iPadがiPod touch、ノートPCの売り上げを侵食――米調査
ノート型コンピュータやiPod touch、電子書籍リーダーは、iPadに売り上げを奪われる危険性があるという調査結果が発表された。
米AppleのiPadは、ノート型コンピュータやiPod touchなど、関連する製品の売り上げを食う可能性があると、米投資銀行Morgan Stanleyの調査チームAlphawiseが最新の調査で報告している。Alphawiseが今年3月、iPadの購入予定者を対象に実施した調査では、44%が「ノート型コンピュータの購入を控える」と答えており、その内訳は「MacBookの購入を控える」と答えたユーザーが24%、「ノートPCの購入を控える」と答えたユーザーが20%となっている。
「米国のコンシューマーPC、とりわけノート型コンピュータの販売伸び率は、AppleがiPadを発表した1月に減速し、さらにiPadが発売された4月に再び減速した」とMorgan Stanleyのアナリスト、ケイティ・ユベルティ氏は5月6日付でApple Insiderに転載された調査報告書で指摘している。「同じ時期に市場の平均販売価格が上昇していることから、需要減の多くはNetbookと低価格ノートPCのセグメントで起きているものと考えられる」と同氏。
Alphawiseが調査報告書に添付したグラフによると、iPadに売り上げを奪われる危険性が最も高いのは、AppleユーザーではMacノートとiPod touch、非Appleユーザーでは電子書籍リーダーとノートPCとなっている。iPadには電子書籍リーダーアプリケーションが搭載されているため、以前から、iPadの登場はAmazon.comの「Kindle」やBarnes & Nobleの「NOOK」といった電子書籍リーダーにとって脅威になるとみられている。なお、非Appleユーザーの17%は「iPadを購入するなら、携帯ゲーム機の購入をやめるだろう」と答えている。
ユベルティ氏とAlphawiseが発表したこのカニバリゼーション問題に関するデータは、Piper Jaffrayのアナリスト、ジーン・マンスター氏が以前に発表した調査結果とは正反対の内容になっている。iPadが4月3日にリリースされた直後にマンスター氏が448名のiPad購入者を対象に行った調査では、「iPadを選ぶ前にiPod touchの購入を検討した」と答えた回答者はわずか1%、「iPhoneの購入を検討した」と答えた回答者も1%にすぎなかった。
もっとも、その数週間の間に、iPad購入者の間に新たな傾向が生まれたという可能性も十分に考えられる。iPadの販売台数は既に100万台を突破している。
Appleの最高執行責任者(COO)ティム・クック氏は4月20日の決算発表会において、発生期にあるタブレットPC市場で支配的な地位を確立すべく、iPadを「積極的」な価格設定にしたことを認めている。「これまでほかの製品でしてきたのと同様、今回も先発者の優位性を十分に生かしたい」と同氏。
さらにクック氏はこの会見で、Appleが目下、「予想以上の需要」に対処すべく生産能力を増強していることもほのめかした。今回の四半期決算はiPadのリリースからまだ日が浅いため、iPadの登場がAppleのそのほかの製品ラインにどのような影響を及ぼすか、そもそも影響は及ぶのかといったことの判断材料にはならない。実際のところ、iPodの売り上げはここ数四半期の間、徐々に減少を続けており、Appleはその理由を「従来のiPodの市場をiPod touchが侵食している影響だ」と説明している。
もっとも、Appleは近く、自社のモバイル製品のカニバリゼーションよりもさらに大きな難題に直面するかもしれない。New York Post紙が5月3日付で報じたところによると、同社は独禁法違反で米司法省(DOJ)か米連邦取引委員会(FTC)のいずれかから調査を受ける可能性があるという。この記事の匿名の情報筋によると、調査を受ける可能性があるのは、モバイルアプリケーションの開発をめぐる同社の方針について。同社はApp Store向けのアプリケーションの作成にサードパーティー製の開発ツールを使うことを禁じている。具体的には、政府はiPhone OSの人気の高さからして、「Adobe Flash CS5などのツールを使って開発されたアプリケーションを排除する」というAppleの行為がスマートフォン市場の競合他社の競争力の阻害につながらないかという点を中心に調査を行うことになりそうだ。
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