「徹底的に争う」とJASRAC加藤理事長 排除命令、YouTubeやニコ動に影響は(2/2 ページ)
JASRACは公取委と徹底的に争う構え。加藤理事長は会見で、語気を強めながら公取委への不服をあらわにした。YouTubeやニコ動と結んでいる包括契約には影響はなさそうだ。
JASRAC管理楽曲の割合を算定するには、他の管理事業者の楽曲の放送状況を把握する必要もある。だが「JASRACがすべての管理事業者の利用データを持っていいのか。他社の仕事をJASRACがやってどうする。かえって自由な競争に反する恐れもある」と加藤理事長は言う。
イーライセンスの件は「承知していなかった」
イーライセンスが放送分野に新規参入した際に起きたことについては、公取委から説明があるまで「承知していなかった」という。「JASRACは、新規参入事業者に圧力をかけたことはない。一般の方などにそう受け止められているとしたら心外」
著作権管理業務への新規参入が認められてから6年になるが、いまだにJASRACが楽曲の9割以上を独占する状態が続いている。「魅力ある楽曲を集めて利用してもらうには相当時間がかかる。JASRACは70周年で、後発事業者より有利だが、時間をかければ追い越されてしまうかもしれない」
イーライセンスの三野明洋社長は同日、「排除命令により、公平公正な競争が促進されるよう、JASRACが速やかに対処することを期待する」とコメントを発表。「業務用通信カラオケや貸しレコードなどの分野の包括契約についても今後、公正な競争市場が早期に形成されることを願っている」としている。
「事実関係を徹底的に争う」
JASRACは、3月2日に公取委から説明を受けた上で、審判請求する方針。「公取委が、JASRACが新規参入を阻害したと認め、排除命令を出すという判断に至った事実関係は、はっきりさせてもらえないと困る。事実関係を徹底的に争う」(加藤理事長)。その後の訴訟も視野に入れているとした。
排除命令を受けた以上「包括契約に基づく徴収はすぐやめなくてはいけない」(顧問弁護士の矢吹公敏氏)状況だが、今も放送で楽曲が使われている以上、事実上難しい。「放送事業者が音楽を自由に使えなくなるという状況だけは絶対に避けたい」(加藤理事長)
民放連は同日、「排除命令は民間放送事業者にも多大な影響が及んでくるものと思われる」とコメントを発表。「排除命令の内容について十分検討を行ったうえで、JASRACなどと協議したい」としている。
YouTubeやニコ動には関係せず
JASRACはYouTubeやニコニコ動画とも包括契約を結んでいるが、今回の排除命令は放送局との契約のみが対象。YouTubeやニコニコ動画では、「最初から全曲報告してもらう前提で契約している」(菅原瑞夫常務理事)ため、同じような問題は起きないようだ。
両サイトともまだ、使用された楽曲を100%報告できているわけではないが「100%に近づけていくよう話している」(菅原常務理事)という。
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