「知の共有が前進する」――Googleブック検索和解案を歓迎する出版社
「発行した書籍の全文検索が実現することを歓迎します」――Googleブック検索の和解案で「知の共有が前進する」とし、積極的に参加を表明する出版社が現れた。
「発行した書籍の全文検索が実現することを歓迎します」――出版中の一部書籍を全文公開するなど先進的な取り組みを行っているポット出版がこのほど、Googleブック検索の和解案に参加するとWebサイトで表明した。
Googleブック検索は、書籍本文をデジタル化(スキャン)して検索できるサービス。米国の著作者団体などが「著作権侵害に当たる」としてGoogleを提訴したが、著作者に一時金や収益の一部を支払うことなどで昨年10月に和解した。Googleは米国外の著作権者に対しても、和解案の受け入れ可否を回答するよう求めている。
国内出版界では強い反発が起きており、日本文芸家協会が抗議声明を発表したほか、倉本聰さんなど日本ビジュアル著作権協会会員の174人が、和解案の拒否を表明している。
一方、ポット出版は、Googleブック検索の取り組みについて、「有用な書籍を発見する手だてを格段に増やし、社会全体でさまざまな知の共有が前進する」と歓迎。「ポット出版の発行物の発見も増やすことにつながり、販売が増える可能性がある」と期待する。
書籍の販売増につながらない可能性もあるが、「少なくともそうした実験はされるべき」とし、「実験が大きく失敗すれば離脱しようと考えている」という。
「著作権者と出版社に合理的な範囲での経済的な利益を生み出すシステムが必要」とも考えており、Googleの和解案がこの考え方にも合っていると評価している。
ただ、辞書や写真中心の書籍のように、全文検索対応が販売拡大に結び付かないとみられる書籍については、コンテンツを提供しないこともあるという。書籍の著作権者が和解からの離脱を希望する場合も、それを妨げないとしている。
ポット出版は、スタジオ・ポット(渋谷区)が運営する書籍レーベル。これまで、115点の書籍を発行しており、うち59点をGoogleブック検索に提供。対応書籍の紹介ページには、Googleブック検索へのリンクを設置している。
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