初音ミクやアイマス“以外”を目立たせたい――ニコニ広告の狙い、ひろゆき氏に聞く(2/2 ページ)
アイマス、東方、VOCALOIDの“御三家”が目立つニコ動だが、「ニコニ広告」という新しい指標で、それ以外の面白動画を目立たせたいと、ひろゆき氏は話す。有料ポイントを使った唯一のサービスだが「あんまりもうかってはいけない」とも考えている。
「確かに、広告を出す人は作品に対して思い入れがあるのに、ニコニコにお金が支払われるのは泥棒じゃね? と思う」とひろゆき氏はその意見に同意しながらも、「制作者に直接お金が入ると、お金に親和性の高いものを作ってしまい、本当にいいものを作るモチベーションにはならないと思う」という意見だ。
ニコニ広告で宣伝してもらえれば、制作者はうれしいと感じるだろう。だがそこに金銭的メリットが介在すると、純粋な面白さを求める方向から離れてしまうとみる。その例がテレビ番組だ。
「今のテレビには、あまり面白い番組がないと僕は思っている。CMを入れて商品を売るために番組を利用している視聴率重視の構造で、作品の質があまり重視されていないからでは」
「作品の良さに対して、見返りがない状態でお金を払う人がいないと、本当の良さを評価する軸にならないと思う」
制作者に金銭的なメリットが出ると、「エロ動画や著作権侵害作品を上げるとかいう方法でお金を稼ごうとする人が出る」という問題もある。
制作者には、モチベーションが上がる形で還元したい
たとえ広告ポイントを制作者に還元したとしても、制作者のモチベーション向上につながらない恐れもあると、ひろゆき氏は考えている。質の高い動画を作るには膨大な手間がかかるため、ニコニ広告で数百円や数千円もらったところでコスト回収は難しい。
「直接お金をもらっていまうと『小銭のためにやってるのか』と言われる可能性があり、それならもらわないほうがマシかもしれない」
制作者に還元する方法は、別に考えたいという。「制作者には何らかの配慮はしたいが、直接的なお金が渡る必要はないのでは。モチベーションが上がる形で還元する方法を考えたい」
あまりもうかってはいけないサービス
ニコニ広告企画時は「自分の動画をPRする利用ばかりだと気持ち悪い」と不安に思っていたが、今のところ本人によるPRより、お気に入り動画を宣伝する利用が多く、杞憂(きゆう)に終わった。「みんなでお祭りみたいに使ってもらえるといい」
3月10日のスタートからこれまでに、合計「何百万円の下の方」の金額が使われたという。好調な滑り出しで、認知が広がればさらに使われる可能性もあるが、ひろゆき氏は「現状で十分。毎月1000万も使われたら社会がおかしい」と話す。
「大金は払ってほしくない。そんなにお金があるなら制作者に払ったほうがいいし、参加のハードルが上がっちゃうので。何の見返りもないで払えるのは500円ぐらいでは」
「あまり売り上げが上がらないぐらいがベスト」とさえ言う。「あくまで“おまけ”のネタサービスだから、大勢の人が少しずつはらったほうが面白い。効果が上がって企業も使い始めるという話になれば、広告単価が下がって黒字が遠のくし」
ニコニ広告は今後、“ネタ”として使ってもらえるエンターテインメントサービスとして進化させていく。ニコニ広告が付いた動画の最後には、テレビ番組のように広告の提供元ユーザーとメッセージが表示されるが、「ユーザーのロゴを入れられるようにするなどして、“提供感”を出してもっと遊んでもらえるようにしたい」
ひろゆき氏も「動画作ってるんですが……」
ひろゆき氏も最近、動画制作にハマっているという。「動画には、作る面白さがある。手先が器用でない人でも、思い通りのものを作れるという意味で、動画が一番面白い」
だが、なかなかニコ動にアップする気になれないそうだ。名前を出せばアクセスが集まるだろうが、「作品の力で勝負できない」ことが分かっているだけに、「評価されたいという自負があると難しい」からだ。
「荒川線の車窓動画をHDで撮ったんですが、すごい長さで編集する気になれなくて……。車窓動画を撮ってる人たちは編集がうまいし、垂れ流し動画のひどさも分かっているから」
「動画は努力とセンスの集大成。僕はセンスは微妙で、努力はできないとうすうす分かってはいるんですが。一縷(いちる)の望みにすがって作ってます」
ニコ動、不況でも広告伸びる 有料ユーザーも増加
赤字運営が続いているニコ動だが、広告や有料サービスからの売り上げは着実に伸びているようだ。
「不景気のあおりはある」ものの、企業からの広告出稿は伸びており、特にゲーム系の出稿が多いという。有料のプレミアム会員(月額525円)は3月16日に30万人を超えた。
ただ、黒字化はまだ遠そうだ。「黒字にするためにいろいろ作っちゃってるので……」。ニコニコポイントの決済システムなどで大規模な投資を行ったほか、人員も増やしているという。
投資をやめれば、単月黒字化は不可能ではないという。だが「黒字化のために優秀な人を採らないとか、面白いサービスをやらないなら意味がない」とひろゆき氏は考えている。
「不況の時代ほど優秀な人材を安く集められる。企業からお金をもらう方法を考えるより、人材に安く働いてもらっていい物を作る方がいい時代」
「5年以内に景気が回復すると読んでいる。親会社のドワンゴには現預金もあるし、5年間は面白いサービスにすることに専念するといいのでは。今のうちに他社と差別化し、まねできない方に持って行ったほうがいい」
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