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「日本版フェアユース」の対象は 報告書まとまる

日本版フェアユースを導入すべきか、導入するならどんなケースが対象か――論点を整理した報告書が法制問題小委員会に提出された。

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 日本版フェアユースを導入すべきか、導入するならどんなケースを対象とすべきか――文化庁傘下の文化審議会著作権分科会法制問題小委員会に1月20日、ワーキングチームによる報告書が提出された。報告書をベースに今後、小委員会で導入の是非やカバー範囲などを議論。3月末までに一定の結論を得る方針だ。

 報告書は、著作権法上の権利制限の一般規定、いわゆる「日本版フェアユース」についての論点をまとめたもので、法制問題小委員会傘下のワーキングチームが計8回の会合を開き、議論してきた内容が53ページにわたって書かれている。

 日本版フェアユースの必要性については「利用者側と権利者側で意見の隔たりが大きい」とし、結論は出していない。仮にフェアユースを導入した場合に権利制限の対象となる行為についてもかなり限定的にとらえており、パロディや録画転送サービスは対象外としている。

日本版フェアユース、カバー範囲は限定的

 仮にフェアユースを導入した場合に権利制限の対象となる行為については、(1)写真の背景に著作物が写り込んだ場合など、ほかの行為の付随的に著作物が複製され、複製の量や質が軽微で、権利者に不利益はないと考えられるケース(形式的侵害)、(2)著作者に許諾を得てCDに楽曲を録音する際のマスターテープ作成といった、適法な著作物の利用に不可避的に生じる利用で、質的・量的に軽微なもの、(3)映画や音楽の再生技術の開発時に必要となる複製など、著作物の表現を知覚する(映画を見たり音楽を聴いたりする)目的ではなく、権利者に不利益をもたらさないもの――3つの類型に分類した。

 それぞれについてはなお、「著作者の権利を不当に害する可能性が否定できない」とし、「権利制限の要件に、『社会通念上、著作者の利益を不当に害しない利用であること』と加えることが適当」としている。

パロディや録画転送サービスは対象外

 パロディについては、パロディとは何かという概念の問題や、表現の自由、同一性保持権との関係など検討すべき論点が多いため、フェアユースでカバーするのではなく、必要に応じて個別の権利制限規定を設けるべきとした。リバースエンジニアリングも同様に、個別規定で対応すべきという意見が大勢だったとしている。

 録画転送サービスについては「間接侵害の問題として議論されるべき」とし、フェアユースで解決すべきではないという意見で一致したという。間接侵害の問題については、同小委員会傘下の「司法救済ワーキングチーム」が議論を進めている。

 報告書の内容について、委員の中山信弘氏は「トランスフォーマティブ(著作物に新たな価値を付加する使用)について議論はあったのか」などいくつか質問。フェアユースのワーキングチームにも参加している委員が「議論はあり、報告書は議論をベースに作成したが、直接的な記載はない」などと答えていた。

3月末までに一定の結論目指す

 今期の小委員会は今回で最後。来期も早々にスタートし、フェアユースについての議論を詰める。事務局を務める文化庁は、文化庁著作権課の池村聡 著作権調査官は「2〜3月に集中して議論し、3月末までに中間まとめを出したい」と話しており、今年度内に一定の結論を得たい考えだ。

 ワーキングチームによる報告書の概要は、小委員会前日・19日に一部の新聞に掲載された。中山氏は「審議会より前に新聞に載ってしまうと、『審議会とは一体何だ、既に決まっていたのか』という印象を与え、審議会の権威に関わる。情報管理をしっかりしていただきたい」と委員や事務局にくぎを刺していた。

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