IntelとAMD、Windows 7との互換性を強調:XPモードが使えない?
IntelおよびAMDのプロセッサの一部がWindows 7のXPモードに対応していないという問題が浮上したが、両社はMicrosoftと緊密に共同作業を進めており、同OSの出荷までには問題はほぼ解消されるとしている。
Microsoftの次期OS「Windows 7」に搭載される「Windows XP Mode」(XPモード)をサポートするIntelプロセッサはどれかという疑問が話題になっており、プロセッサとOSの互換性という比較的珍しい問題がクローズアップされる格好になった。
Windows 7のXPモードは、同OSのEnterprise、Professional、Ultimateの各エディションでWindows XP向けのアプリケーションを動作させることを可能にする。この機能は、ユーザーに古いバージョンのWindowsからWindows 7への移行を促すために用意されたものだ。Windows 7は2010年初頭にリリースされる予定だが、業界観測筋の間では、今年のクリスマス商戦の前に登場するという見方が多い。
Technology Business Researchのアナリスト、ジョン・スプーナー氏によると、XPモードはデスクトップおよびノートPCでの仮想化技術の利用形態を示す好例だという。
「これがデスクトップ仮想化の素晴らしいところだ」とスプーナー氏は話す。「このケースでは、仮想化によってWindows 7上で古いXPアプリケーションを動作させることが可能になる」
最近になって、Intelプロセッサの一部、あるいはAMDのプロセッサが、XPモードを利用するのに必要なハードウェアベースの仮想化技術を備えていないという問題が浮上した。
これは特にコンシューマーにとって重要な問題だ。企業ユーザーと比べてコンシューマーは、Intelの仮想化技術を備えていないローエンドのプロセッサを搭載したノートPCやデスクトップを購入することが多いからだ。スプーナー氏によると、プロセッサメーカーにとっては、仮想化技術を組み込まないことでローエンドのプロセッサのコストダウンを図ることができるという。
AMDの商用ソリューション担当ディレクター、マーガレット・ルイス氏によると、ローエンドのSempronシリーズを除くほとんどすべてのAMDチップは、AMD-Vという仮想化技術を備えているという。
一方、Intelの広報担当者、ジョージ・アルフス氏によると、同社の企業向けプロセッサのほとんどは、Intel VTという仮想化技術を搭載している。Intelは2005年にIntel VT技術をリリースして以来、同機能を搭載したプロセッサを1億個以上出荷した。
Intelは発表文の中で「Windows XP Modeのターゲットはビジネスユーザーだ。この機能はWindows 7の中〜上位バージョンで提供され、多くのIntelプロセッサではハードウェア的にサポートされている。Intel VT対応のCPUとIntel VT対応のBIOSを利用するには、Intel vPro技術を搭載したPCが必要だ。これらはMicrosoft Windows Virtual PCとWindows XP Modeをテストおよび配備するのに最適なプラットフォームだ」と述べている。
アルフス氏によると、各プロセッサに搭載された機能はIntelのページに記載されている。ユーザーが自分のシステムを確認できるサポートサイトもある。
AMDとIntelの仮想化技術はいずれもBIOSで設定するが、ルイス氏によると、多くのシステムメーカーはこの機能を無効にした状態でマシンを出荷しているという。
「XPモードをサポートする仮想化技術がプロセッサに搭載されているかどうかという問題は主としてコンシューマーに影響することであり、これは迅速に判定することができる。しかし仮想化機能が有効になっているか無効になっているかを判定するのは、一部の企業にとって厄介な問題になる可能性がある」とスプーナー氏は話す。
「多くのシステムでは、それを判定するにはITスタッフがデスクトップを1台ずつ確認して回る必要があり、そのために費用がかさむ可能性もある。リモートでそれを判定する方法があるのかどうかは知らない」(同氏)
ルイス氏によると、この問題は「ハードウェアとソフトウェアが接して」いて、プロセッサメーカーとMicrosoftが互換性を実現するために緊密に連係している部分を浮き彫りにしたという。
ルイス氏とアルフス氏は、Windowsとの互換性が問題になる可能性は低いと口をそろえる。AMDとIntelの技術者らは、Microsoftの技術者と日常的に共同作業を行っているという。この共同作業を通じてMicrosoftが新プロセッサの開発を進める一方で、両プロセッサメーカーは将来のプロセッサおよびアーキテクチャの計画を練っているのだ。
アルフス氏によると、Microsoftはx86アーキテクチャをベースとして新Windows OSを開発し、また、同社では長期にわたるテストを実施しているため、Intelハードウェアデザインに対して高い互換性が保証されるという。またIntelは、自社製品の開発計画の長期展望をMicrosoftに示している。例えば、Intelの技術者は既に、新チップアーキテクチャ「Sandy Bridge」に関する情報をMicrosoftに提供している。同アーキテクチャは2010年に「Nehalem」をリプレースする予定で、オンチップグラフィック技術や「AVX」命令セットなどを搭載する。
「これらはまだ市場に出ていないチップおよびプラットフォームだ」とアルフス氏は話す。
ルイス氏によると、通常はハードウェアがソフトウェアメーカーに提供され、その上でソフトウェアメーカーが自社製品の互換性を確認するという。例えば、Windows 7はAMDの「RVI(Rapid Virtualization Indexing)」技術を利用する。同技術は、ハイパーバイザー、ゲストOS、アプリケーションが関連しているシステムの管理性を改善する。
「ハードウェアがソフトウェアメーカーに提供され、その上でソフトウェアメーカーはそれに魔法を吹き込むのだ」(ルイス氏)
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