失ったら誰が味方になってくれるのかということだ」とケイ氏。
同氏は、ノートPCを低価格で販売する事業というよりは、学術活動のようなOLPCの運営のあり方も批判している。利益を出したいIntelにとって、OLPCとの独占協力のために他者との関係を切り捨てるのは非現実的だとケイ氏は言う。
「自分たちのサプライヤーが営利活動を行っていないかのように振る舞うことは不可能だ」とケイ氏は話し、いずれにしてもIntelは以前からOLPCとの提携に前向きでなかったと言い添えた。
Forrester Researchのアナリスト、サイモン・イェーツ氏も同じ見方で、この種のプロジェクトではIntelとOLPCのそりは合わないと指摘、eWEEKへのメールで次のように解説している。
「両社のモチベーションは大きく異なり、同じ期待を抱くことは決してなかった。わたしの意見では、新興国向けの戦略を成功させるためには、恐怖、欲、参加意識という3つのモチベーションをうまく組み合わせることが必要だ。自分がソリューションを開発しなければほかの誰かが踏み込んでくるという恐れを抱き、投資価値のある金銭的チャンスをにらんで野心的に追求する欲を持ち、収益が転がり込んでこない場合でも情熱を駆り立てる志気が必要だ。IntelとOLPCは根本的な違いを前もって解決しておらず、劇的な事態が起きるのは時間の問題だったのだと思う」
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