ソニーのテレビ事業、赤字が倍増 「今はナンバーワン目指せない」
ソニーのテレビ事業が苦しい。販売台数こそ伸びたものの、赤字額は前期からほぼ倍増。今期は数を追わず、大型・高機能モデルで利益を確保する方針だ。
ソニーのテレビ事業が苦境に追い込まれている。2008年度(2009年3月期)のテレビ事業の赤字額は前年度比約2倍・1270億円に悪化。09年度は、販売台数目標を08年度実績から横ばいの1500万台に据え置き、大型・高機能モデルの投入で価格下落を抑える戦略だ。ただ市況は厳しく、今期も赤字が残る見通し。
08年度の液晶テレビ「BRAVIA」販売台数は1520万台と、前年度(1060万台)の約1.5倍に増えたが、テレビ事業全体の売上高は前年度比7%減の1兆2740億円にとどまった。営業赤字は前年度の650億円から約2倍に悪化。想定を超える価格下落に見舞われたのが大きい(前期の売上高・利益は、同期に撤退したリアプロジェクションテレビブラウン管テレビを含む)。
09年度は「値段を下げて台数を売るということはしない」(大根田伸行CFO)方針。販売目標は据え置き、大型化や高機能化で値下げ圧力に対抗し、利益確保を目指す。大根田CFOは「上期は厳しいだろうが、下期はブレイクイーブンにしたい」と話し、通期では赤字となる見通しを示した。
開発・製造コストも削減する。「ブラウン管時代のように、世界各地域に設計拠点や製造工場は不要。基本的に中央(日本)でやる」(大根田CFO)。部材については「昨年はパネルを買い急いで失敗した」と反省。部材コストの削減や、サプライチェーンの最適化も進める。
同社は液晶テレビ事業で韓国Samsung Electronicsを上回る世界シェアトップを目指していたが、数を追ってシェアを拡大する戦略はいったん休止。「世界ナンバーワンを目指す旗を降ろしたとは言い切れないが、今の実力では、数の面でナンバーワンを追うべきではない」とし、まずは利益率を確保する方針。「条件が整えば、ナンバーワンを狙っていく時期も来るだろう」
サイバーショットやウォークマンの目標台数も08年度実績下回る
09年度は、デジタルカメラ「サイバーショット」やビデオカメラ「ハンディカム」、携帯音楽プレーヤー「ウォークマン」の販売台数目標も08年度実績を下回る水準に設定した。サイバーショットは2000万台(08年度実績は2200万台)、ハンディカムは530万台(同630万台)、ウォークマンは630万台(同700万台)とする。
サイバーショットの目標について、大根田CFOは「台数を増やして価格を下げたくはない。今は利益を確保したい」と話し、液晶テレビと同様の姿勢で臨む方針だ。
08年度の連結決算(米国会計基準)は、売上高が前期比12.9%減の7兆7300億円、営業損益が2278億円の赤字(前期は4753億円の黒字)、税引き前損益が1750億円の赤字(同5671億円)、純損益が989億円の赤字(同3694億円の黒字)。「その他」事業を除くエレクトロニクス、ゲーム、映画、金融の全セグメントで減収減益だった。
09年度の業績予想は、売上高が前期比6%減の7兆3000億円、営業損益が1100億円の赤字、税引き前損益が1400億円の赤字、純損益が1200億円の赤字とし、赤字が続くと見込んでいる。
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